第3話 赤の国の王都
翌日。
私はレナート、そしてシディスと共に家を出て元の世界に帰る為に必要な鍵を手に入れるべく王城がある王都を目指して歩き始めた。
「今日も良い天気ね」
「そうですね〜」
「でもここ最近、雨降ってませんし。作物のことを考えるとそろそろ雨降ってほしい気もしますね」
私達はそんな他愛のない会話をして晴れた空の下を歩きながら、私は昨日の夜、シディスから教えられたこの世界のことについての話しを思い出し始める。
✧
「アリシアさんはまだこの世界のことについて詳しく知らないようなので。この世界のことをお教えさせて頂きますね」
夜ご飯を食べ終えた私は茶色い机を挟んだ向かい側の椅子に座っているシディスからそう言われて頷いた。
「ええ、頼んだわ」
私がそう言うとシディスさんは話し始める。
まず、私達が今いる場所は赤の国の西に位置する小さな街〈レーヴェ〉という場所らしい。
そして、私がこの世界に迷い込んだ場所であるあの森はレナートが普段、生活している場所でもある西の森。ロダンという名称がついている赤の国で一番広い森。
またこの赤の国を治めるのは王様ではなく女王であり、隣国の白の国の妹であるようだ。
2年前。王様が崩御された後に王位についたのが現在の女王であるアンゼリカ。という名前の女性である。ということを私はシディスからの話しを通して知った。
「なるほど。大体、この世界のことについてわかったわ。ありがとう、シディス」
「それならよかったです。また何か教えてほしいことがあったら教えますので。遠慮なく聞いてくださいね」
シディスからそう言われた私は優しい笑みを浮かべて頷き返したのであった。
✧
私達がシディスの家がある西にある小さな街〈レーヴェ〉を出てから、3日目の昼過ぎ頃、私達は赤の国の王都の街へと辿り着いた。
「此処が赤の国の王都……!」
目の前に広がる赤の国の王都の街並みを視界に映しながら私は思わずの驚嘆の声を上げてしまう。
「久しぶりに王都に来ましたけど、相変わらず賑やかで活気づいていますね〜!」
色鮮やかな建物が立ち並び、沢山の人々が行き交う王都の街並みはシディスの言葉通りとても活気づいている。
私達はまだ食べていない昼食を食べる為に王都の街並みに立ち並んでいる紫と白色の外装の二階建てのカフェらしきお店の中へと入ることにした。
「お洒落なお店ね」
お店の中に入った私は店内を見回してからポツリと感想を呟く。そんな私の独り言に両隣にいたレナートとシディスも同調する。
「そうですね」
「確かに〜! あー、お腹空いた〜」
私達は店のドアから少し離れた奥の方の窓際の空いてる席に座り、メニュー表を手に取って食事を選び始めた。
「んー、どれにしようかしら」
「アップルパイ美味しそうですね」
「シディスは本当、アップルパイ好きだよね〜」
数十分後、メニュー表を見て食べ物を選び終えた私達は店内にいる店員を横長のクリーム色の机の端っこに置いてあるベルで店員を呼び食べ物を頼んだ。
「えっと、アップルパイとパスタとピザを一つずつお願いします」
「アップルパイ一つに、パスタとピザを一つですね。承知致しました」
女性の店員は私達が頼んだ物をメモしてそう述べてから立ち去って行く。
私達は店員を見送ってから他愛のない会話をして頼んだ食べ物が運ばれてくるのを待つことにした。
「それでその元の世界に帰れる鍵というのは赤の国の王城の中にあると言っていたけれど。王城の何処にあるの?」
私の問いに目の前に座っているシディスとレナートは少しばかり顔を顰める。
「それがですね、その鍵があるのは女王の部屋なんですよ……」
「そうなんだよなぁ、数年前にアリシアと同じようにこの世界に迷い込んだよそ者の人の時は鍵は王城の地下室に置かれていたんだけど。理由あって今は女王が所持しているみたいなんだ」
女王の部屋に元の世界に帰る為の鍵がある。
ということは私達は女王の部屋に忍び込まないといけないようだ。
「勝手に忍び込む訳よね?」
「まあ、そうだね〜、直接女王に理由を話してもきっと、許可なんて降りないと思うし」
「見つかったら捕まって牢屋行きかしら?」
「そうてすね、牢屋行きは確定で。女王の機嫌が悪ければ処刑も確定でしょうね……」
シディスとレナートの言葉に私は不安になり始める。
見つかったら牢屋行きで処刑もあり得るなんて恐ろしすぎる。
元の世界に帰れないどころかこの世界で死ぬことになるのだから。
「リスクを承知の上で忍び込むか、忍び込まないかってことね……」
「そうですね、私はアリシアさんがやるというのなら協力しますよ」
「シディスと同じく、アリシアがやるなら協力するよ〜」
どうやらシディスもレナートも私が決めたことに協力するようだ。
見つかったら捕まり牢屋に入られて、処刑されてしまうかもしれないのに。
それを承知の上で私がやると言ったら協力すると言ってくれた二人。
「やるわ、女王の部屋に忍び込んで鍵を盗みましょう」
一か八かであるが、これで鍵を盗めたら私は元の世界に帰れるのだ。
元の世界に帰る方法がその鍵しかないのであるから仕方ない。やるしかない。
「わかりました。では、作戦を練りましょう!」
「そうだね〜」
「ええ、取り敢えず食べてからにしましょう」
お腹を満たしてからでないと作戦が頭に入ってこない。
「そうですね、そうしましょう」
シディスの言葉に私とレナートは頷く。
私達は他愛のない会話をし、頼んだ食べ物が来るまで待つことにしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます