チーム

「スピード、腕大丈夫か!」


「なんという事もない。武芸者だ。体も心も鍛えている、それよりよう、お前なんで杖を握っているんだ?どっかに置いてこいよ!」


 それには答えずクロウが耳打ちする。


「いいか、俺の見立てによればあの管は長さが決まっているようなんだ。つまり遠くからズズに攻撃できない。そこで俺のカンで指し示し、そこをお前が蹴りを入れる。できそうか」


「俺をだれだと思ってるんだ、軽い軽い」


「よし、俺はズズの横につく、後衛だ。お前は前衛だ。一発に全ての力をかけろ!」


「任せろ」


 2mほど宙に上で見たのだが、サソリはすぅ〜と地面に降り立った。


「ふん、作戦など立てても俺の異能には勝てん。覚悟しやがれ」


 突然口からドロドロ紫色の唾液が流れ落ちるサソリ。毒で殺しその後で食う気じゃない事を祈るばかりだ。


「今この国はマフィアが仕切ってしまってるそうじやないか。お前は幹部かなにかか?」


「この国はもともと政治家や役人が腐りきっていた。俺らの商売に難癖をつけ、税金をむしり取っていたんだ。それでアウカトラズが力を持たない人民の変わりに立ち上がったんだ。みなは悪い役人が殺されるたびに熱狂していった。この国には税金を支払う事がない。ある程度の能力さえあれば政治家なんか誰でもできるからな、ふん。しゃべりすぎたな。改めて死ねぃ!」


 サソリが消えた。


「アソコだ!」


 スピードが回し蹴りをふっとはす。しかしサソリはもうあと10センチのというところで空振りだ。


 そこでクロウのカンが働く。


「ズズ立ち上がれ。毒針が下から潜ってきている!」


「あわわわ、えい」


 ズズがクロウに抱きつく。


「スピードにおぶってもらえよ。あいつのスタミナは無尽蔵だ」


「もう!とうへんぼく!」


「来る!ズズ、地面に特大の玉をぶち当てろ!」


 ズズがデカい黒い玉を出し、ぼうんと地面を削る。


「たった3本か」


「真暗なのになんでそんなのが見えるのよ」


「だからカンだって。見えてるわけじゃないんだって」


 スピードががクロウの横につく。


「あと3本だ。どうするよ、続けるか?」


「我慢比べが最適解だ」


「分かった」


 立ちすくんでいるズズにクロウが近づく。


「この男は幹部のようだな。下っ端じゃない。幹部自ら出張ってきている。強い」


 クロウはスピードの所へ行き、大声で叫ぶ。


「おい、そこのチキン!まーだ手を出してねーな。ぶるっちゃって異能が出せないか。しょんべん漏らしてんじゃねーよ!」


 そのあおり言葉に引っかかる夏の虫、クロウとスピードのど真ん前に出た。


「誰がチキンだとー?!」


 右指2本、左手1本指が残っていた。


「やはりか。10本は指の数か」


「もう遊びは終わりだ!」


 腰に刺していた刀を取り出しさやをぬき、つっかかってきた。


 大振りの袈裟懸け。


「おっそ」


 スピードは首をかわして右の肩を後ろに引くと刀はスピードにかすりもしない。


「普段は違う軽い刀で稽古してたみたいだな。おそらくその刀を振り回してその本物の重さに驚いているところとみた。刀はな、飾りものにしちゃいけないんだよ。さて次はどう攻撃するんた?」


 大刀を捨て、最後は大きさ10センチくらいのナイフを二本対にして攻撃してくる。


「もうこれでおしまいのようね」


「まだ分からない」


「慎重過ぎよ」


「きぇーい!」


 サソリがナイフでスピード相手につきまくってもそこまで。スピードは無手の達人である。少し連打を仕掛けても全く刺さらない。


 逆に顔に前蹴りがドカンと決まる。


「なぜお前のナイフが刺さらないか、分かるか?分かれば突くのも無理だと分かるだろうよ」


 敵のサソリもクロウもズズも答えを探す。


「分からないか?わっははは」


 ナイフで突きまくりヘトヘトになったサソリ。


「こ、答えを教えてくれ」 


「どわははは。簡単だ。相手が右手で攻撃をしてきたらその右手を受ける。その最中に考える事は一つ。次の攻撃は左手だというのはわかるよな? ましてや月明かりもある。右、左、右、左。これほど分かりやすい事もそうそうないわな。どっははは」 

 

 クロウがうなる。「何気に深いな」


 「えー?深いかなー普通の事じゃん」首をかしげるズズ。


 何か考えてたようだが二つのナイフを捨てた。プライドが許さないのであろう。


「ち、ちょい待ちおっさん。拳で俺と、このスピード様とタイマンはろうってか? 正気かお前」


「俺の拳は毒をおびている。一撃さえ食らわせればお前は終わりだ」


 スピードが首をゴリゴリまわす。


「お前アホだろ。攻略のヒントをさっきからいちいちしゃべってやられてる。今度はつまりお前の拳にさわらないだけでいいんじゃん。きやがれ」


「うるさーい!」


 サソリがスピードに襲いかかるも拳が当たるはずもない。足さばきだけでよけてまわるスピード。


「まぁ、勝負ありだな」


 クロウとズズが見守るなか、サソリの拳は空を切り続ける。


 スピードが左回し蹴りでサソリをはったおす。


 どたりと地面につっぷすサソリ。しかし立ち上がりクロウの方へいく。


 クロウもサソリに右横蹴りをサソリに放つ。


「このくらいの体術なら俺も使えるぜ」


 まんじりとするサソリ。一気に形勢は逆転した。


 

 










 



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