第33話 鮫の力にご用心

両足に魔力を込めてその場からサイドに飛び移る銀之助。

シャツの肩部分を掠ってしまったが直撃は免れた。

ディブロスは少し目を細め、大技を容赦なく連発で放つ。


「アクアスピアッッッッ!!!!!」


上空に放たれた水の塊が爆発。

飛び散った水が槍の姿に変貌し、次々と銀之助に狙いを定めて襲いかかる。


(避けるだけじゃ無理や…!!!)


極力回避しつつ、拳を振るい槍のサイドを殴りつけ破壊していく。

時たまその水を利用し、ディブロス目掛け水の弾丸を発射。

しかし距離的にも威力的にも乏しく、ディブロスにポツポツと当たるのみ。

わざわざ避けたり技で返す必要性は皆無である。


「俺の水芸を利用する点を考えりゃ…ちと頭がキレるみてぇだが下手くそだな。」


シュババッと印を組むディブロス。


「水芸がなっちゃいねぇぜ…?教えてやる。こうするんだぜッッッッ!!!ウォーターツイストッッッッ!!!」


手のひらを前に突き出し、これまたデカい棒状の回転する水を発射。当然技のスピードはとてつもない。


「うせやろッッッッ!!!?」


サイドからは水の槍が迫っているのでその場でジャンプ。

ウォーターツイストは銀之助の股ぐらスレスレを通り、リングを覆う魔法壁に直撃。

水と霧が飛び散り大きくクラックが入る。


「新幹線かよッッッッ!!!あんなもんぶち当たったら死ぬやろがッッッッ!!!痛ッッッッ!!!」


気を取られていた。

アクアスピアが銀之助の左脇腹を少し抉り、背中も同時に裂かれた。

なんとか踏ん張りリングで受け身を取り不時着は免れた。

背中からはドクドクと流血。


「なんちゅう技のオンパレードじゃい!!!」


「アイツ、銀之助を翻弄してやがる!!!技のキレも相当だぜ!!!」


焦るヨーベイガーとパルム。

しかしMr.C.Bだけは顎に指を当て何か思う様子。


「なんだよC.B!」


「いや…、確かにディブロスさんの技はどれも素晴らしいものですが…何か、何か引っかかるんです。」


「引っかかるて…技に引っかかってんのは銀ちゃんやで。」


「あぁ、いやまぁそうなんですが…。うん………。」


「んだよ煮えきらねぇな。」


「はい…、しかしこの程度でやられる銀之助さんでは無いことは確かです。試合の運びを見届けましょう。」


グッ、とガッツポーズを取るC.B。

3人は銀之助にエールを送る。


「オラオラオラオラッッッッ!!!もっと行くぜ地球人ッッッッ!!!アクアスピアァァァァッッッッ!!!」


先程は片手で水の塊を作っていたが今度は両手でより大きい塊を飛ばす。

塊は弾け飛び、槍の雨が降り注ぐ。


(クッソ………!!!このままやったら近づく事も出来ん…!!!出来ればまだやりたくなかったけど…!!!)


避け続ける銀之助だがそれも限界がある。

ふくらはぎに槍が掠り、膝を着いたその瞬間。

ディブロスはここぞとばかりにウォーターツイストを放った。

魔力をより込めたのか、スピードも威力も桁違いである。


ズオアッッッッッ!!!


「マズイッッッ!!!銀之助避けろッッッ!!!」


「銀之助さんッッッ!!!」


ウォーターツイストは銀之助の目と鼻の先にまで迫る。


「ジ・エンドだぜ…!!!地球人!!!」


ズドオオオオオオォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


直撃。

銀之助はKO…と思いきや、なんとウォーターツイストが逆流。

ディブロスは対応出来ずに自分の技をモロに食らい吹き飛んだ。


「いっっっっっでええぇぇぇッッッッッッッッッ!!!!!な、なにしやがったッッッ!!!」


空中で身体を回転させ爪をリングに食い込ませ急ブレーキをかけるディブロス。

リングに大きく轍を残し、ラインスレスレで勢いを殺した。

銀之助を見て目を大きく見開くディブロス。

銀之助は両手を前に出し、手のひらからは煙が出ていた。


「お前ぇ……………まさか……、【反転】させたのか…。」


「御名答………正解した景品に大阪の観光案内でもしたろか?」


そう、銀之助がやったのは【魔法反転魔法】。

ディブロスのウォーターツイストは正面に向かい真っ直ぐ飛ばす水系魔法である。

つまりは動きの方向を反転させる魔法なのだ。

限界はあるだろうが、ある程度であれば相手にそのまんま返しが出来る攻撃と防御を兼ね備えた技である。これもまたグラーケンの元で取得した技。

しかし弱点もある。動きの方向が一定しない魔法には通用しない。

なので縦横無尽に飛び散るアクアスピアには使えなかったのだ。

それにこの場で技を披露したくなかったのは理由がある。次の対戦相手のために控えていたのだ。

何を隠そう次の相手はあのバルカンである。

しかし技を温存するなんてことは言ってられないので、仕方がないであろう。


「…………ケケケケッッ…。コイツはおもしれぇ…。反転魔法なんざ使えるやつそうそう居ねぇ。しかも使い手が地球人ときた…。」


少し赤色に腫れ上がった分厚い胸板と腹。

ディブロスは徐に身体を起こす。


「あ?」


銀之助が何かしている。

ディブロスが放った崩れたアクアスピアの水を手に集めて形作っている。

術者のコントロールが無くなった技はただの物質。

銀之助はそれをデカい手裏剣の形に整え、ディブロス目掛けぶん投げた。


「水手裏剣ッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


空を切りつつ回転する水手裏剣。

スピードはウォーターツイストほどではないが着実にディブロスに狙いを定めている。


「俺の水を利用するか…。さっきからよぉ………ちょこちょこ逆撫でするかのように…。」


握りこぶしや顔、体に血管が浮かぶ。

キレている。


「喧嘩売ってんのかよッッッッッッッッ!!!俺に水芸で勝負するたぁなぁッッッッ!!!水芸は俺が一番なんだッッッッ!!!俺の水芸が一番この世で美しいんだよボケがぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


怒りのままアームハンマーで水手裏剣を破壊。

そしてその瞬間であった。


バチチ…………


「んぁっ???」


ズガァァァァァァッッッッ!!!!!!


「ガァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーー!!!!!!」


ディブロスは感電したかのように電気柱に襲われた。

威力で中に浮かび、電気を浴びる。

時間にして10秒。

電気が散り散りになり、ディブロスは少し焦げそのばに倒れた。

ダウンカウントが始まる。


ウオオオオオオォォォォッッッッ!!!!!!


スリー!!!フォー!!!


「やった!!!やりやがったぜ銀之助!!!」


「やったけど…、アレで倒れるようには思われへん…!!!」


「しかし何にせよダメージは確実に与えてます!!!」


セブンー!!!


「……………………。」 


バッッッッッッッ!!!


ディブロスは目に光が再度宿り、起き上がった。

湧き上がる観客。


「やろうな。アレじゃ勝たれへんやろうと思ってたからよ…。」


「テメェ…な、なにしやがった…………。な…なんでいきなり電撃が……………。」


「ダチのクエスチョナーってやつに聞いたことあってな…。そのクエスチョナーってやつが前に帯電させた後に放電させる魔法を使うやつと戦ったってよ…。マネしたんや…。」


「帯電だぁ…………?んなもん、いつ……………はっ!!!!!!!」


銀之助がアクアスピアに襲われた時である。

時たま槍をぶっ壊し、その水をディブロスに飛ばし当てていた。

あれはダメージを与えるためでなく、少し雷属性の魔力を込めて放っていた。

そしてディブロスの性格を考えれば、水魔法を水魔法で返すのは完全に舐めている行為。

神経を逆撫でさせる目的でもあった。

なのでディブロスは水手裏剣を素手で壊すだろうとも予測していた。


「……………なんで俺が素手でお前の水手裏剣を壊すって分かった…。」


「プライド高いやろうなて思ってたんや。初手から大技連発で飛ばすやつなんかおらんわい。初手躱されたら普通徒手に持ち込むやろ。」


「……………………。」


「最初こそ客盛り上がらせるためのパフォーマンスかと思った…。でも違うなって…。お前、客にも俺にも技見せてたのは【承認欲求】からくるもんやろ。」


「……………………ケケケッ…。」


印を組むディブロス。

手のひらを銀之助に突き出し、魔法を放つ。

しかし、水は最初こそ形作られたがドロォっと崩れリングに落ちた。


「なっ!!!!!」


「せやから大技出し過ぎや。お前減ってるやろ。魔力やない…………。魔力は自然に回復していくからな…………。でも唯一、ある事せんと回復せんもんがある。」


人差し指を立てる銀之助。


「【カロリー】消費とんでもないやろ。」




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