百合メイドの黒幕ミスリード
此咲夏
第1幕 黒幕は影に潜むもの
「魔王よ!先代勇者の仇を、今取らせてもらう!!我が最強、魔装剣ディオルで!!」
物語は最終盤。先代勇者が魔王に討ち取られ、その仇を取るべく新たな勇者が誕生した。彼は数多の困難を乗り越え、とうとう魔王城の最果てに辿り着いた。
彼は聖剣と名高い魔装剣ディオルを魔王に向けると、揺らぐことのない瞳と意思を抱き宣言する。
「勇者よ、私に力を見せてみろ。この満ち溢れる憎悪と畏怖の荒波に、押し潰されぬというならな」
対峙する女魔王も冷徹な声音で挑発する。
「大丈夫かな……あんな事言ってるけど」
と白髪のメイドA。
「絶対に大丈夫とは言えません。ですがきっと、私たちに勝利を授けてくださいます」
と黒髪のメイドB。
「ええ。きっとそうですよ……」
と金髪のメイドC。
様子を俯瞰していた側のメイドたちは、各々が別の心境を抱いていた。確かに魔王は強いが、それ以上に勇者も強い。彼女たちにも、心配の感情はあるのだろう。
両者緊迫した状況下、今にも戦いの火蓋は切って落とされようとしていた。
これは世界が平和へと向かう為への最期の試練。勇者は共に歩んできた仲間たちと魔王を倒し、新たな時代の幕開けに進む物語……じゃない!!
とても真剣な面持ちの各陣営。勇者も魔王も一触即発な気配を漂わせているし、勇者の仲間である女性たちなんてなんかムラムラしている。
如何にもラストバトルです!なんて場面を謳っているが、本質は違う。
では、ここで皆に問おう。
【問】この物語の主役は誰?
勇者ではなく、魔王でもない。なら勇者の仲間?いいや違う。じゃあ魔王の側近?……それも違う。
この物語の主役はこの場のネームドキャラクターの誰でもない。一見すれば、誰もが見落としてしまうような、そんな立ち位置のいわばモブ。
魔王や側近、幹部たちの背後にひっそりと佇む白髪のメイド。そう、これがこの物語の主人公にして絶対に人前では言えないけれど………全ての黒幕である。
ネタバレすると、さっき話してたメイドABCはAが私。Bが元魔王でCが元勇者だ。
ふははははははははッ!!!!誰も、誰も分かりやしない!!私が、この世界の黒幕が、メイドに扮しているなんて!!!
とまぁ、ラストバトルの陰で黒幕ムーブを楽しんでいる私だが、ここまで来るのには多少の時間が必要だった。
今からその過程を話していこうと思う。
そう、物語は私の前世から始まるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます