第2話 白ウサギ
緑豊かな森の中を歩き続けてどのくらいたっただろうか。
目と鼻の先に見えてきた森の中に佇む明るい茶色のレンガでできた屋根に白い外装の家。
「もしかしてあの家に協力者がいる感じかしら?」
「ああ、そうだよ〜」
レナートは私の問いかけに頷き返しながら家がある方を見つめていた。
「どんな人なの?」
「どんな人かぁ…… そうだねぇ〜」
レナートがいう協力者の人がどんな人なのかまだ何も知らない為、少しばかり不安になる。
私の質問にレナートは少し考え込むようにうーんと唸った後、話し始めた。
「明るい人かなぁ〜」
「明るい人?」
「うん、そうそう〜」
明るい人。ということはレナートみたいな感じの明るくて人当たりの良い感じの人なのかもしれない。
ひとまず怖い人じゃなくて安心した私は胸を撫で下ろした。
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私とレナートが茶色のレンガで出来た屋根と白い外装の家の前に着くなり、玄関のドアが勢いよく開かれた。
「やぁ〜! レナートさん、久しぶりですね!」
勢いよく開けられた玄関のドアから出てきたのは白髪に紫色の瞳に頭にはウサギの耳のような物が二つついているレナートより背の高い若い青年だった。
「久しぶりだね〜、シディス! 元気にしてたかい?」
「はい! 勿論、元気にしてましたよー!」
シディスと呼ばれた青年と隣に立っているレナートを見ながら会話が終わるのを待っていた私の存在にシディスという青年は気付いたのかこちらを物珍しそうに見てくる。
「この娘は誰ですか? レナートの知り合いです?」
「いや〜、違うよ〜! この娘はアリシアっていうんだけど。別の世界からこの世界に迷い込んだらしいんだ」
「迷い込んだということはよそ者ですか」
この世界ではない別の世界から迷い込んだ者をこの世界の住人は【よそ者】と呼ぶということを此処に来るまでのレナートとの会話の中で知った。
「ええ、そうよ。私はアリシア・ラドリーティというわ」
「アリシア・ラドリーティ。良い名前ですね! 私はシディスといいます。立ち話もなんですし上がってください」
シディスと名乗ってくれた青年はそう言い私とレナートを家の中へと招き入れる。
家の中へと入った私とレナートはシディスに案内されリビングらしき部屋へと足を踏み入れた。
「とてもシンプルな部屋ね」
部屋を見た感想をポツリと呟いた私にシディスは苦笑しながら『必要最低限の物しか置きたくないんですよね』と返してきた。
多分、リビングであろうこの部屋には食器が置かれている棚。そして机と椅子に冷蔵庫。という至ってシンプルな部屋であった。
「じゃあ、お茶用意しますので。そこの椅子にでも座っていてください!」
シディスにそう言われた私とレナートは茶色い机の前に置かれているクリーム色の木製の椅子がある場所まで歩み寄り椅子に腰を下ろす。
数分後、透明なグラスに入ったお茶をお盆の上に乗せて私とレナートの前にある机までやってきたシディスは机にお茶の入ったグラスを2つ置くなり、自身も椅子にそっと腰掛けた。
「ありがとう。シディス、いただくわ」
「凄い喉乾いてたんだ〜」
私とレナートはシディスにお礼を述べてから、机に置かれた透明なグラスに入ったお茶を口に含み飲んだ。
「外は暑いですしね〜」
シディスは部屋の窓から見える青く澄み渡る晴れた空を見つめてそう呟く。
「本当よ、今って夏なの?」
「そうだよ〜!」
レナートは冷たいお茶の入ったグラスを机に置くなり私の問いに答えてくれた。
「そうなのね」
この世界にも季節という物があるらしい。
私がいた世界にも季節という物はあった。
因みに私がいた世界の今の季節はこの世界と同じ夏である。
「シディス、早速なんだけど〜、アリシアを元の世界に帰す為の協力者になってほしいんだ」
「協力者ですか?」
「うん、そうそう〜」
「まあ、此処に来た時から何か訳ありなのはわかっていましたし。いいですよ。協力者になりましょう」
即決なシディスに少し驚いた私を見て、レナートとシディスは苦笑する。
「だから言っただろ〜? シディスは絶対、協力者になってくれるって」
「アリシアさんは僕が断ると思ってたんですか?」
「ええ、ちょっと不安に思ってはいたわね」
私がこの世界に来てからまだ数時間しか経っていない。この世界のことをまだあまり知らない私は元の世界に帰る為に協力してくれる人にこうして二人も出会えた。
この世界に迷い込んだあの場所から動かずにいたらきっとこの二人に出会えていなかっただろう。
「じゃあ、今日はひとまず此処に泊まって。明日の朝、出発しましょう」
「そうだね〜! 一晩、お世話になるよ。シディス」
「ええ、わかったわ。 ありがとう、二人とも」
こうして、私はレナートと新たな協力者であるシディスの家に一夜を明かすことになったのであった。
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