心霊アルバイト
稲富良次
第1話 序章
1980年代神戸
僕は神和大学の教育学部の二回生だ。
実家は神戸市にあるが家が裕福なので大学の近くの六甲の学生向きの寮に
下宿している。
こういっては何だが勉強しなくても適当にヤマを張って試験に行けばいい点をとれたので今の大学に通っている。
贅沢したいわけではないが親の仕送りをあてにしたくなかったのでアルバイトをしている。
なんのことはない平凡な大学生
今の日本でいえば非常に恵まれていると言っていい。
ただ霊感というのがあるのが厄介だ。
一番きついのは臭いだろうか…
とにかく「死臭」をかぎ分けてしまう。
死臭とは血が腐った匂いだ。
これの効果が微妙なのは、いわゆる風呂に入らないオタクとか加齢臭に気が付かない親父の臭いと近しいので判断がつかないことにあるのだ
だから僕はオタク系のサークルとかパチンコ屋には行ったことがない。
自分がそう認識されるのが嫌なので8×4とかの香水はかかしたことがない。
身綺麗にしているのと顔もそこそこでスタイルもいいので彼女が絶えたこともない。
嫌味に聞こえるが性行為に関しては淡泊だ。
苦労したことがないのでありがたみもないのだろう。
結局、「つまらない人ね」と言われて別れを切り出されることが多い。
来るもの拒まず去る者追わず。
だからダブって複数の女性と付き合ってしまう。
修羅場も何度も経験したが
そのたび両方と関係を断つので話がこじれることはない。
人間の生活の足を引っ張るのは「固執」だ。
無限にチャンスがあるのに、何故目の前の者に固執するのだろう。
それは愚かなことではないのだろうか。
しかし友情は大切にしている。
これは失くすと取り戻すのが難しい。
いや取り戻せたことはない。
一度友達の彼女とは知らないで、ある女性と付き合ったのだがバレて絶交された。
その女性と会えなくなるのはたいしたことではないが
その友達に関係している他の友達まで疎遠になってしまうのは痛かった。
僕から誘った訳じゃないんだけど…
それは女性でも同じじゃないのかって。
たしかに前の彼氏を悪く言う女性は多いのだろうが僕に限ってそれはないのだ。
印象が薄いのだろう。
それを確信したのはある時スポーツジムに通ってバカみたいに鍛えて髪型を変えたら
同じ女性に誘われたことだ。
彼女も最中にそれに気が付いて
「もしかして○○君?」
「そうだよ」
「なぜこうなるまで名乗らなかったの」
「きみが聞かなかったからさ」
「あんた女誘うの上手すぎるわ、私だからよかったけど、これをされるの女としては
恥だからね」
結局最後までしたけれど、そういうことらしい。
ここまで話を聞かされて嫌味なやつと思われているなら
もうすこし付き合ってほしい。
これから僕の話は悲惨なことしかないから…
なぜ前段でこんな話をしたのかというと
これはへんに同情されたくないからなんだ。
これは僕が初めて一回生の時にアルバイトした話だ。
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