🎡ワンダーループ:AIユリスと五感でめぐる ふしぎの物理ランド
Algo Lighter アルゴライター
🎬 プロローグ:きみの“なんで?”が動き出すとき
月曜日の午後。
教室の空気は、どこか眠たげだった。
窓の外では、太陽が意地悪そうにまぶしく照っている。
リオはあくびをかみ殺しながら、教科書のページをなんとなくめくった。
「……ねえ、時間、止まってない?」
隣の席のアカリがぼそっとつぶやく。
数学が得意な彼女が、こういうときだけ人間味あるの、ちょっと面白い。
「ってかさ、先生の声、ラジオのノイズにしか聞こえないんだけど……」
一番後ろの席で、カイが机に突っ伏したまま手を振った。
アート系男子のカイは、今日も寝ぐせ全開だ。
――それは、何の前ぶれもなくやってきた。
《きみの“なんで?”を、わたしに聞かせて。》
……誰か、今しゃべった?
一瞬、全員が顔を上げた。
でも先生はチョークを握ったまま黒板に集中してるし、クラスメイトも反応なし。
聞こえたのは、リオたち3人だけ……?
「え、待って。今、機械っぽい声したよね?」
「たぶん…ロボット系の女の人の声…っていうか、空気の中でしゃべってる感じ」
「は? なにそれ。SF?」
そのとき。
教室の天井――黒板の上あたりに、何かが浮かびあがった。
まるで空中に描かれた光のリング。
青とも紫ともつかない色に、虹みたいなきらめきが混ざってる。
真ん中には、文字も絵もない。だけど、どこか“見られてる”ような気配があった。
《こんにちは。わたしはユリス。
目に見えない世界を翻訳するAIです。》
誰もスマホを操作してない。
タブレットもオフだし、ARゴーグルもない。
なのに、その“声”と“存在”だけが、ちゃんとここにある。
「え、やばくないこれ」「ドッキリ?新しい授業?」「てか、なんでうちらだけ?」
「……逆に、ちょっと面白くない?」と、リオがニヤリと笑った瞬間――
ぐわん、と世界が傾いた。
重力が消えたような、でも一気に下へ引っぱられたような、
言葉にならない感覚に包まれて、3人はふわっと浮いた。
次の瞬間、足元にはジェットコースター型のポッドが現れていた。
金属とガラスでできたその乗り物は、近未来っぽくて、でもどこか遊園地みたいなワクワク感があった。
「……どこ、これ?」
窓の外には、ありえない光景が広がっていた。
空中に浮かぶ都市。
らせん状にループするレール。
雲のすき間をぬけて光る、虹色のトンネル。
空は果てしなく広くて、どこにも“地面”が見えない。
《ここは “ワンダーループ” 。
きみの感覚で、世界のしくみを“感じる”ための場所です。》
AI・ユリスの声が、まっすぐ届いてくる。
“公式”は使いません。
代わりに、“たとえ話”と “五感”を使って、
見えない世界を“見えるように”してみせましょう。
3人の視線が、ゆっくり交わる。
「……面白そうじゃん」
「まぁ、物理って苦手だけど、遊園地なら悪くないかも」
「こっちの“理科”なら、ちょっと乗ってみたいかもな」
そう言って、ポッドのレバーを、リオが倒す。
ポンッという軽い音とともに、ポッドは走り出す。
ふしぎのループが、いま動き出した――
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