幕間 能ある鷹は爪を隠せない
◆
アシュとミリアがスケリーの街に来て半月がたったころ冒険者ギルドのギルドマスターであるハンツは事務作業に追われていた
「ふ~」
ハンツは眼鏡をはずし眉間を揉む
今日一日分の書類仕事を終え、一息つく
コンコン
扉のノックに対し眼鏡をかけなおしてから返事をする
「どうぞ」
「お疲れ様です
お飲み物はいかがですか」
「あぁ、ニーナさん
ちょうど欲しかったところです」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ニーナはハンツの机の上に広がった書類に目を落とす
「またチコの森で上位種ですか」
「今月でもう3件目です
たまたま居合わせた上位冒険者のおかげで大事には至っていませんが・・・・」
「やはりイーリスの言っていたフードの男が関係しているのでしょうか」
「わかりません・・・・
一度調査依頼を出しましょう
イーリスさんの報告もありますし
「いいと思います
それでは私の方から伝えておきますね」
「お願いします」
先日イーリスからもたらされた報告では、上位種の発見直前に
その時は特に気にしなかったが、直後に上位種を発見したことで、この男が何か重要な情報を握っているとイーリスは考えていた
ギルドでもフードの男の目撃情報を集めているが成果は芳しくない
これから収穫祭の準備で忙殺されるというときに厄介な話だとハンツは頭を悩ませる
「そういえば、トラガリの2人も順調に依頼をこなしているようですね」
ハンツの心情を知ってか知らずかニーナは話を明るい話題へ変える
「アシュさんたちですか
今日で依頼達成数が17・・・・確かにいいペースですね」
「納品物の状態もよく依頼者からも評判のようですよ
変な噂も立ってるようですが・・・・」
「噂?」
「はい、一時期噂されてた初心者狩りのことはご存じですか?」
「ええ、なかなかしっぽが掴めず手を焼いてましたし・・・・
そういえば最近は噂を聞かなくなりましたね」
「はい、そのパーティを気絶するまで痛めつけ全裸で森に吊るしたと・・・・」
「また尾ひれも背びれもついてそうな噂ですね・・・・」
ハンツの予想とは裏腹にほぼ事実であることは2人が知る由もない
「ま、初心者狩りをするような輩にはこれくらいやってもらった方が個人的にはすっきりします!」
「ははは、ここだけの話ですよ」
「もちろんです!」
本音をこぼすニーナにハンツは苦笑いで返す
「やはり目立ってしまいますね」
歴代の虎の子がそうであったようにその実力は彼らも例外ではなかった
全員が何かしらの能力に秀でており、それを駆使して成り上がっていく様は冒険者の間でも憧れの対象となりつつある
しかし彼らに虎の子という共通点があることは一般的には知られていない
「彼らもまた虎の子ということですね」
◆
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