まず凄いと思わされるのは、平安文化に対する造詣の深さ。
服の表現、色の表現、その着こなしなどの表現は本当に驚きます。
それだけで、物語世界の深さを実感できます。
ただ、主人公たる姫は宮家(いわゆる皇族)の末席にありながらもあまり姫らしからぬところがあり、未婚のままかと思いきや、突然、遠国の国守に見初められ――。
打算に満ちた結婚の裏にある本音がお互いすれ違いまくります。
一方、地誌を含めた背景の描写がとても丁寧、古代日本の風景が目に浮かぶようです。
果たして夫婦になった二人が今後どうなるのか――というところでいったん終わってますが、続きも楽しみな内容。
まずは序章、平安文化と地方の素朴な雰囲気、両方を感じ取れる本作、読んでみてはいかがでしょうか。
没落した宮家の姫君、祥子と、魅力的なのに女心がいまひとつわかっていない(でも、それがいいのです)喬任。
出逢って話をした瞬間からお似合い感が溢れているのに、「契約婚」という形をとることになります。
そして……。
知的で好奇心旺盛な祥子さんの行動力や細やかな思いの移り変わりが、とても鮮やかに描き出されており、いつのまにか彼女の魅力に強く惹かれていきます。
そんな彼女の前に突如現れた「契約婚」の話。
そこへ至る経緯がテンポよく語られていて、次へ次へと読み進めていきたくなりました。
「契約婚なんだから! 好きになんかならないもん!」な二人ですが、もう、読みながらニヤニヤしちゃいます。この雰囲気、大好き!
世界観も魅力的。ファンタジー感と現実感が凄く自然により合わされていて、するりと物語の世界に入り込んでしまいました。