終章③ 未来へ
夕暮れ時、家族は円卓を囲み食事を共にした。
質素ながらも、その温かさは言葉では言い尽くせないほどだった。
俺は箸を止め、感慨深さからと呟く。
「お父、龍梅……都に来てよかったよな。もう、忌み子なんて呼ばれないし」
「そうだな。だが、忌み子だろうがなんだろうが、お前たちは私の子供だ。それだけで十分だよ」
お父の視線の先には、そっと机の端に置かれた、お母の形見である髪飾りがあった。
金糸細工がほのかに灯りを反射し、今もなお、そこに在り続ける存在のように輝いていた。
俺たちを産んですぐに逝ってしまった母の記憶は、俺の中には残っていない。
けれど、今はこの髪飾りを見るたびに、俺たちを見守ってくれていると信じたくなる。
「なぁ、母さん。そうだろう?」
お父が穏やかに笑うと、その微笑みにつられるように龍梅も静かに頷いた。
「リウ、私たち、ちゃんと生きているわ。過去も、呪いも、全部乗り越えたのよ」
彼女の言葉には、確かな誇りと、未来への希望が宿っていた。
夜の静けさの中、俺は庭で一人、
手には、青い稲妻の紋様が淡く残っている。
それはまるで運命の刻印のように、消えずにそこにあった。
俺が王家の血を継ぐ証であり、何より家族を守るために授かった力の象徴だった。
龍梅がそっと近づき、肩を並べる。
「
「俺は、姉貴とお父を守るために舞うんだよ」
俺は少し照れくさいが、真剣だ。
「なぁ、
「それはね。あなたに前世のことを忘れてほしかった。だって
龍梅は微笑み、「もう前世の
二人は笑い合い、剣を手に軽やかに舞い始める。
「龍剣、私も守るよ。この家族を」
龍梅が囁く。
その声には、前世の姉貴と同じ強さが宿っていた。
星空の下、剣の軌跡が幾重もの光の弧を描く。
龍神閃の青い輝きは、まるで過去と未来を紡ぎながら、新たな物語を刻んでいるかのようだった。
都の生活は決して楽ではない。
だが、家族が共にいる限り、どんな困難も乗り越えられる。
俺が近所の子供たちに剣舞を教える姿は、お父から受け継いだ愛と希望の継承だった。
「この剣舞、いつか自分たちの子供にも教えてやるさ。家族を守る舞だって、ちゃんと伝えなきゃな」
俺は剣を掲げ、静かに星空に誓った。
家族は新たな春を迎え、未来を切り開いていく——。
赤月奇譚ー俺と姉貴の絆は前世から続いていた件ー ヴィオレッタvioletta @2725500vi
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