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スマホの地図アプリには、もう何十というピンが刺さっている。

路地裏の石段、駅前の歩道橋、寂れたショッピングモールの階段……。


目星をつけた場所は、全部この足で見に行った。

見た目が“普通”でも、一応は全部降りてみた。

噂の真偽なんて、やってみなければ分からない。


でも、どれもただの階段だった。

それは当然のはずだが──どこか拍子抜けする気持ちもあった。


そんな調子で、月日が過ぎていった。


ある夜。

私は、見慣れた町の夢を見た。通り、店、電柱、看板……すべて知っている場所だ。

夢の中でも私は階段を探し、歩き回っていた。


起きてから、「変な夢だったな」と笑ってしまった。

夢の中でも探しているなんて、どれだけこの話に夢中なんだろうか。


でも──その日以降、私は毎晩のように、町の夢を見るようになった。

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