第4話 因果応報
「スパークボルト!」
「っな!ぐああああああ」
どこからともなく聞こえた声とともに魔法陣から放たれた電撃が男たちを襲った
男たちは痙攣したあとその場に倒れこんだ
髪の毛は縮れ、服の所々が焦げている
「君たち!大丈夫!?」
目の前に俺たちとそう歳が変わらなさそうな女冒険者が現れた
こげ茶色の髪をポニーテルにまとめ、青にも緑にも見える翡翠色の瞳をしている
細身の剣を下げているのと立ち振る舞いから魔法だけでなく接近戦も得意そうだ
ということは魔法剣士だろうか
動きやすさを重視した皮鎧はスピードで相手を翻弄するタイプだろうと推測できる
上質な装備を見るからにかなり腕の立つ冒険者のようだ
その証拠に男たちの中に動くものはいない
一撃で意識を刈り取ったようだ
「よかった!怪我はなさそうだね!」
「今の魔法はあなたが?」
「そう!私はイーリス!2人とも無事でよかったよ!」
スパークボルトと言えば雷の中級魔法だ
雷魔法は適合者が少なく、希少属性の1つと言われている
表情や仕草からこちらを騙そうとしている気配は感じないが一応警戒はしておこう
「俺はアシュ、で、こっちが・・・・」
「・・・・ミリア」
「助けていただきありがとうございます」
「うん!気にしないで!」
イーリスは男たちの所持品をあさり始めた
「何してるんですか?」
「あったあった、はい、これ君たちの分」
気絶してる男たちから財布を抜き取ると1つをこちらに放り投げた
「えっ、いいんですか?」
「いいのいいの、自分たちがやろうとしたことやり返されても文句言えないでしょ」
なるほど、そういうものか
思わぬ臨時収入を得た
「こいつら最近噂の初心者狩りだね
しばらく悪さできないように懲らしめておこう」
なら、遠慮はいらないな
「それならこういうのはどうですか?」
・・・・
「よし!そうしよう!
それにしても、なかなかえげつないこと思いつくね!」
そう言ってイーリスとチコの森の入り口に向かう
そしてイーリスの後ろには・・・・
ズリズリ
「イーリスそれって・・・・」
「あ、これ?ジャイアントボア!森の奥にいたんだ!」
イーリスは巨大な猪型の魔物を引きずっている
気絶した男たちは縛り上げてジャイアントボアの上に乗せている
体長5メートルはあろうかというジャイアントボアと男5人を軽々引っ張っている
華奢な見た目からは想像つかないパワーだ
ジャイアントボアはレストボアの上位種だ
発生条件や原因は未だに解明されていないが魔物は上位種に進化することがある
一般的に上位種になるとランクが1つ上がると言われている
イーリスはBランク冒険者でこの街を拠点に活動しているようだ
大したケガもせずCランクのジャイアントボアを討伐できるのも納得だ
今日はたまたまこの森で新技の練習をしていたところ、俺たちが襲われている場面に出くわしたそうだ
どんな技か秘密らしいが正直そこまで興味はない
襲ってきた男たちはチコの森の入り口に全裸にして吊るした
作業中、道行く冒険者に奇怪な目で見られたが、これは正当防衛である
何も問題ない
男たちの装備は捨てたことにしてミリアの空間魔法にしまった
後で売って金にしよう
一通り吊るし終え、帰路につく
「へー、昨日冒険者になったんだ!
Dランクからスタートなんてすごいんだね!
・・・・あれ、てことは助けいらなかった?」
「いえ、無傷では済まなかったでしょうし、今こうして無事でいるのはイーリスのおかげです」
「ふふん!そうでしょそうでしょ!」
控えめな胸を張り、誇らしげだ
「お、イーリス!今日も依頼か?大物だな!」
「イーリスちゃん今度依頼出すからまた受けてくれよ!」
「あら、イーリス!また飲み行きましょー!」
イーリスは街のいろんな人に声をかけられてる
ジャイアントボアを引きずってることに突っ込む人はない
日常的な風景なんだろうか
街の人からも好かれていて実力、人柄ともに優秀な人なんだろう
「おら、イーリス!この間の金払いやがれ!」
前言撤回
「やば!逃げるよ!」
「え、ちょ!」
「・・・・え」
そう言ってイーリスは俺の手を握り走り出す
慌ててミリアの手を握る
俺たち関係ないんだけど!
走ったことで冒険者ギルドにはあっという間に着いた
ミリアは途中から走ることを諦め引きずられてた
中に入ってもイーリスはいろんな人に声をかけられている
「ニーナ!今大丈夫?」
「あら、イーリス、今日は休みじゃなかった?」
「ちょっと新技の練習にね!」
「相変わらずね
ところで、アシュさんたちと知り合いだったの?」
「チコの森でたまたま会ったの!」
「そう、この子ちょっと変わってるけど仲良くしてあげてね」
「ちょっと!変わってるってどういうことよ!」
ニーナさんはイーリスのクレームを軽くいなしつつ、こちらを見て微笑んだ
「で、外のやつってもしかして・・・・」
「ジャイアントボア!チコの森で見つけたから討伐しといたよ!」
「その話詳しく聞かせてもらえるかしら」
「私もそのことでマスターに話があるの!」
「わかったわ、確認してくるからちょっと待ってて」
ニーナさんはギルドの奥へ行くとすぐ戻ってきた
「マスター室に入っていいそうよ
ジャイアントボアはギルドの裏手に持ってって」
「了解!じゃ、アシュ君とミリアちゃん、また今度ね!」
「はい、今日はありがとうございました」
「またね!」
イーリスはそう言ってギルドの奥へ消えていった
騒がしい人だったな
「あの子、ああ見えてこのあたりで1位2位を争う大手クランの
クランとは冒険者が集まってできた組織のことでパーティをより大規模にしたものだ
クランを設立するには厳正な審査があり、信頼度も高い
貴族や商人などはクランを指名して依頼を出すことが基本だ
そのためクランの加入にも審査があり、実力はもちろん人柄や周囲からの評判なんかも重視されるそうだ
「お2人は納品ですか?」
「そのつもりだったのですが、出直そうかと思います」
「そうですか、またお待ちしてますね」
本当はレストボアの素材を納品したかったがミリアの空間魔法を秘密にする以上、人前で素材を取り出すわけにはいかない
適当なところで素材を取り出して冒険者ギルドに持ち込む予定だったが、イーリスと一緒に来たためタイミングを失ってしまった
また明日納品に来よう
それからしばらくは順調に依頼をこなす日々が続いた
◆
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