第6話、ようやく体育。………体育?
一応天狗ですので、ガキの中ではトップです
午後の授業――それは、陰陽術訓練という名の、もはや体育ではない何かだった。
「さーて諸君!」
神殿のような訓練場に、再び紅音先生の声が響く。
「適性検査も終わったことだし、今度は実践訓練だ! その力、どれだけ使えるか、見せてもらおうか!
ま、最初だから軽めのメニューだ。まずは属性を使った“術式の展開”からな
ただし、外したら爆発するぞ!死ぬぞ!」
「えっ!?」「最初って……」「軽めってなんだっけ……?」
空気がどんよりする中、俺は少し緊張しつつも前へ出た。
背中にヤツデのうちわを差し、息を整える。
「望月煌羽。お前は……風と闇、かつ“???”付きか。ふむ……」
紅音先生が少し興味深そうに俺を見ている。やめてくれ。そういう好奇の目が一番つらい。
「じゃ、まずは“風術”の初歩、《風刃陣》を展開してみろ」
俺はうちわを抜き、構える。柄の部分がしっかり手に馴染む。
――パタッ。
軽く一扇ぎ。
すると……。
「……ん?」「風圧、えぐくね?」「髪型が!オレの前髪があああ!」「ハゲ1名追加でーす。」
周囲の空気が巻き上がり、床に描かれた術式を中心に、風の刃が円を描いて旋回する。
それは教科書に載っていた“模範風術”より、明らかに密度が濃く、鋭かった。
「……おい、これ初見でここまで制御したのか?」「いや、術式展開早すぎるだろ……」
ざわつく声の中で、紅音先生だけが笑っている。
「ふむ、これは“風術適性:A+”ってとこだな。よし、次。闇術、いってみようか」
――これが問題だった。
「闇術はな……」
紅音先生が真顔になる。
「《破壊と変質》を基礎に、“存在の輪郭を歪める力”とも言われる。制御失敗したら……まあ、片腕くらいは覚悟しろ」
こわっ。
でも、やるしかない。姉上から食べ物貰いたいし。
俺は静かに手を上げ、術式を思い浮かべる。
(術名――《黒纏》)
影のような霊気が腕にまとわりつき、黒いエネルギーが生まれる。
「……出たな、黒纏」「でも制御できるのか?あれ、闇術の中でも危険等級だろ」
俺はうちわを構えたまま、霊気を静かに拡散させる。
「――式札、展開!」
手の平から黒く変質した“札”が生まれ、空中でパチンと破裂。
瞬間、目の前の訓練用ターゲットが、風に巻かれ、影に引き裂かれるように“消滅”した。
「……消えた!?」「跡形もなく……」「風+闇の融合術!?」
紅音先生が口元を押さえて笑った。
「うん、合格。……いや、合格以上だな。正直、教師陣でもここまでできるのは少ない」
俺はフラつきながらうちわをしまった。
まだ体が慣れてない。けど、はっきりわかった。
――この力は、俺の中で“呼吸のように”流れている。
これが、俺の術だ。
◇ ◆ ◇
訓練後、生徒たちの視線が変わっていた。
「……あいつ、ただの地味系じゃなかったんだな」「“風闇の黒札使い”……マジでやべぇやつかも」「こっち見んな。呪われる」
やめろ。見んな。ついでにイタいあだ名つけるな。
「じゃ、次は“二人組で模擬戦”だー!!武器と術、両方使えよー!!」
俺の苦難は、まだ始まったばかりだった――。
学園の訓練場。午前中の授業を終え、模擬戦の時間がやってきた。
生徒たちはざわつきながらも、緊張に満ちた視線を送り合っている。
「今日は模擬戦やりまーす! 戦いたくなくてもやってもらうからねー!」
紅音先生が無邪気に狂気の混じった笑いをしながら、名簿を片手に告げた。
「……望月煌羽と……日向夜一! お前ら、やれ!」
静寂。
生徒たちが一斉に二人を見る。
「おいマジかよ、日向夜一ってあの九位日向家の……」「“陽炎の貴公子”ってあだ名で呼ばれてる天才じゃん。転校初日で当たるとか詰んでるだろ……」
(俺もそう思うよ!)
煌羽は内心で叫びながら前に出る。足が震えるのをなんとか誤魔化す。
対する日向夜一は、涼やかな顔。品格と余裕がにじみ出ていた。
「君が……藤咲家の“養子”だって? ふうん……あの家も、ずいぶん変わったんだね」
挑発ではなく、ただの事実確認のように言われた言葉が、逆に胸に刺さる。
「……手加減は、しない」
「こっちだって遊びじゃないよ」
口ではそう言ってみたが、煌羽の喉はからからだった。
(落ち着け。俺は……俺は、闇と風の式術が使える。訓練だってした……けど、対人戦なんて初めてだ)
「始め!」
夜一が一歩踏み込む。
「《陽雷閃・双弾》!」
バシュッ!という乾いた音と共に、二条の光が雷と共に走る。
「うわっ……!」
間一髪、身体を横に倒して躱す。が、地面に手をついた瞬間、反射的に次の動作に入るべきなのに、頭が一瞬真っ白になる。
(やばい、次なにするんだっけ!? えっと、風障壁……!)
「《風障壁・応変陣》!」
が、術式が甘かった。
壁が不安定に波打ち、その隙間を光の弾が通り抜け、煌羽の肩をかすめた。
「ぐっ……!」
(こんな痛いのか!?)
右肩が熱い。たぶん火傷。だが、夜一はもう詠唱に入っている。
「《光穿・槍陣》」
(やばいやばいやばい!)
混乱の中、無意識に取り出した札が“闇”。
「……《黒纏》」
手の動きが雑で不恰好、呼吸も乱れている。しかし――
「《風影崩》!」
ヤツデのうちわで風を発し、そこに闇の札を叩きつける。風に混じった“黒”が渦を巻き、迫る光槍の術式の結界に絡む――
「……!? 術式が……崩れる……!?」
夜一が一歩退く。
煌羽はその隙に突っ込んだ。踏み込みが浅い。だが、焦りが加速させる。
「うおおおおおっ!!」
叫び声と共に、半ば無理矢理に式札を地面へ叩きつける。
「《影纏・籠裂》!」
地面の影がねじれ、夜一の足元を絡めとる。
「!? しまったっ――」
瞬間、闇の刃が影から這い出て夜一の膝に達した。
「っ……!」
ズバッ――
血が滲む音と共に、夜一の足が崩れ落ちる。
「勝負、あり!」
紅音先生の声が響き、場が静まり返る。
煌羽は肩で息をしながら、気づく。手が震えていた。うちわの持ち手も、術札も、今にも落としそうだ。
(勝った……? ……え、マジで俺が勝ったの……?)
ざわつく生徒たちの中で、夜一は立ち上がる。
「……負けたとはいえ、君の使った技――危険すぎる」
「我が日向家は、陰陽師としての品格と伝統を重んじる。闇術など、邪道の極み……それに敗北したこと、家が黙っていると思うなよ」
煌羽は思わず言葉を失った。
「ちょ、待って。それって、授業の模擬戦で正式に敵対宣言!?
いや、おかしいでしょ日向家……!」
夜一は冷たい目で告げる。
「君のような“何者か分からぬ存在”を家系に入れる藤咲家も含めて、我が家は“敵”とみなす。――いずれ、粛清される覚悟でいろ」
――こうして、「ただの模擬戦」で勝っただけの煌羽は、陰陽師界・上位九位の日向家に目をつけられ、明確に敵視されることとなった。
(本人の意思とは無関係に)
姉上殿「何してくれてんの、君?」
きらう「申し訳ございませぬ姉上殿!」
小説の設定が思いつかない、上手く書けない、名前考えるのが面倒、流れが思いつかない等など、書いてる人なら1つくらいありますよね?そんな時はAIを活用しましょう。文を書いてもらう場合は1、2話読み込ませてから作りましょう因みに清書してもらうと少し良くなります。
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