第4話 赤の国の王城

 

 昼食を食べ終え、どうやって王城へと入り、女王の部屋に侵入するかの作戦を立てた私達は赤の国の王城へと続く王都の道を歩いていた。


「それにしてもレナート、貴方って意外と策士だったのね」

「まぁね〜!」

「王城が見えてきましたね」


シディスの言葉通り赤の国の王城はもう目と鼻の先である。

 赤の国の王城は赤色と黒色をベースにデザインされており、とてもお洒落な外装をしていた。



 王城の正門の前までたどり着いた私達は正門の前に立つ二人の門番兵に女王に用があって来たことを伝えるが。


「女王陛下は今、機嫌が悪いから今は辞めておいた方がいいですよ。そうですよね、ダム?」

「そうですね、ディー。機嫌が悪いですからね〜、首を刎ねられるかもしれません」


 まだ若そうな門番兵二人の青年は私達を王城へ入れる気はさらさらないのか、正門を開けようとはしてくれない。


「もう少し経ってから入りましょうか」

「ええ、そうね」


 シディスの言葉に私は頷き返し、王城の正門に背を向けて私達は歩き出した。


「レナート、貴方が言っていた通り正門からは

入れなかったわね」

「そうだね〜! だからあそこから入るしかないね〜」



 レナートが言ったあそことは、王城の北側に位置する壁の中間付近にある壁にぽつんと開いた箇所のある小さな穴のことだ。


「ねえ、レナート、凄い気になったのだけど。その穴って小さいのよね?」

「うん、鼠が通れるくらいの穴だよ〜」

「えっと、それ、私達、通れなくないかしら?」


 流石にそんなに小さいのならその穴に通るのには無理があるだろうと思った私に、何故か私の両隣を歩くレナートとシディスは余裕そうな笑みを浮かべている。


「まあまあ、安心して。ちゃんと通れるからさ〜!」

「アリシアさん、そんなに心配する必要はありませんよ!」


 そんな二人を見て、何か策があることを私は察した。


「わかったわ」


 一体、そんな小さな穴からどうやって王城の中へと入るのだろうか。この時の私には想像もつかなかった。



 レナートが言っていた王城の北側に位置する壁の中間付近にたどり着いた私達は壁の下にある小さな穴を見つける。


「こんな小さな穴、どうやって通るのよ?」


 私の問いにシディスは自身の上着のポケットから何かを取り出して私とレナートに見せる。


「これを飲めばこの小さな穴を通れます!」


 シディスが着ていた上着のポケットから取り出した物は人差し指くらいの長さをした縦長の小瓶だった。

 その小瓶の中には水のような液体が入っており、私はそんな水のような液体を飲んでこの小さな穴を通ることができるのだろうか。という疑心が生まれる。


「まあまあ、取り敢えず、アリシアさん。これを一口飲んでください」

「いいけれど。飲んで身体に何か不調出たりとかしないわよね?」

「はい、それはないので大丈夫ですよ!」


 私はそう言ったシディスから水のような液体が入っている小瓶を受け取る。


 そして小瓶の蓋を開けて私は小瓶に口をつけて一口、小瓶の中に入っている水のような液体を口に含み飲み込んだ。


「はぁ…… 飲んだわよ? って、何よこれ……!?」


 小瓶に入っていた水のような液体を飲んだ私の身体は勢いよく小さく縮み始めたのだ。

 小さくなっていく私の姿をにこやかに見つめているレナートとシディスを見て、私は二人の穴を通る為の策が何なのかを理解する。


「もしかしてこれって、身体を小さくする薬?」

「はい、そうですよ! 私もレナートさんも飲みますので」

「じゃあ、次は俺、飲むよ〜」

 

 レナートはしゃがみ込んで、私の手に持っていた小瓶を取ると私と同じように小瓶の中に入っていた透明な水のような液体を一口、口に含み飲んだ。


 小瓶に入っていた液体を飲んだレナートは私と同じようにみるみる身体が小さく縮み、私と同じくらいのちっちゃさになる。


「服ごと小さくなってくれたみたいだから、服がぶかぶかになれなくてすんだなぁ〜」

「じゃあ、私も飲みますので。レナートさん、小瓶をください」

「はい〜」


 レナートから小瓶を受け取ったシディスも小瓶に入っていた液体を飲み。身体を縮めて、私とレナートと同じくらいの小人サイズになる。

 

「それじゃ、行きましょうか」

「そうね」

「捕まらずに上手くいくといいなぁ〜」


 私達は王城の中に入る為に目と鼻の先にある王城の壁の下に空いた穴へと向かって歩き始めたのであった。

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