第20話 再会

「あはは、そうか……嫌だったら言ってくれないかい、今後は止めるからさ」

マスターは少し苦笑いをして、下を向いた。皿を洗うことにしたらしい。

「別に不愉快ではありませんでしたよ。クソ暑い中外に出るのはさながら遭難のようでしたがね」

「それはまた、申し訳ないことをしてしまったね。今度から車で迎えにでも行こうか?」

「遠慮しときたいです。年寄りに送迎行かせるような畜生にはまだ堕ちてませんし」

「僕はまだ老けてないよ。ご覧の通りシワも白髪もそこまでないだろう?」

洗剤を拭い、笑顔でこちらを見つめてくるマスターの姿は、どうにも滑稽だった。だが、彼が70を超えた爺様という事実は変わることなどないのだ。

「そこまでの時点で老けてるんですよ、残念ながら」

「あー何も聞こえないなーなんだろうなー」

「都合のいい脳みそですねほんっと」

——人と話すのって、こんなに楽しかっただろうか。久しぶりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る