山賊退治

 クロウ、スピード、ズズが、かなりな傾斜の山道を歩いている。


「待って…山が…キツいわ……」


 ズズが道端に座り込んでしまった。


「体力ねーなー」


 見かねたスピードがズズに近寄り、ズタ袋を持ってやろうと左手を伸ばす。


「キャー触らないで!」


 ズズがスピードの左足を蹴りながら抵抗している。


「なんだよ。めったに見せない俺の優しさを拒否するのかよ」


「あんたは信用できないわ。この袋の中にはあたしの下着が入っているの。あんたにこの袋を預けたらその下着を抜き出してやりたい事しそう。持つんならクロウが持ってちょうだい」


「やりたい事ってなんだよ」


「あんた、たまってるでしょう?」


「たまってる?」


「この下着の臭いを嗅ぎながらオ○ニーし始めるわ!」


「するか!んな事」


 スピードがズズを見捨てクロウにつぶやく。


「行こうぜ」


 二人が歩きだした時


「待って、あたしを捨てないでー!」


「あーもう。どうしろってんだよ!」


 スピードがズズの前でしゃがむ。


「ほれ、おぶってやる」


 ズズが立ち上がりスピードの背中にしがみつく。


「重っ」


「デリカシーないわね」


「んなもんはなから持ってねーよ」


 スピードがズズを背負って歩きはじめた。するとスピードがにやけ顔になる。


「意外とおっぱいでけーな」


「あ、そ、ありがと、変態野郎」


 クロウが首を振りながら前に足を進めようとしたその時。


「キャー!」


「今度はなんだよ。金切り声出して」


「か、肩が痛い!」


 スピードがズズを下ろすと、矢が突き刺さっているではないか!


「くそったれ、どこからだ」


 クロウのカンが働く。


「あの方向だ」


 道のへりは藪になっている。スピードがクロウの指す方へダッシュする。


「逃げきれると思うなよ。俺がスピードと名乗っているのは伊達じゃねーぞ」


 スピードが藪に突っ込んで行く。


 クロウがズズの横に行き、肩から矢を抜く。


「毒は塗られてないようだ」


「うふふ。ありがとう……」


 今度はクロウがズズをかるう。


「あたしのおっぱい、大きいかしら?」


「余計な事は考えてない」


「本当は嬉しいんでしょ。あなたさえよければあたしのおっぱいをもんでいいのよ」


 クロウは押し黙ったまま歩を進める。


「もっといろんな事をしてもいいのよ。次の宿場町に着いたら二人で一人部屋を借りましょうよ。あたしの処女をあ・げ・る♡」


「それはいきなり過ぎだろ。俺は最初はキスからはじめたい」


「カタブツなんだから、もう」


 ズズから香水の臭いがしてくる。思わず下半身が反応する。


 ズズが右手を前に伸ばすと、クロウの股間をまさぐる。


「ほら、体は正直ね。もうガチガチじゃない」


 そんな誘いの言葉は無視して、また歩き始める。


「捕まえたぜ!」


 スピードが賊をヘッドロックしながら戻ってきた。


 ドサリと地面に投げ出された山賊。ズズが前にでる。


「はぁ、はぁ、命だけは勘弁してくれ……」


 スピードが頭に蹴りを入れる。


 ズズが右手を山賊の前に出すと山賊は震え始めた。


「すまなかった。こ、子どもがふたりいるんだ…」


「悪人は皆そう言って逃げようとする。ズズ、仕返ししてやれ」


 ズズが山賊の顔をギョロリと見た。


「あたしをキズ者にするとはいい度胸じゃないか」


 そう言うと右手の人差し指を山賊に向ける。その指の先に黒いエネルギーの玉が出現した。


「ひいー!ご勘弁を、あなた様が異能者だとはつゆ知らず…」


「目には目を、よ」


 ズズが黒い玉を山賊の肩に放つ。ずぶりと山賊の肩を貫く。


「ぎゃー!」


「痛いでしょう。あたしも痛いわ。」


 その時である。藪から一斉に30人ほどの男達が現れた。


 捕まえた男が脱兎の如く藪に逃げ込む。


「30人程度で足りるかしら?」


 男達がクロウらににじり寄る。


「殺すんじゃないぞ! それがこの旅の約束事だ」


「誰がそんな約束をしたんだ?」


 かかってきた賊をスピードが一撃で沈める。ズズが黒い玉を連射して次々に倒してまわる。


 無敵の二人から照準をクロウに定める賊ども。


 賊がクロウを斬り捨てようと刀を振り回すもクロウはひらひらかわしてみせる。


「殺られるわけにはいかないんでね」


 クロウの横にスピードが着く。


「お前、ボディーガードなんか要らねーんじゃねーの?」


「バカ。こんな奴らザコだ。もっと強い奴らが俺達を狙っている。見えるんだそいつらが」


 全ての山賊を倒した。スピードがその一人にガンをつける。


「頭はだれだ」


 一斉に一人の男を指さす。スピードが前に出る。


「こいつだけは殺す!」


「駄目だ。行くぞ」


「ちっ!運がよかったなお前ら。こちらのリーダーが慈悲深くてよー」


 三人がその場から去る。何事もなかったかのように。


 危険な旅が続く。











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