碧い溺愛は夢の続きで
遊野煌
第1話
私はふわふわのベッドの心地よさと僅かに鼻を掠めるバラの匂いに瞼を開けた。
「ひぇっ?!」
私はすぐに素っ頓狂な声を上げる。
何故なら周りを見渡せば豪華なアンティークの家具がならび、美しい螺旋模様が彫られている猫足のテーブルには色とりどりの花が生けてある。
(い、家じゃない……っ!?)
「ここどこっ?!」
私は転がり落ちるようにベッドから飛び出すと、窓から外を眺める。
「うわぁ……」
そこには野球場何個分かわからないくらいの庭園が広がっており、映画でしかみたことがないような噴水が目の前に見える。どうやらここがとても広い宮殿のような場所だと言うことがわかった。
(もしも……ここが宮殿だとしたら……)
考えを巡らせながら、ふいに私は自らの服装に視線をおとして目を見開いた。
「ええっ! こ、これナイトドレスとかいうやつ……」
私が来ていたのは着古したスウェットの上下ではなくレースがあしらわれた上品なナイトドレスだった。
(じゃあ間違いなく、ここは……?!)
私の脳裏に確信としてあることが過ぎったとき、扉からノックの音が聞こえてくる。
──コンコンコンッ
「マリー王太子妃殿下、ドレスの準備が整いました」
(やっぱり!!! いまマリーって言ったわよね?!)
「失礼しても宜しいでしょうか?」
「……えぇ。大丈夫よ」
「失礼いたします」
こちらに一礼しながら部屋にはいってきたのはまだ若いメイドで栗色の髪に緑色の瞳をしている。
(栗色に緑色の瞳、この人はきっと……)
私は先ほど私のことをマリー王太子妃と呼んだことからこのメイドの名前を推測する。
「よく眠れましたか?」
「ええ……レイザ、ぐっすり眠れたわ」
「それは良かったです。では早速着替えをお手伝いさせて頂きますね」
(名前あってた!!)
私はあまりの嬉しさにレイザを見ながら飛び跳ねると、思わずレイザに抱きついた。
「嬉しいっ! 本物のレイザに会えるなんて」
「はぁ。あの……王太子妃殿下? 本物というのは?」
「ううん、なんでもないっ。こうなったら早く着替えて会いに行かなきゃ」
私の言葉にレイザがふふっと笑う。
「そんなに急がなくとも大丈夫ですよ。庭園で本を読んで待っているからとライネル殿下からのご伝言です」
「きゃああああっ、ライネル殿下ってことは本当に私、妻なのね」
「えぇっと……ライネル殿下とマリー妃殿下がご結婚なされてまもなく三か月ですが……?」
「あ、そうね! このシチュエーション間違いないわ」
「あの……どこか具合でも?」
「全然っ! むしろ絶好調よ」
(だって、これで社畜生活の辛さも忘れてロマファンの世界を堪能できるんだから!!)
私はレイザにドレスを着せてもらうと、すぐに庭園に向かった。
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