短くとも、静かに心をさらわれるような作品でした。教室に響くのは芥川龍之介の『羅生門』の朗読。しかし主人公は、物語の声に耳を貸すことなく、窓の外にいる憧れの彼にすべての意識を奪われてゆきます。それだけの話です。事件らしい事件は起こらず、波乱もない。それでも、主人公の胸のざわめきにそっと自分の感情を重ねた読者は、きっと私だけではないはずでしょう。面白かったです。
少女の青春の一ページを切り取った様な作品。重苦しい作品の【羅生門】をBGM代わりにしながらも、そんなの関係無い様に男の子に夢中になる年頃の少女が描かれており、読み手は甘酸っぱい恋の予感を感じずにはいられない。どの年代にも刺さる作品だと思う。
タイトルがお洒落で、青春のほんの一瞬の酸っぱさとか切なさとか、そういう気持ちをギュッと詰め込んだような音に惚れ惚れとしてしまいました。初恋の人を盗み見るBGM(授業)がどこか彼女の気持ちとリンクしているようで、とてもいいです。五月のさわやかで、まだ期待に満ちた季節に似合う物語だと思います。是非、読んでください!
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