詩「新しい言葉」
Nowaki Arihara(有原野分)
新しい言葉
遠方に見える船の上から
知らない男が手を振っている
その振っている手に冷たいものが触れた
雪が透けて
その冷たさから逃げるように
船の上から手を振っている
自分がいた
俺だった
祖母のいない床下から
言葉を探し続けているのは
透明な壁一枚隔てて
洞窟のような
奥の見えない世界に
吸い込まれていく棺桶
ボタンを押した手は震えていただろうか
空気に
反射して
空中に揺れる顔
生まれてきた言葉は
流されて
ここで燃やされる
春になるまで
雪が止んだ
明日こそ船は出るだろうか
雲に覆われた空
切り抜いたような煙突から
新しい言葉が昇っていく
詩「新しい言葉」 Nowaki Arihara(有原野分) @yujiarihara
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