【節3】“あるはずの10年分が、なかった”

ある制度的な記録の中に、こうした数字があった。

年の利益として、約550万円。

それが、長年にわたって積み立てられていた。

制度上は、1000万円の積立金が存在していたことになっている。

そのうち、半分以上は十数年前から積み上げられていたものだった。


しかし──

平成20年から、平成29年の11月まで。

その時点で、残っていたのは、わずか200万円ほどだった。


年550万円の収益があるなら、

その10年分で、本来は5000万円以上が残っていてもおかしくない。

それが──なかった。


どこで、何が起きたのか。

制度は、そこを語っていない。


形式だけを見れば、

積立金は「存在していた」ことになっている。

でも、その実体は──

10年分の蓄積には到底及ばない残額だった。

語られていない流出。

記録されていない消失。


語られていないなら、記録すればいい。

残っていないなら、その“不在”こそを記録すればいい。

制度が説明しなかった10年分の空白。

私はそれを、ここに記す。

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