純文学の精髄が息づく作品

短くとも、静かに心をさらわれるような作品でした。

教室に響くのは芥川龍之介の『羅生門』の朗読。しかし主人公は、物語の声に耳を貸すことなく、窓の外にいる憧れの彼にすべての意識を奪われてゆきます。

それだけの話です。事件らしい事件は起こらず、波乱もない。それでも、主人公の胸のざわめきにそっと自分の感情を重ねた読者は、きっと私だけではないはずでしょう。

面白かったです。