第2話

春の訪れで暖かくなってきたある日。


生徒会室の中も柔らかい陽射しで満ちていて、どうしても眠くなってしまう。


そんな穏やかな空気の中。




「僕ジュース買ってこようかなー」




ぐっと腕を伸ばして、ふわふわした口調で優斗が言った。


どうやら彼も眠いらしく、欠伸を漏らしたせいで目尻に涙が溜まっている。




「みんなの分も買ってこようかー?」




こてん、と首を傾げた拍子にちょんまげが揺れる。


みんなが口々に欲しい飲み物を優斗に注文する中。




「そういえば、」




ぽつり、口を開いたのは奏。


何かを考えるように、ふっと目を細めて。




「前に嬢と陽平がジュース買いに行ったことあったろ~?」



「ああ、そんなことあったわね」




後から優斗が追い掛けてきたアレだ。


確かあの時は…。




「ヨウ君だけ変なルートで帰ってきたヤツでしょー?」




そう、私と優斗が全力疾走したにも関わらず、生徒会室の扉を開いたらすでに陽平が到着していた。


あれはもう本当に意味が分からなかった。


汗ひとつかいていない陽平を見て、私も優斗も若干引いた。




「それがどうかしたの?」




私の質問に、奏は困ったように笑う。


その表情でさえ完璧に色っぽい。




「いや~。今更だけど陽平の使った裏ルートがどこにあるのかと思っただけ~」




…確かに。


普通に考えたらおかしいことなのに、『陽平だから』という謎の理由で納得してしまっていた。


冷静に考えたらやっぱりおかしい。

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