陽炎

あのね!

第1話 摩訶不思議な出来事?


 俺の名前は菊間隼人。現在22歳の大学4年生。

「陽炎」とは、ものや風景がゆらゆらと揺れて見えるという意味から「つかみどころがない」「錯覚している」「不思議である」などと実体がなく儚く消え去るイメージがあるが……。


 俺は正に今その状態に置かれている。


 それはどういうことかと言うと俺は大学1年の時に1人のある女子に恋をした。それは他校の学園祭に友達の健一と出掛けた時に、ミュージカル「くるみ割り人形」の主役クララ役の女子に魅了されてしまった。その美しさといい、伸びやかな歌声といい、一瞬で恋に落ちてしまった。


 どうしても忘れることが出来ない。そこで…ミュージカル「くるみ割り人形」を学園祭で上演していた藤芸術大学に度々足を運んで、その女子に会うことが出来ないか探しているが、一度たりとも会ったことがない。


 チョッとストーカーのようで不気味に思われるかも知れないが、自然と足が藤芸術大学に向くのだった。


 そこで…健一に思い余って頼んでみた。


「俺さ……お前と3年前に一緒に学園祭で藤芸術大学に行っただろう。そして……くるみ割り人形のミュージカル見ただろう。俺さ……主役のクララ役の女の子のことが気になって頭から離れないんだ。何度か大学に出向いて巡り合えないものか探しているが、一向に会わないんだよ。だから一緒に藤芸術大学に出向いて、そこで…チョッと聞いてもらいたいんだ。そのクララ役の女子のことを……」


「隼人変なこと言うなよ。お前と藤芸術大学なんかに行ったことなど無いぞ?」


「何でだよ。3年前の学園祭で一緒に行ったじゃないか?」


「俺はそんなところに行った覚えはないよ」


 この様に言われた俺は電車とバスを乗り継ぎ藤芸術大学に行った。そして健一がまるでキツネにつままれたようなことを言っていたので、勇気を出して当時のことを聞いてみた。


 大学の授業が終わる頃、大学の門の前に立ち出てきた学生に聞いてみた。それでも…初対面で女子学生に聞くのはチョッと気が引けたので、男子学生を呼び止めて聞いてみた。


「あのーすみません。3年前に学園祭でくるみ割り人形のミュージカルの演目ありましたか?」


「いえ……?そんなミュージカル上演されていませんよ」


 俺菊間隼人は確かにミュージカル「くるみ割り人形」を学園祭で見たんだ。一体どういうこと?俺が変なのか、それとも……世界に異変が起こってしまったのだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る