チョコに願いを込めて~神と彼女の願いの先は…~

たまごボーロ

チョコに願いを込めて~神と彼女の願いの先は…~

寂れた田舎町の古びた神社に

少しおしゃれをして誰かを探しているような女の子が一人やってくる


神様:おや?あの子は…


神様:N)このような寂れた神社に不釣り合いな女子(おなご)

     久しく姿を見なかったが、以前の素朴な感じとは違い

    少し化粧を施し大人びて見えた



彩梅:久しぶりに来たけど、やっぱり変わらない

   この雰囲気落ち着く


彩梅:N)小さな町の小さな神社、今は寂れて参拝する人もまばらだ

   神主さんもいないようなそんな神社..

   

彩梅:M)小さいころからおじいちゃんに連れられてよく遊びに来てた神社

   ここに来ると不思議と落ち着く。

   まるで、誰かに見守らているかのように、温かい空気に包まれる感じがする

   そういえばおじいちゃんも言ってたっけ…


~回想(彩梅幼少期)~


彩梅(幼):ねぇおじいちゃん。

      なんでおじいちゃん毎日ここのお掃除しているの?


祖父:ここはな、おじいちゃんにとって大切な場所なんだよ

   ここの神様はな、おじいちゃんのお父さんを守ってくださったんだよ


彩梅(幼):おじいちゃんのお父さん?


祖父:そうだよ。おじいちゃんのお父さん…彩梅にとってはひいおじいちゃんになるな。

   

彩梅(幼):ひいおじいちゃんかぁ


祖父:ひいおじいちゃんんが戦争に行く前にここにお参りに来てお守りをもらって戦争に行ってな、

   ひいおじいちゃんそのお守りを肌身離さず持ってたらしいんだけど、

   襲撃の最中にお守りが落ちてしまって拾いに戻った時に爆弾が落とされたらしいんだ

   ひいおじいちゃんがお守りを拾って顔を上げたら、

   目の前が火の海でそのまま、ひいおじいちゃんが進んでいたら爆弾で死んでいたらしいんだ


彩梅(幼):そうなんだ。じゃあ、お守りがひいおじいちゃんを守ってくれたんだね

      

祖父:そうだよ…それにだな...


彩梅(幼):それに?


祖父:これは彩梅のパパにも内緒な


彩梅(幼):なぁに?


祖父:父さん…ひいおじいちゃんの影響もあって、事ある毎にこの神社でお参りや相談、

   お願い事をしていたんだよ。

   おじいちゃん好きな子が出来てな、この神社に相談とお願いをしたんだよ

   好きな人と恋人になれますようにとな


彩梅(幼):わぁ


祖父:ある日、いつものように神社にお参りに来ていたら、偶然おじいちゃんの好きな人がきてな、その時偶然彼女の付けていたリボンがほどけておじいちゃんの目の前に落ちたんだよ


彩梅(幼):凄い...


祖父:それを拾って、話しかけて仲良くなれて、結婚できたんだよ


彩梅(幼):それって、おばあちゃん?


祖父:(頷く)


彩梅(幼):じゃあ、おじいちゃんがおばあちゃんと結婚できたのは、この神社の神様のおかげなの?


祖父:そうだよ。

   だから彩梅もこの神社はたいせつにしなさい。

   きっと神様も見守ってくれるから…


~回想終了~


彩梅:おじいちゃんやひいおじいちゃんにとって特別な神社なんだよなぁ

   それにしても凄い偶然だなぁ

   本当に神様いたりして...


神様:M)…

   戦争の時の事はただの偶然だろうな…

   まぁ、あの頃は我にも力があり加護があったのかもしれんな…


神様:M)そういえば、昔毎日掃除に来て、色々話している男(おのこ)がおったな

   その男が色気づいて恋の相談なんかしていた時があったのだな…

   いつものお礼を兼ねて一寸手助けをしてあげたこともあったんだが.…

   そうか、其方の祖父だったか‥


神様:N)幼き頃から祖父とこの神社に遊びに来ていた女子、

   事ある毎にこの神社に来ては社に向かって話をしてくれていた


~回想~


彩梅(小学生):あのね、これ見てこの絵ね先生に褒められたの


神様:ん?どれどれ…

   (絵が風に舞ってしまう)


彩梅(小学生):わっ…


神様:ほほう、この社の絵か

   上手くかけてるではないか


彩梅(小学生):ふふっ頭なんかくすぐったい


彩梅(小学生):あのね、きょうね友達と喧嘩しちゃた

   だって彩梅の事嘘つきって言うんだもん

   

神様:どうしたのだ?


彩梅(小学生):この神社の神様ってすごいんだよって教えてあげたら

  あんな神社になんか神様なんているわけないって、彩梅の嘘つきって言われたから、

  怒って殴っちゃった


神様:そうなのか?我の事で喧嘩を…でも殴るのはよくない


彩梅(小学生):あれ鐘の音?

   神様も殴るのはダメって言ってるのかな?

   ママにも怒られたし…


神様:ちゃんと謝って仲直りするのじゃぞ


彩梅(小学生):あ、また鐘の音だ

   なんかお話してくれてるみたい。

   …うん!ちゃんと謝るね


彩梅(中学生):はぁ~大会ダメだった


神様:どうしたのじゃ?


彩梅(中学生):今日陸上の大会だったけど、県大会行けなかった


神様:そうか、頑張って練習してたって言っておったのにな


彩梅(中学生):初めての大会で緊張して足がもつれて、うまく走れなかった


神様:初めての大会か…いい経験をしたではないか、次頑張るのじゃぞ


彩梅(中学生):ん~いい風!

   うん!頑張るね


彩梅(中学生):明日受験なの...緊張してきた…

 

神様:明日受験なのだな...頑張るのじゃぞ


彩梅(中学生):あれ?梅の香り...

   ありがと。頑張るね!少し落ち着けた


彩梅(高校生):あのね、今日男子に告白されたの

   初めて告白されたからびっくりしちゃった


神様:男に告白されたとは...


彩梅(高校生):ドキドキしたけど、やっぱり断っちゃった…


神様:断ったのか?


彩梅(高校生):...好きな人いるし


神様:好きな人?ほほうどんな男なのじゃ


彩梅(高校生):あ、鐘の音…

   ふふっ、教えないよ。


神様:なんだ、せっかく力を貸してやろうとおもっておったのに…


彩梅(高校生):今はまだ...教えられないよ


神様:N)我に色々な話をしてくれた女子

   そんな女子の話を聞くのが楽しくていつからか女子が来るのを楽しみにしていた



彩梅:少し早く着いちゃったし、私もお願いしておこうかな…


彩梅:…あの人に会えますように… 


神様:M)ん?あの人とは…

   ここ最近姿を見せなかったことに関係あるのか?

   あの時、ここで泣いていた日から姿を見せなくなった

   その事と関係あるのか?


〈携帯着信音〉


彩梅:もしもし、…着いた?

   うん。じゃあ、今行くね


~彩梅神社の入口へ~


彩梅:来てくれてありがと


男:久しぶり、元気だった?


彩梅:うん。ごめんね頼み事しちゃって

   なかなか帰ってこれなかったから…


男:平気だよ。彩梅ちゃんのお願いなら

  

彩梅:ありがとう。

   

男:東京の生活にはなれた?


彩梅:うん…

   叔母さん達優しくしてくれるし、

   私立の大学にだって通わせてもらってる

   でも、また引っ越し...


男:そっか、せっかく慣れたのにな…


彩梅:しょうがないけどね…


男:しょうがないって、急に決まった事だろ?

  それに何で彩梅が…


彩梅:私だって、分からないよ

   ただ、親戚の中で丁度いい年齢の女の子ってだけで

   私が結婚相手に決まってしまうなんて…


(彩梅泣きそうになり男が肩を抱く)


男:そんなので彩梅ちゃんが犠牲になるなんて…


彩梅:本当は大学卒業したらこっちに戻ってきたかった...

   ここにはみんなもいるし、それに...


神様:M)ん?あの男は何だ…

   やけに親しげだな

   肩なんぞ抱いて…

   其方は、その男の事を..


神様:M)何だ、この感情は…

   二人を見ていると今まで感じたことがない感情が、

   どす黒く、何とも言えない感情がモヤモヤと我の心の中を侵食していく

   

神様:M)…これが嫉妬というものなのか?

   我は…我は、人間と同じ感情を知ったというのか?


神様:N)今まで感じたことのない感情に戸惑っていると

   落ち着いたのか彼女が泣きやみ、また何やら話し出した


男:それに?


彩梅:ここの神社…

   いつもここに来ると落ち着いたり、

   嫌なことも忘れさせてくれる気がするんだよね

   見守ってもらってるみたいな...


男:そっか…

  じゃあ、結婚なんか断って戻ってくればいいじゃん


彩梅:...叔母さん達の会社の取引先の方だけど、

   良い方みたい... 

   その会社の方とつながりを強くしたいらしくって、

   丁度結婚相手を探してたみたいで...


男:彩梅ちゃんの気持ち無視してもいいのかよ…


彩梅:叔母さん達は犠牲とは思ってないみたい

   むしろ、良い縁談だと思ってるみたい


男:でも、彩梅ちゃんは嫌なんだろ


彩梅:うん。

   全然知らない人だし、それに...好きな人いるし


男:好きな人…ねぇ

                

彩梅:ん?


男:ううん…何でもない


彩梅:でも、お父さんとお母さんが死んでから、

   叔母さんには高校から私立の大学までお世話になったし    

   でも、結婚するなら、最後に好きな人に会ってけじめ付けてから結婚したかったから


男:それがさ…


彩梅:それが?


男:彩梅ちゃんが言ってた人どこを探してもいないんだよな

  痕跡がないっていうか…ここの人とか、親戚とかでもなさそう


彩梅:そうなんだ…


男:こんな小さな町だからさ、すぐに見つかるかと思ったら、該当する人いないんだよね


彩梅:...もしかすると、やっぱり…


男:やっぱりって?


彩梅:なんとなくね、見つからなさそうって思ってた


男:え?


彩梅:あ、ごめん…でも実際に会っているし、

   多分その人だって思う人と何回か会ってる気がするんだよね…

   だから、この町の人なのかなって思ったり、

   この町の人ならちゃんと会って気持ち伝えたかったし

   でも...


男:でも?


彩梅:なんとなく、人ではないような…


男:え?


彩梅:ううん…何でもない!


男:そうなんだ。

  …ごめんな、力になれなくて


彩梅:ううん。こっちこそごめんね。

   ありがとう


男:いいって、気にするなって


彩梅:本当にありがとう

   あのね、これ...お礼

   本当はもう少しちゃんとお礼が出来ればいいんだけど


男:え?あっ…


彩梅:今日バレンタインだからチョコ…


男:いいの?俺が貰って


彩梅:うん。だって柊斗くんに…お礼


男:…お礼…か


彩梅:うん。ありがとうね


男:お礼でも、貰えるだけ良いか…

  

男:ありがとうな


彩梅:こちらこそ…


男:で?彩梅ちゃんはどうするの?

  まだ、その人の事探すの?


彩梅:うん。もう少しだけ

   ここで探してみる


男:ここで?


彩梅:そう。3年前の今日、ここで会ったんだよね

   だから…


神様:3年前の今日とは…

   確か…


~回想 3年前~


彩梅泣いている


彩梅:何で...何でよ…


彩梅:ずっと見守ってくれてるんじゃないの?

   助けてくれるんじゃなかったの?


神様:M)…どうしたのじゃ?


彩梅:お願いだから…助けてよ

   お父さんと、お母さん…返して…


神様:M)ん?何のことだ?


彩梅:何でおじいちゃんの時みたいに守ってくれなかったの?

なんでお父さんもお母さんも二人一緒に死ななきゃならなかったの?

何で…


神様:…両親共に亡くしたか…それは辛いな…

   すまぬ...我には何もしてあげられぬ…


彩梅:お願い…二人を返して...

   一人になっちゃった


彩梅:一人は嫌なの…助けて…


神様:すまぬ...我は其方に何もしてあげることは出来ぬ

   我には何の力もない…

   せめて…


彩梅:もう嫌…

   お父さん...お母さん…


神様:N)一人で大粒の涙を流し

   我に助けを求める彼女

   それはあまりにも危うく、儚く

   一人にしておくことはできなかった

   そして思わず人の姿になり話しかけていた


神様:そこの女子…何をしておる…


彩梅:…


神様:なぜこのような所で泣いておるのだ?


彩梅:…え?


神様:こんなところに女子が一人で泣いていては危ない…早く帰りなさい


彩梅:…私の事?


神様:そうだ、こんな場所には其方しかおらぬ


彩梅:…あなたは?誰?


神様:我か?我はここの神…神主なのじゃ


彩梅:…この神社に神主様なんていたの?


神様:ふっ...普段はここにはいないのだが、

   たまに様子を見に来ているのじゃ

   

彩梅:N)両親を急に亡くしてどうしたら良いのかわからず

   気づいたらこの神社に来ていた


彩梅:N)急に話しかけてきた神主と名乗る男性は

   話し方が独特で、普段聞きなれない言葉で話していた

   そしてなぜか懐かしく優しい雰囲気をしていた

   以前にも感じていた雰囲気に

   先ほどまで感じていた一人の寂しさと、絶望感は少し薄れていた

   

神様:それで、おぬしはなぜ泣いておる


彩梅:…不思議


神様:不思議?


彩梅:あ、ごめんなさい

   声に出ちゃってました?

 

彩梅:神主さんが、前から知っている人みたいな雰囲気で

   少し落ち着けたの


神様:そうか、少しは落ち着けたか…それは良かった

 

彩梅:それに神主さんの話し方...独特でふふっ

  

神様:独特...そんなに話し方変わっておるのか?


彩梅:なんか昔の人みたい


神様:昔の人か…あまり人と話さないからの

   

彩梅:神主さんって人とあまり話さないんだ


神様:我は、あまり人前には出ないからの


彩梅:そうなんですね


神様:それで、なぜ泣いてたのじゃ?

   

彩梅:N)この神社の神主と名乗る男性

   昔の人みたいな独特の話し方と、何でも優しく包み込んでくれるような雰囲気

   まるで以前から知っているような不思議な感覚…

   その人が近くにいるだけで安心して

   両親を一気に亡くした喪失感と孤独が消えていくような感じがした

   そして気付けばその人に両親が亡くなった事、一人になってしまった事など話していた


彩梅:(泣きながら)私も一緒に買い物に行けばよかった

   そうしたら一人にならないで良かったのに…


神様:そのような事を申すでない…


彩梅:でも、でも...一人は嫌なの…


神様:N)気付くと子供の様に泣いている彼女をそっと抱き寄せていた


彩梅:…


神様:N)抱きしめると女子もギュッと我を抱きしめ返していた

   このまま元には戻らず、ずっと人間の姿で傍に居てあげたい 

   されど我は悲しいことに、人間ではない…

   もしも人間ならば、女子の傍にずっといてあげることが出来るのに

   そう思っていた…


彩梅:ありがとうございます。

   神主さんにお話ししたら、少し楽になりました

   

神様:そうか、それならよかった


彩梅:あの、落ち着いたらまた会いに着ていいですか?


神様:…あぁ 

   我はあまりここにはおらぬのだが...


彩梅:それでもいいです。会いに来ます


神様:…わかった


彩梅:ありがとうございます。

   それではまた…


神様:N)その日を境に女子は姿を現さなくなった…


~回想終了~


男:…そっかそんな事があったんだね


彩梅:あの後すぐ、叔母さんの家に行くことになっちゃって

   ここから離れなきゃならなくなっちゃったんだよね。

   ずっと来たかったここにも来れなかった…


男:で、3年前と同じ日に来れば会えると思ったんだ


彩梅:うん。なんとなく


男:会えるといいね…


彩梅:うん。ありがとう


男:…あのさ、もし…会えなかったら…


彩梅:ん?何?


男:…いや…何でもない

  頑張れよな


彩梅:ありがとう


男:それじゃあ、俺行くわ

  何かあったら、また頼ってくれよな


彩梅:うん。今日は本当にありがとうね


男:チョコありがとな


彩梅:それくらいしかお礼できなくてごめんね


男:全然!彩梅ちゃんの手作りだろ?

  めちゃくちゃ嬉しい


彩梅:それならよかった


男:じゃあな。

  彩梅ちゃんもあまり遅くならないようにな


彩梅:…うん。ありがと

   またね


神様:M)何だ…頼みごとをしていただけか…

   あまり聞き取れなかったが、誰かを探すように頼んでいたのか…         

   我も手伝ってあげたいがどのような者なのか…

   

彩梅:あの人に会えますように…

   

神様:N)彼女はそうつぶやくと大事そうに抱えていた包に何やら願いを込め

  ゆっくりと頷くと、何かを決心したかのように深呼吸をし、

  社の方へゆっくりと歩いていった

  その姿は先程の男性と話してた時とはまた違う表情をしていて、

  凛々しく美しい表情をしていた


彩梅:…あれ?もしかして…

    

神様:N)そうつぶやくと見えるはずのない我の前で立ち止まり、

   我を見据えたように満面の笑みを浮かべた

   我に向けられているはずがないその笑顔は我の心にあった何かを解き放った


彩梅:また、あの人に会いたい…

   3年前の今日慰めてくれた人…

   いつも見守っていてくれているあの人に…


神様:M)3年前の今日…

   それは女子が泣いて

   我が人の姿になり女子に声をかけたあの日

   まさか、我を探しているというのか?

   もしそうならもう一度…


(間)


神様:そこの女子…


彩梅:…え?嘘…


神様:N)我に気付いた彼女

   最初は驚いた表情で今にも泣きそうになっていたが

   我と目があった瞬間に女子はにこっと満面な笑を見せた


彩梅:あの、3年前に此処で声を掛けて下さった方ですよね?   


神様:先程から誰かを探していたみたいだが、

   もしかしたら我の事を探しておったのか?


彩梅:はい。

   3年前慰めてもらったお礼がしたかったのと、

   この気持ち確かめたかったから…


神様:気持ちを確かめるとは


彩梅:3年前神主さんに慰めてもらってから...

   ううん。多分その前から

   私、ずっと貴方の事が好きでした。

   もしよかったらこれ受け取ってください。


神様:これを我に…


彩梅:今日バレンタインだからチョコ作ってきました

   お口に合うかわからないけど

   どうしても今日この前のお礼と、私の気持ちを伝えたかったんです

   もう会えなくなってしまうから


神様:会えなくなるとは?   


彩梅:結婚するんです

   それでここには戻ってこれなくなりそうで

   だから、最後に私の気持ち伝えたかったんです


神様:M)結婚してこの地を離れると…

   先程我の事が好きと言っていたのに…

   好きでもない輩と結婚するのか

   女子はそれで良いのか?

   

彩梅:おかしいですよね。

   結婚するのに告白だなんて…

   でもどうしても自分の気持ちにけじめを付けたかったんです

   会えなくなるその前に...


神様:M)もう会えなくなる…

   3年間会えないだけで寂しい思いをしておったのに

   それに、先ほどのあのモヤモヤした感情...

   女子の笑顔で確信したあの感情…

   気づくと我は女子の肩を抱きしめていた

   

神様:我も其方の事が好きじゃ


彩梅:えっ?


神様:其方の純粋さ、優しさ、幼き頃から知っている

   こうして抱きしめる事が出来るとは


彩梅:嬉しい…でも


(彩梅泣き出す)


神様:どうしたのじゃ?


彩梅:折角気持ちが通じ合ったのに

   離れなければならないから…


神様:離れる?


彩梅:結婚するから、ここにはもう戻ってこれない


神様:結婚しなければならぬのか?


彩梅:お世話になっている叔母さんの勧めで…

   

神様:其方はその結婚は望んでおるのか?


彩梅:…望んではいません。ただお世話になったから、少しでも恩返しができたらって


神様:望まぬ結婚…その若さでか?


彩梅:(頷く)


神様:そんなに泣いて…そんなに嫌な結婚相手なのか?


彩梅:違うんです。

   自分の気持ちへのけじめで会いに来たのに、

   会えてうれしかったのに…

   心が通じて嬉しかったのに…

   離れなければいけないと思うと…


神様:ならば望まぬ結婚などせずに、

   ここに残ればいここに残れば良い

   (抱きしめる)


彩梅:残りたい…


神様:そろそろ泣き止んでくれまいか?

  其方の悲しむ顔を見るのは辛い

  こうして心つながったのだからここに居れば良い


彩梅:一緒に居たいけど、結婚は決まっている事だから

   …でも


神様:そうか、ここに留まる事も出来ぬというのだな

   それでもなお、行きたくないと


彩梅:…


神様:もしも、そなたがすべてを捨てて我と共に居たいというのなら

   我も覚悟を決めなければ…


彩梅:覚悟?


神様:其方が我の正体を知っても同じ気持ちでいられるのなら…


彩梅:もしも、叔母さん達に迷惑が掛からなくて、

   ずっとあなたと一緒にいられるなら...


神様:そうか…

  ならば、我の真の姿をそなたに見せよう


(神様の姿を見せる)


彩梅:…


神様:やはり、人ではないこの姿怖いか?


彩梅:怖くなんかないです。少し驚いただけ 

   それに、なんとなくわかってた

   貴方が人ではないって事は…


神様:…知ってたと?

   我が神だということをか?


彩梅:神様だとは思わなかったのですが

   なんとなくそんな存在なのかなって思ってました


神様:我が人ではないと知っていて慕ってくれておったのか?

   我の事は見えていないと思っておったのだが

   其方には見えておったのか


彩梅:...見えてはいなかったのですが、見守ってくれているって優しい空気は感じていました


神様:見えなくとも慕ってくれていたとは...嬉しいな


彩梅:だからここに来るのが好きで

   だから、1年前に貴方が姿を見せてくれたときは嬉しかった


神様:そうか…///


彩梅:そしてこうしてまた会えて、心が通じた


神様:それで、そなたはどうしたい?

   我と一緒に居るか決めるのはそなた自身

   …我は其方と一緒に居たいと思っておるがな。


彩梅:えっ…


神様:もしも我の所に来るというなら

   人という事を捨てねばならぬ

   人であった其方の存在が消えるのだ

   其方を知っているすべての人

   友や親類全ての人の記憶から其方が消えることになる

   人としてのすべてを捨てて我のもとに来る覚悟があるか?


彩梅:…

  子供の頃からずっと貴方の事が好きでした

  貴方のその優しい空気に触れ安心したり、なぐさめてもらったり、勇気づけられたりもしました。

  もし可能ならずっと一緒に居たい

  たとえ私という存在がみんなから忘れられても

  貴方と一緒に居たい...離れたくない


神様:ならば我と共に…

(彼女を抱きしめ)

  我も其方を幼き頃から見守ってきた

 何時の頃からか、其方の話を聞くのが楽しみになり

 其方を好いていた…人間の其方を

 決して報われるとは思っていなかったが

 今こうして其方と心を通じ合え抱きしめていられる…


彩梅:私もこうしてあなたに抱きしめてもらえる日が来るとは思っていなかった

   こんなに幸せな日が来るなんて…


神様:我も其方と話せて、抱きしめられる日が来るとは思っても無かった

   其方が幼き頃から沢山の話を聞かせてくれて沢山の幸せを貰っていたが、

   これからは其方とずっと一緒に居られる…もっと幸せ日が訪れるのだろうな


神様:今まで其方が幸せをくれていたように我もこれから其方を幸せにする

  だから我と共に暮らそう


彩梅:はい。


神様:(もう一度抱きしめる)

   覚悟は良いか?


彩梅:はい。よろしくお願いします。


神様:わかった…

   よしこれに…

   (彼女からもらったバレンタインチョコに神力を込める)


神様:覚悟が出来たのなら

  其方がくれたこのチョコを食べるといい

  我の神力を込めたので食せば人ではなくなり

  神に近しい存在に変わる


彩梅:食べるだけでいいんですか?


神様:ああ、そのように神力を込めたからな


彩梅:…あの

   

神様:なんだ?やはり怖くなったか?


彩梅:違います。怖くなんかないです。


神様:ならば、どうしたのだ?


彩梅:神様は、チョコ食べてくれないのですか?


神様:ん?

  そうだな我も一緒に食べるか

  せっかく其方が我のために作ってくれたのだからな


彩梅:ありがとうございます。


神様:(チョコを食べ)

  美味しい…

  其方の愛情がたくさん詰まっておる

  我の為にありがとう


彩梅:良かった。

   …私も(チョコを食べる)


彩梅:N)チョコを食べると温かく優しい不思議な光が私を包み込み今までの記憶が走馬灯のように流れてきた。そして私の姿は人ではなくなっていた


彩梅:ううっ


神様:うん?どうした?

  おぉ、我と同じ神の姿になったな


彩梅:これが神の姿?

   不思議…


神様:急に変わって大丈夫か?


彩梅:大丈夫です。

   ただ、今までの姿ではないので不思議で…


神様:そうか


彩梅:でも、あなたと同じ姿になれて、あなたとずっと一緒に居られると思うと嬉しい   


神様:我も其方とこれからずっと一緒に暮らせると思うと幸せだ。

   (抱きしめる)

   すべてを捨てて我のもとに来てくれてありがとう


彩梅:一緒に居られるようにしてくれてありがとう


神様:そうだ彩梅

  神の姿になったということは分かるか?

  我がそなたの事を見守って来たように、

  これからは神として、2人でここに来た人を見守って行こう


彩梅:はい


神様:我の力尽きるまで其方と二人でいつまでも…


彩梅:あなたと一緒にずっと…


神様:愛している


二人抱き合い


~fin~


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