第26話 紬の決意

夜の静かな部屋で、紬はそっと目を閉じ、深く息をついた。


魔法医師会の会長になれば、きっとみんなを救うことができる——そんな思いが頭をよぎる。

でも、本当にそれが答えなのだろうか。


「私は医者でも、魔法使いでもない。ただの、本が好きなだけの女の子だ……」


救いたいという気持ちは強くある。だけど、私が手にできるのは、本から得られる限られた知識と、簡単な応急処置だけ。

魔法医師会の医師たちのように、強力な魔法で病を癒すことはできない。


その現実を思うと、胸の奥がぎゅっと締めつけられるような苦しさが込み上げてきた。


「それでも……何かできるのかな?」


紬は自分の手のひらに視線を落とす。

ページをめくるだけの、なんの変哲もない手。

だけど、この手で、もし少しでも誰かの役に立てるのなら——それでいいのかもしれない。


確かに、救えない人もいる。無力感に押しつぶされそうになることも、何度もあった。

でも、その現実とどう向き合うかは、誰かに決められるものじゃない。


紬はゆっくりと目を開けて、静かに決意を胸に刻み込んだ。

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