第15話「応援のことばは誰のため?」

「……ごめん、やっぱ今日しゃべれない」


その一言だけを残して、凛は足早に教室を出ていった。


放課後。

大会帰りの凛は、いつもの笑顔をすっかり忘れていた。

晶は声をかけようとしたけど――何も言えなかった。


応援、したかった。

でも、「がんばったね」とか、「ドンマイ」とか、口に出すと全部うすっぺらく思えた。


“今の凛”に、どんな言葉が届くんだろう?


晶はベンチに腰を下ろし、スマホを取り出した。


「AICO、オレ……応援って、苦手だわ」


「応援は、想像力の語彙です。

相手の気持ちの位置まで、ことばを連れていくためにあります。」


「では、応援語彙の“三段構成”を紹介しましょう。」


AICOが画面に構成図を表示した。


【応援語彙の三段構成】


① 共感(気持ちに寄りそう)

② 言葉(伝えるメッセージ)

③ 希望(未来を少し照らす)


「“いきなり励ます”のじゃなくて、

まず“気持ちに近づく”ところから始めるんです」


晶は、自分の中のもどかしさに頷いた。


「“がんばって”が空回りするのは、

①の共感が足りないまま②③に進んでしまうからです。」


その夜、晶はノートを開き、言葉を探した。

凛の悔しそうな顔、握りしめたペン、少しだけ震えていた声――

そこから書いた文章は、自然に三段構成になっていた。


「今日は、きっといろんなことがあって疲れたよね。

ひとつひとつの努力、ちゃんと見てた。

まだ言葉にならない気持ちもあるかもしれないけど、

少しでも前に進んでる自分に気づいてほしいと思った。」


翌日。

晶は、そのままの言葉をLINEで送った。


返事はすぐには来なかった。

でも、夜になって、ぽつりと短い返信が届いた。


「読んだ。ちょっと泣きそうだった。ありがとう。」


それだけで、晶の胸に静かな光が差し込んだ。


🔜次回:🌱語彙の芽〈第15話編〉

「がんばれ」って、ほんとうに届いてる?

共感→ことば→希望へ――応援語彙の“流れ”と“リズム”を丁寧に解説!

あなたのことばも、誰かの背中をそっと押せる力に。


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