後半自分は受験生
一体どこの魔性だと辟易。
大体、揃いも揃って取り合いだなんて迷惑過ぎる。
もっと最悪な事に、今ある現実がゲームの本編ではない。
この時間軸はプロローグ、又は手慣らしのような触り部分なのだ。
悲しい事にこれからこのゲームのパッケージに書いてあったゲームのジャンルが始まる。
先に説明しておくと、このゲーム世界をベースにしたソフトはほのぼの学園恋愛物ではない。
ほのぼのとはしていないのだ。
それに少し抜けている言葉がある。
「きゃあ!何!?何が起こってるの!?」
ヒロインの芝居がかった声の方向を向くと教室の地べたの所がパアア、と輝いて光っている。
ああ、始まった。
「うわっ」
「なんだ!?」
「足が動かないっ」
本当は行きたくないが強制的に連れて行かれるポジションだから逃れられない。
内心溜息をついて、スクール鞄とは別のスクール鞄を持ち替える。
これは事前に長い旅路に出るからと揃えた物が入っている鞄だ。
光りに包まれるまでこんなに長いのかと少し苛々した。
この世界の抜けていたジャンル、それは──。
「ようこそ、異世界の巫女様御一行様」
神殿の真ん中にある石台の上にぽつんと座る七人の高校生達。
見たこともないような煌びやかな衣装を身に付ける男性が恭しく頭を下げた。
ここは、いや、このゲームの一番の難所は異世界という現実を飛び越えたジャンル、ファンタジーであった。
何が起こっているのか理解出来てない様子の五人の男子達は今、最初に声を掛けてきた男性に詰め寄っていた。
アイリスは全てを知っているので、他の子達と違って詰め寄ったり、パニックになったりしない。
ここから、ヒロインは現代のクラスメイトと異世界の現地人キャラクターを含めた多人数を相手取って攻略していく。
が、セツナは近くにいた魔法使いから流れるように魔法の杖らしきものを奪い取り魔法陣を書き換える。
公式が出している資料集に実は、的な裏の公式情報を網羅していた。
そこには、召喚についての知識やここをこう書き換えれば、帰れるといったインタビュー、といったものが書かれていた。
ヒロインも読み込んでいるかと思っていたが、ゲームだけして満足していたタイプだったらしい。
それとも、買ったけど好きなページだけ読んで終わったかだ。
こういう時、自分のような先を知る存在は攻略対象者達にヒロインの本性を教えて目を覚ましてあげて、という苦労を背負いこむ人も居るのだろう。
が……が、だ。
よくよく思い出して欲しい。
自分は受験生だ。
受験よりも優先されることじゃない。
少なくとも、血縁者でも友達でもない無関係な彼らに渡す時間はない。
帰る時は時間が経ってないと書いてあった。
頭の中の時間が経ってないとは、一切言及されていないのだ。
彼らこそ、全員一体どうするのだろう。
一年、二年、何年経過した後、帰るのかは知らないが。
彼らだって、今通っている学校の授業や今まで詰め込んだ勉強を思い出して、授業に付いていけたり。
受験に間に合わせて、三年以上分をそこからどうやって、取り返すのだろう?
時間は経過しないが、学んだ分は戻ってこないのだ。
激しい疑問を感じて、描き終え魔法陣が光り、こちらを目を点にして見てくる面々の目が合わないようにした。
風景はキランキランの場所から、教室にあった。
時間が経たないからって、あの魔法陣についてはどう説明されるのだろう。
光ったと思えば攻略対象キャラクター及びヒロインだけが居なくなっていた状況。
特に騒がれなかった。
なにかしらの魔法が働き、彼らの存在を認識できなくなったよう。
セツナは覚えていた。
しかし、もしかしたら気にしなくなるのかもしれない。
魔法の作用によって。
大丈夫、エピローグでは地球に帰るルートがあったよ。
チャイムが鳴り、先生が入ってきたのでカバンを机に掛けて、教科書を開いた。
逆ハーレム可能なサポートキャラクターが自力で打開する話 リーシャ @reesya
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