第5話 赤の国の女王
私達は王城内の北側の外壁の空いていたネズミが通れるくらいの小さな穴から王城内へと侵入した。
王城内へと侵入した私達は身体を元の大きさに戻すことの出来る小瓶に入った液体を再び飲んだから、衛兵の目を掻い潜って城内を突き進み、女王の部屋へと侵入した。
「女王が部屋に来ない内に鍵を見つけないとですね。急ぎましょう!」
「そうね、何処にあるのかしら……」
私達は女王の部屋の中を見回して、それぞれ部屋の中を歩きながら鍵を探し始める。
「棚の上にはないわよね? って、これ鍵じゃない?」
私は棚の上にあった鍵を手に取り、近くにいたシディスに見せる。
「これです! こんなに早く見つかるなんて。ついてますね」
どうやらこの鍵が元の世界に帰る為の鍵のようだ。
見つかったから後はこの部屋から出るのみ。
「ええ、レナート、見つかったから部屋から出るわよ!」
私は部屋に置いてあるベット付近にいたレナートに一声かければ、レナートは私を見て頷き返す。
そして私達は女王の部屋を出ようとドアへと歩み寄った。
しかし、部屋の外の通路からコツコツと近付いてくる足音に私達は顔を合わせてドアから離れ。部屋の中の隠れることが出来る場所に身を潜めることにした。
コツコツと近付いてきた足音は部屋の前で止まり、部屋のドアはゆっくりと開かれる。
「はぁ、疲れたわぁ〜! 本当、あのカエル男、最後まで泣き喚いてうるさかったわね。私が打首と言ったら打首なのよ。ん? 何かうさぎ臭いわね……」
私とレナートはクローゼットの中に隠れたが、シディスは女王のベットの下に隠れた為、私はレナートと共にクローゼットの扉の隙間からシディスと女王のことをハラハラしながら見ていた。
「凄い匂うわ! もしかして誰かいるのかしら!?」
「くしゅん……」
「今、くしゃみの音がしたわね? ベットの下から聞こえたわ」
女王がベットの下を覗き込めば、兎の両耳をつけた白髪に紫色の瞳の青年がいて。
「あなた誰……! 私の部屋で何をしているの!?」
女王は驚いた声を上げてから侵入者がいることを知らせる為のベットの横に置いてあったベルを鳴らす。
リンリン、リンリンとベルの音を鳴らしてから数分後、部屋に衛兵の男が一人やって来た。
「どうしましたか? 陛下」
「私のベットの下に侵入者がいるわ! 捕らえてちょうだい」
「承知しました」
衛兵がベットの下を覗き込むとシディスは怯えたような顔で硬直していた。
「おい、いつまでそこにいるつもりだ! 早く出てこい」
「わ、わかりました……!」
衛兵の言葉にシディスは我に返り、身体をベットの外へと出して立ち上がる。
衛兵はそんなシディスの手首に手錠をかけてからシディスを引っ張るようにして、女王と共に部屋から出て行ってしまう。
「大変だわ、どうしましょう。シディスが捕まってしまった……」
「落ち着いて、アリシア。取り敢えず、クローゼットから出よう」
「ええ、そうね」
私はレナートと共にクローゼットの中から出て、互いに顔を見合わせてから、捕まって連れて行かれてしまったシディスを助ける為に女王の部屋を後にした。
私とレナートはシディスが落としてくれたであろう花びらを頼りに、シディスが連れて行かれたであろう場所へと向かっていた。
衛兵の目を掻い潜りながら、何とか、シディスがいるであろう玉座の間にたどり着いた私とレナートは少し開いている玉座の間の大扉から王座の間の部屋の中へと入り。
衛兵や女王の視界に入らないであろう丸くて太い柱の後ろへと身を潜めて、様子を伺うことにした。
私とレナートは柱の後ろに隠れながら、そっと覗いてみると。
玉座の席に座る女王とそんな女王の前に座り込んでいるシディス。
そしてそんなシディスの真横にいる先程、シディスに手錠をかけた衛兵がいた。
「お前は私の部屋で何をしていたのかしら?」
「何をしていたかですか? はは、何もしてませんよ! 私はただ間違えて女王陛下の部屋に入ってしまっただけです」
シディスと女王の会話を聞きながら、私とレナートは顔を見合わせる。
どうやらシディスはシラを切るつもりのようだ。
「ふざけるな! お前は私を欺こうとしているわね? 打首よ! こいつを打首にしてちょうだい!!」
赤の国の女王が苛立たしげに席から立ち上がり、そう叫ぶのと同時に赤の女王が座る玉座の席の右斜め後ろにいた衛兵が赤の女王の左胸に剣を突き刺す。
突然のことにその場にいたシディスや衛兵達は唖然とし、その場に数秒の沈黙が流れた。
私とレナートはそんな一瞬の隙を見逃すことなく、手首に手錠をかけられたシディスの元へと駆け寄り、私はシディスの手を掴み、その場から立ち上がらせ引っ張るようにしてレナートと共にこの場から逃げようと走り出そうとしたが両横にいた数人の衛兵達に囲まれてしまい。
しかし、そんな私達を取り囲んだ衛兵達を血を流して倒れている女王の側に立つ女衛兵の男が右手に持つ銃で衛兵達を的確に撃ち始めたのだ。
衛兵の男の銃撃により、あっという間に私達取り囲んでいた衛兵はその場に倒れていく。
私達の周りにいた衛兵が倒れたのを確認してから、男は私達の元まで走り寄ってきて。
「死にたくないならついて来い!」
そんな衛兵の男の言葉に私達は頷き返し、玉座の間の部屋を後にした。
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