ハイファンタジー~宇宙を駆ける夢追い人~
@kookloot
pre:XWI隊員ロッド・ル・フレイザーの音声ログ1
-MD05星系第3惑星メリッサ重力範囲内-
-銀河統一歴0380/01/15/05/20
既に惑星メリッサの重力範囲内に入り、間もなく惑星への突入が始まるため狭い強襲揚陸艇の内部でサイレンがいやというほど頭を殴りつける
今回の作戦には私を含めた特殊部隊XWIの20名の中隊が参加している
皆特殊部隊XWIに入隊できるだけの優秀さを持ち私の訓練に耐え抜いた中隊隊員達である、ここの皆ならば今回のミッションにも確実に耐えうると確信できる
そう思うと自然と笑みがこぼれてくるものだ
『我らが中隊長どのが笑っておられるぞ、皆遺書はきちんと書いてきたか?!
俺は忘れてしまったぞ!』
『ガウェイン小隊長どのは大丈夫でしょう、どんな獣なら小隊長を殺せるのやら』
-ハハハ
ワームスペースを移動中の短い時間での睡眠時間を終えた隊員達が惑星に入れば暫くは出来ないであろう談笑をしてお互いに士気を保ち合う
我らが乗る揚陸艇K-58-085の狭い待機室では既に皆耐衝撃用の固定装置器具に繋がれているので大きな身動きは出来ないが会話程度なら問題ない
『しかしてなかなか、この棺桶の居住性の悪さ何とかならないもんですかね!』
私が乗る強襲揚陸艇は現地での拠点構築の為に積み込まれている重機や資材により我らのスペースは待機室やトイレ、狭い寝室以外にはほとんどない
更には突入時の高い大破率により棺桶と呼ばれる程の防衛機能の低さである
流石に我ら特殊部隊が乗ることは少ないが今回のような反撃が見込まれない突入作戦では使われることもままある
その理由は圧倒的なコストパフォーマンスであり、この揚陸艇その1点のみで圧倒的な製造量を誇る
〔間もなく惑星メリッサへ突入をします、全ての乗員は安全マニュアルに従ってホールドを完了させてください〕
艇のAIのアナウンスが聞こえた途端にそれまでの喧騒は鳴りを潜め、皆私からの再度の任務目標の掲示を待っている
「今回の任務目標は来年大学を卒業なされるフリッツ・ド・イングラート様が開発を任された惑星メリッサの事前調査及び拠点構築である!
惑星メリッサでは魔力及び原住民が観測されておりこれを開発出来れば我らが祖国にとって大いなる助けとなるであろう!
大きくわけて3つ我々がしなければならないことがある!
1つ、拠点構築
2つ、文明を築いている原住民族から書物を得ること
3つ、魔力がある惑星特有の生物である魔物を生け捕りにすること
拠点構築は既に拠点構築によい地点を偵察済みであり降りてから棺桶に積み込みの重機や資材を使って拠点を構築することである
次に書物の取得方法だが穏便に済ませることが好ましい
降下地点から最も近い原住民族の国へまず行き、貨幣を得てからそれをコピーして買ってくるように
問題が起きた時の実力行使は各々の判断で行え
次に魔物の生け捕り方法は問わない、生きてさえいれば良い
五体満足であればなお良い!
との事だ、各自ボーナスも出るようなので頑張るように
ここまでで質問のある者は居るか」
『帰還の日時は』
「いい質問だミルガン小隊長、答えは未定だ
とりあえず我らが王子が来るまではここに待機、その後王子の護衛でやって来るもの達と交代で一度帰還することになると思われるが降下地点の危険度によっては長期滞在も視野に入る、以上
他にはどうだ」
その後もいくつか質問は出たが艇が降下体制に入ったのでとりあえず締切とした
一度はブリーフィングで話したことなので特に質問は多くなかった
「間もなく突入である!各自装備の点検は済んであるか!」
『『おう!』』
「覚悟は済んでいるか!」
『『おう!』』
「間もなく突入!
対衝撃!声は出すなよ!舌を噛みちぎっても知らんぞ!!
この時間で再度目標を確認しておけ!」
そうして軽減されているとはいえ惑星への突入時の空気抵抗による凄まじい衝撃が揚陸艇襲う中私は王子が到着到着した時に万全の用意で迎えれるように今一度気合いを入れ直した
-40分後
本当に盆地なのかも分からないほど辺り一帯を覆い尽くす鬱蒼とした大森林に、心地よい音楽を奏でる小鳥たち、現地での時刻で言えば今は丁度正午辺りであり恒星が私たちを照らし続ける
「第1小隊と第2小隊はそれぞれコンビを組んで半径5kmの安全を確保及び川の状態確認
第3小隊はドローンと重機を用いての拠点建築だ
第4小隊は魔素濃度の測定の後ダンジョン化しているようであれば第1と第2のバックアップにつけ
直衛小隊は待機だ、イレギュラーが起きた場合に備えろ」
現地に降下完了した私はとりあえず現場の安全確保から行うために優先順位の高い順番に指示を出した
現場は鬱蒼とした森の中ではあるが衛星写真を見る限りこの場所は複数の川が流れ込む盆地となっていて開発すればそれなりの平坦な土地を得られると見られている
一にも二にも大事なのはこの場の脅威のレベルの確認である
魔物というものは弱いものは子供でも勝てる程度のものもいれば特殊部隊員として強化施術を受けた我らでも厳しい相手もいるという
なのでまずは安全を確保から
その次に場所の確認は取れているが川の水はどれだけ飲料水として使えるのかの確認
最後に拠点の建築だが
川の確認は半径10km以内に川があることから安全確保とともにできる
今回持ってきた重機は木材の伐採に特化したNB-5290である、パワーがあるので伐採作業は素早く進むであろうが大きな音で寄ってくる魔物がいるかもしれないので気をつけなければいけない
残りは建築用のドローンや固定タレットなどである
とりあえずの拠点をドローンに持ってきた資材とタレットなどの防衛機構を元に作ってもらいその間に重機で少しずつ周囲の木材を伐って空間を広げる
強襲揚陸艇は木々を備え付けのプラズマタレットで薙ぎ払ってから無理やり着陸したので離着陸用の場所も作らねばならない
将来的にはここに秘密の司令室を置くことになる予定なのでどれだけ現状開発したって問題は無い
唯一の懸念事項である魔物であるが、ダンジョン化と呼ばれる現象が起きた場所以外には比較的生息数が少ないことがわかっている
ダンジョン化とは魔力の元となる魔素と呼ばれる物が様々な要因で高濃度で一定範囲に存在することを指し、その状況下では生物が魔物に変異することが起きるのに加えて様々な魔物が変態することによって多種多様な魔物が現れるまさに魔境となる
魔物は魔力をある程度蓄えたらこれまでの経験からより自らが望む姿へと魔力による繭を作り変態するという特性がある
不思議なことにこれらの特性は惑星が違えどどの惑星でも観測される現象であることからそういうものであると結論づけられている
「お前たちは大丈夫だと思うが一応言っておく、魔物は起動部位と呼ばれる部分から摩訶不思議な物質、魔力を使って魔法と呼ばれるものを放ってくる
様々な現象を起こしてくる正しく魔法だ
よって初見の魔物ではまず様子を伺うんだ、どんな魔法が飛び出でるかわかったものでは無い
基本的にひとつの起動部位につき1種類の魔法だから
全ての種明かしをしたら殺すんだ
殺した後印をつけて埋めておけ、後でドローンに回収させる
魔物の捕獲は周囲が安定してからだ
周りが安定すれば少量の飲酒も許可される
それまでやるべき事をやろうじゃないか」
「尚、アドレナリンは第1と第2小隊に加えてバックアップに出る場合第4小隊に使用許可を出す
あまり使いすぎて頭をバカにするなよ」
アドレナリンというのは麻酔と興奮剤の成分が混ざっている薬、ようは麻薬だ
内臓まで強化施術されている我々は常用するわけでなければアドレナリンによって発生する有害物質も害のない範囲まで減らしてくれる
『測定結果でました、DまではいきませんがN3です
ダンジョンコアの発生まではいっていませんがこのままでは近い将来発生するでしょう』
第4小隊長のウォルターが現状の報告を簡潔にしてくれる
「わかった、では第4小隊は離着陸場の建設からかかれその後は宿舎だ」
『『はっ!』』
危険な魔物がいる可能性は十分にあるがダンジョン化していなかっただけ幸運である、とりあえずはこの盆地を開発するのに問題はなさそうである
-3時間後
みなが戻ってきて報告が行われた
ここまでで大きくわけて3つの朗報と2つの問題があった
朗報3つは離着陸場の完成、半径5kmの安全の確保、近くの山にどうやら魔石の鉱山があるらしいこと
問題は鉱山の山頂からこちらを眺める二足歩行の謎の生物がいたこと
大方人型生物との接触に刺激を受けた魔物が進化したものだろうと思うが警戒しなければならないのに違いは無い
2つ目は川の衛生状態は飲めるものでは無いということだ、生物が生きていくには十分だが我々が飲むには腹を下す可能性があると
暫くは持ってきた飲料水を飲み、王子たちが来るまでには井戸を掘ることにした
「3時間での半径5kmの調査ご苦労、素晴らしい働きである魔物の討伐数も素晴らしい
我らが気をつけるべき生物はいたか」
広範囲ソナーとウラン製弾頭を装填した自動小銃HK-0889、クロンダイト製のショートソードにその他様々なガジェットを駆使してできる限り素早く指定範囲内を制圧してきたであろう隊員達に聞いた
『はっ!特にはいないかと!森だけあって種類は豊富ですがD2クラスの生物は見当たりませんでした!傾向としてはやはり虫系が多く、その次に小動物、生態系の頂点に虫系の1部と大型動物型、鳥類が立っております!』
第1小隊長のガウェイン小隊長が溌剌とした声で答える
「素晴らしい、では第1と第2は拠点構築作業の補助に入れ第4は現時点をもって宿舎建設の任を解き、南西に20km進んだ先にある原住民族の都市へいき一先ず貨幣を手に入れてこい、農村はどの道物々交換が関の山だろうからちゃんと都市へ行くんだぞ」
『かしこまりました、中隊長どの』
ウォルターの簡潔な返事を聞き私は緊急事態に備えて優先的にタレットの整備を命令した
※時間表記は前から年/月/日/時/分です
銀河に進出しても人類の歳の刻み方は変わらなかったので月日時間の数え方は変わらず、人類が銀河に進出したその時から銀河歴が始まった
※XWI=シャヴィ・ウル・イグナ
これは古代イングラート王国において外征、内政双方において格別な功績を残し王家を長く守護した並ぶ者なしと評された騎士
彼の功績を評価する為に騎士総団長という役が作られこれまでの史上二人しか任命されたものはいない
騎士総団長と言っても騎士団が沢山あった訳ではなく
貴族の領軍以外の全てを指揮する権限が付与された
ただし騎士総団長となるほどの者はどこの貴族でも尊敬されるほどの存在なので往々にして貴族の領軍まで指揮した
よってこのXWIという特殊部隊では階級が騎士にちなんだ名前となる
※Nはダンジョン化していないことを表す
段階があり1は全く無い状態、2は魔素はあるが少なく、危険な魔物が出てくるほどでは無い状態
3はいつダンジョン化してもおかしくない状態
魔素がダンジョン化と規定される水準までいっていないだけで危険な魔物も生まれる可能性がある
Dは既にダンジョン化していることを表す
ダンジョン化とは魔素が一定まで濃くなるとダンジョンコアと呼ばれる魔物が生まれることがある
ダンジョン化の基準はこいつが生まれる可能性がある水準かどうか
段階があり1が魔素に耐性の無いものでも体に害を及ぼさないレベル
2が魔素に耐性の無いものが体に不調をきたすレベル
D2に魔素に耐性がない、ようは現地住民でなかった者が入った場合少しずつ体に異変がおき次第に衰弱していく
※ダンジョンコアは魔物と共生関係を結ぶ魔物でその起動部位は他者を活かして自らの安全を確保する方に振り切っている
※魔石とは、魔素に反応しやすい鉱石が魔力により変質することによってできる物質
魔力を通すので魔力を用いた発電に現地民の装備に様々な用途がある
※強襲揚陸艇K-58突入作戦の時に対空砲や軌道防衛システムなどにより突入前の大破率が4割近くあり棺桶と呼ばれている
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