ギース捕縛
二日たった。
馬でトボトボ歩くクロウ。自分も馬も二日間ほとんど寝ていない。行き交う町で飯は食うも馬に与えるカイバがない。
仕方なく馬は道行く農家の人にゆずり、歩くことにした。
ギースも事情は同じのはず。距離が縮まらない。
川を越え、山を越え、谷を越え、ひたすら追跡するクロウ。
(異能を使うか)
ロードの異能「超速」を使い一気に一キロ進む。しかし到着した途端にバテてしまった。
(キツっこれは連続で使えないな)
また歩くしかない。
意識が朦朧としてきた。
幻影が見えてきた。おババの幻だ。
「みじめな異能しか持たぬそなたでは復讐はかなわぬ……」
いや、今はロードが命を投げてくれた異能がある。「なわしろ」、空間制圧術。ギースの異能がどんなものかまだ分からないが、きっと勝てる。
ふとギースの気配を感じる。
(近い!)
クロウははやる。
「マーベン」
クロウはギースの心を読む。今は荒涼とした砂漠で一息しているようだ。
(もう、追手はいないだろう)
ギースは安堵して眠るところのようだ。ここで追いつかなければ。
超速を使う。キツイが仕方がない。北の国に入ってしまえば厄介なことになる。
(あと少し)
クロウも砂漠に入った。一気に距離を縮める。
(この辺だ!)
するとカンが働く。
「右だ!」
咄嗟に左に避けるクロウ。
何かは分からないが、右を砲弾のようなものがかすめる。
50メートル先に男が立っている。
(ギースだ!)
もう一発かすめるがすでに避けている。
(この砲弾のようなものがギースの異能か)
おババの幻影がクロウに告げる。
「そうじゃ。この玉はズズの黒い玉などとは違いとてつもなく速い。ゆえにギースが異能を使った瞬間に相手の頭を貫き誰もギースに勝てなかったのじゃ」
大きな岩の影にしゃがみ込み、クロウは大声でギースに話しかける。
「お前がピースフルの首領ギースか!こちらは警察だ。もう逃げる事はできないぞ!」
ギースが鼻で笑う。
「そんなもん、軽くぶっ潰しつやる。皆殺しにしてな。観念して出てこい。楽に死なせてやる」
クロウはロードの異能を探す。確か地面に潜る異能があったはず。それを意識すると足先がズブリと地面に溶け込む。
頭の先まで地面に潜ったクロウ。一気にギースに近寄り、また浮き上がる。
突然地面から浮いて出てきたクロウに驚きながらもギースは冷静に「指弾」を発射する。迂闊にも左肩を撃たれだがついにギースの背後を取った。
「なわしろ!」
手から縄をだし、ギースの腕を取り上につり上げる。
「勝った!捕まえたぞ」
ふとロードの過去を読む異能が発動する。マリアを拷問し、手足をもぎ取り陵辱している場面がクロウの脳裏に浮かぶ。
「うわー!!!」
あまりに酷いギースらの殺し方に絶叫したクロウ。
涙があふれる。絶望したマリアを助けられなかった不甲斐ない自分をも責める。
「お、お前は生きて連れ帰り、手足の先から切断していく最も残酷な処刑『凌遅刑』にしてやる!」
動けないギースに殴りかかるクロウ。何発殴っても気が晴れない。
ギースは鼻血まみれになり、前歯が折れた。クロウが問う。
「自分が犯した罪の重さを思い知ったか!」
「さあね、へでもねーや」
またガンガン殴り続ける。
ギースの顔は打撲で膨れ上がり見る影もない。クロウがいくら殴っても反省する気はないようだ。
「最後に聞く。マリアの命を奪ったのはお前か!」
ギースはその問いには答えず、こう返した。
「いい女だったぜ、へへへ」
クロウの怒りは頂点に達し、さらに涙を流しながら殺す寸前までいったとき、後ろから声が。
「やめい、クロウ」
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