【第6話】匿名ヴィラン参上!!【#2】
……しかしどうするかなあ。
「人質を解放しなさい!」
「それは無理な相談だね。あ、ちなみに実力行使はやめた方がいいよ?僕
「…貴方の目的は何かしら?」
「さぁ?君の問に答えられる回答は持ち合わせていないよ」
ヒーローが釣れたのは嬉しい。今のところ順調である。だが問題なのは──
「(んー、この子誰だっけ?)」
知らないヒーローが来てしまったことだろうか。
僕は別にヒーローについては詳しくない。ヒーロー協会と関係があるのは確かだけれどヒーローと関わったことがそもそもないんだよね。
それに…この子弱そーだし。当初の目的であったA級であるはずがないのだ。
「ねぇ、君誰?」
「は?」
「どこの子?等級は?ヒーロー歴は?僕が知る限りだと君のようなヒーロー見たことないんだけど、新人?なら帰ったら?ぶっちゃけ君程度がここに来たって、なんの成果も得られないけどいいの?成績に関わんない?僕は心配だよ、君みたいな実力を伴ってないヒーローがいると早死ちゃうじゃんね。協会は何をやってるの?新人は先輩の背中追って強くならなきゃいけないんじゃないのかい?」
「さっぱり何を言っているのか理解できないけれど、私のことを馬鹿にしていることだけは分かったわ」
彼女の反応で得られる情報はなし、と。コメントは…
<なんだ今の爆発!?>
<あ、晴れた…>
<ん?>
<あ、>
<おいおいあれって…>
<マジか!>
<ルミナスじゃね?>
<ヒーローキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!>
<ルミナスちゃんダーー!!>
<ヴィラン殺せーーー!!>
<腐れ外道をぶっ飛ばせ!!>
<おー、ヒーロー釣れたか>
<ヒーローktkr>
<目的達成で草w>
<おめでとー>
<↑お前らヤバすぎ>
<うおお!>
<A級☆天才☆美少女☆新人☆ヒーロー☆ルミナス>
<今日も華麗にヴィランをボコして!!>
<盛り上がってきた!>
<ヒーロー頑張れぇ!>
<また同接一気に増えたな>
<ヒーローの登場はあついよね>
…ん?んんん?あれ?見間違い?いや、え、──
「──A級だったの君?!凄く弱そうだし隙だらけなのにA級?!…なんていうか、最近の協会ずいぶん強さの基準が落ちたんだね…。社畜くん何してんだ」
「私が弱そうですって?」
うん。凄く弱そう。なんだったら半ば弱体化してる今の僕でも勝てちゃうくらいには弱そうである。この子がA級なら万年B級の鏡さんはどうなん?実力伴って無さすぎだろ。ヒーロー協会見る目ねー。
「だって実際問題そうだろうに君、異能で強くなったと誤認してる口だろ?はぁ、全くそういうの困るんだよね。力に溺れて最強とか思ってる奴ー。勘違いも甚だしい。君みたいなヒーローのことなんていうか知ってる?、自認な〇う系主人公って言うんだよ?wいや、さすがにそれはス〇ホ太郎に失礼だねゴメン☆」
「っ、っ、っ!」
<煽り性能イカれてて草w>
<誰でも怒るわそんなん>
<ちゃんとヴィランしてんなイッチw>
<おいところどころいつものイッチに戻ってんぞww>
<↑つまり元からイッチはヴィランだったのかw>
<なんかスカッとしたの俺だけ?>
<↑お前だけ>
「あぁ、ごめんね、怒っちゃった?いやあ本当にごめん!ヒーローって意外と沸点低いってこと忘れてた!」
「…なにが言いたいっていうのよ」
「んん?あぁ、つまりね、僕は君みたいなヒーローのことを『無自覚で環境破壊し承認欲求を満たすため正義の味方面した害悪』だと思ってるってはなし──っと、おっと」
「ッチ!」
手出してきやがった!きやがった!きやがったwwww
「動くな」
「!?」
僕は彼女の背後に周り銃口を突きつける。
「こんなんがA級ヒーロー?正義の執行者?笑わせるなよ。人質そっちのけで感情任せに襲い掛かるなんて、A級以前にヒーロー失格だ」
「お前に!ヒーローの!何が!分かるっていうのよ!」
「ヴィランだからこそ、ヒーローと対峙するヴィランだからこそヒーローの全貌が見えてくる。特に…
さて、そろそろ茶番はいいだろうか。
「……ヒーローさん、こんなことをしている暇はないだろう?ほら、人質を助けないとww」
<こらww>
いやごめんて、本性でちまうんだよどうしてもww
僕は拳銃を取り下げ、ヒーローにそう促した。
「……そうね、その通りだわ。落ち着きなさい私っ」
そういえば、海の上のこの場所に彼女は飛んできたのだろうか?なら彼女は空を飛ぶとかそういう系の能力者?……いや違うな、彼女を周りをよーく観察すると重力がおかしいことに気がついた。彼女は重力操作系の能力者だな多分。あと、実力に反して彼女の等級の感じ他にも何かありそうだ。それに…彼女が重力操作系能力者だと仮定して、彼女は乗客を載せた船の重力を操作できるのか?
「(──っ…!)」
あ、そこは問題ない?
「あれ────」
隣で声が聞こえた。振り返ると…何してんだこいつ、手を前に突き出しては固まって…。あ、もしかして能力を使った?
「なんで………」
隣の彼女は力尽きたように膝から崩れ落ちへたりこんでしまった。やっべぇ、やっべぇ、なんか勝手に何かやったと思ったら勝手に何か絶望してるみたいだぞ…。
<!!>
<ルミナスちゃん?>
<は?>
<どうしたの?>
<ルミナス?!>
<え?やられた?w>
<でもイッチ何もしてなくね?>
<大丈夫!?>
<ルミナス、ヴィランに何をされたんだ!>
<おいおい女の子に手を出すとか終わってんなヴィラン>
「え?!いやいや知りませんよ、まさかレスバで力尽きたなんてことはあるまいし…。そもそも僕攻撃すらしてませんし、異能だって『瞬間移動』なので攻撃能力皆無なんですが?──えっと、ヒーローさん?」
「ルミナスよ」
「え、あ、ルミナスさん。どうしたんです?」
「…見ての通りよ」
「見て分からないから聞いてんですよこちとら」
<えっとどういう状況?>
<↑ヒーローとヴィランが会話してるな>
<いやそうなんだけどおかしない?>
<おいイッチ口調w>
<なんで普通に会話できるん?>
<さあ?>
<ルミナスちゃん大丈夫?>
「どうして船に私の異能が通用しないのかしら?」
「不思議なパワーだよ、多分ね」
「殺すわよ?」
<ちょ、こっちも口調終わっとるw>
<明らかに誤魔化してるな>
<キモ>
<でもイッチガチで知らなさそうではあるんだよな>
<死ね>
<誹謗中傷コメ止まんねぇw>
<そら(ヴィランが配信なんてしたら)そうよ>
「いや僕に聞かれても困るんだよね、分かんないもんは分かんないんだから」
「なにそれ…」
「まぁまぁ、そんなことより。人質たちのゲームを僕と一緒に見ようではないですか」
「っ、私はっ」
「見たくないなら結構ですけれども。もしかしたら僕がポロッとゲームに関するヒントを口走るかも知れないですよ?」
「本当に貴方何がしたいのよ…」
「さぁ、ね。というか僕の名前、イッチっていうんです」
「そう、心底どうでもいいわ」
とりあえず一段落ついたところで僕は人質の様子を映すモニターの鑑賞を再開した。
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