第22話 The・筋肉祭り!

両腕から大量に出血しているマンナを担架で運ぶ医療スタッフたち。

それに対しディアはそそくさとリングを後にしていた。

サーシャたちが心配しマンナの元に走るもスタッフたちがメディカルポッドに入れたら治ると事を急いでいた。

マンナは息がかなり小さく、顔色も通常の綺麗な肌色から青紫に近い色になっている。

サーシャたちはどうする事も出来ないので医療室に見送るほかない。


「マンナちゃん…大丈夫ズラか…。」


「大丈夫。使われてるメディカルポッドは最新技術の医療機械だから。」


「…………それにしても両腕欠損させるのはやり過ぎやろ…。何考えとんねんアイツ…。生半可な人間やったら死んどるで…。」


「ディアって人も死なないのを見越してやったんじゃないかな。その辺の【スペースファイター】じゃないって思ったんじゃない?」


「スペースファイター?」


サーシャ、ルーヴァ、アスカの3人の会話。

アスカが言うには宇宙の戦士たち、それを英語にしたものをスペースファイターと言うらしい。

このトーナメントに参加している選手だからというのもあるが、スペースファイター自体は大昔から言われている呼び名だとか。

地球は田舎の比較的平和な惑星だからかあまりその名前は浸透していない。

宇宙貿易が始まらなければ永遠にその名前も知れ渡る事は無かっただろう。


「だからマンナちゃんは大丈夫。心配しなくても良いよ。」


「せやな…。」


サーシャはマンナならば大丈夫と強く思うことはできたがやはり気になるのはあのディアという少女の心の冷たさ。

見た目と魔法からして氷遁を扱うことに長けているのだろうが心も氷のように冷たかった。

あの冷たさは他者には理解しがたい何かを抱えている。おそらく壮絶な人生を歩んできたのだろう。

後々戦う事になるかもしれない。

そんな事を思いつつ、最後のブロックの戦いを見届けるのであった。


[第1試合最後のブロック!!!青コーナー!!!最初は小さな団体であったが今では人気を誇る宇宙サーカス団!!!キャラメルサーカス団団長Mr.C.Bを支える可愛いピエロ!!!惑星キタルファからやってきた身長160cm!体重55kg!魔力45万パワー!バネ星人のーーー!!!キャラメール・アプリコットオオオォォォォッッッ!!!]


ウオオオオオオオォォォォッッッッッッ!!!


「可愛いよー!!!アプリコットちゃーん!!!」


「素敵ー!!!」


「巨乳ピエロー!!!」


「はーい!!!皆さんいつでもサーカス見に来てくださいねー!!!キャラメルサーカス団はチャリティーで無料ですのでー!!!」


笑顔で手を振るアプリコット。

サーシャも聞いたことだけはあるらしい。

キャラメルサーカス団。各惑星などに赴きチャリティーで年齢問わずサーカスを披露する優しい団体。

何故こんなボランティアをする事になったかと言うと団長のMr.C.Bが貧しい人達でも楽しんでもらえるように作ったと言う。

宇宙にも心がしっかりした人間も居るのだ。


[続きましてー!!!詳細ほぼ不明!!!身長167cm!!!体重49kg!!!魔力200万パワー!!!ぴょんぴょん跳ね回るそのウサギガールは伊達じゃない!!!ボーロオオオォォォォッッッッッッッッッ!!!!!!]


ウオオオオォォォォッッッッッッ!!!


「ケモノ良いよー!!!ケモノ可愛いよー!!!」


「最推し来たぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!」


「Fカップウサギ良いよおおぉ!!!!!」


腕をストレッチしながら歩くボーロ。

可愛いケモノっ娘であり、時折観客に対して手を振っている。


「アスカちゃんいけるか?大丈夫?」


「死にそう。」


「大丈夫だよ。乳が全てじゃねぇだ。」


「巨乳に言われても悲しくなるだけだよー!!!うわーん!!!」


まぁまぁと泣きわめくアスカをなだめながら試合を最後まで見届けた。

形としてはボーロの勝利。

アプリコットは体がバネになっているので腕や足などを使い変則的な戦いを披露。ボーロは自慢の足で華麗な跳躍を見せつけ芸術的な動きを見せた。

戦闘経験が少なかったのかアプリコットは次第に疲れ、ボーロが勝利を飾った。

最後まで宣伝を欠かさなかったアプリコットはあまり戦闘タイプのスペースファイターではなかったのかもしれない。

こうして第1試合は幕を閉じた。


「なんとか勝ち上がったねぇ。ま、私に勝ったんだからこんなとこで負けてもらったら困るけど。」


「男の試合も中々激しい戦いだっけど、女の戦いはなんか…こう…怖いものがあるゲロね…。」


「昔から女は怖いものだぞケロンバ。ファニィ様だって怖いだろ。」


ファニィに耳を引っ張られおがり倒されるゴードン。ゴードンは目が✕になりされるがまま。

3人は時折休憩しつつ弁当やらお菓子、飲み物を売っていた。

男の試合と女の試合は同時並行で行われている。

ここで少し時間を巻き戻し、男性の部を見てみよう。

こちらはこちらで激しいバトルが繰り広げられていた。

熱い筋肉男たちの試合。

どうか最後までお付き合い願いたい。






第1試合のAブロック。

初戦は本作主人公・町田銀之助。

宇宙トーナメントの本戦に出場した時点で多少の賞金は出るので銀之助は正直ここで辞退したかった。

しかしそんな事をすればサーシャに何を言われるかたまったものではない。

それに女の部でも第1試合はサーシャが出る。

戦いが好きではない銀之助からしたらおっかないし逃げ出したくなるような状況ではあるがカフェの事もある。パルムやサーシャに給料を払うことすらままならない。

いい加減根性を入れるために頬を叩きキツケ。

ストレッチをしつつ息を整える。


「銀ちゃん大丈夫け…?」


「大丈夫や、心配すんなパルム。任せとけ。それに後々パルムも戦い控えとるんやからゆっくりしとくんやぞ。」


心配し合う2人。

銀之助はそう言うも緊張で汗は流れる上に心臓の拍動はかなり高い。

それもそうだろう。

今から見知らぬ異星人たちと殴り合うわけなのだから。


「わかってる。銀ちゃんは強いからよ。それにサっちゃんも頑張ってるわけやし、俺もビビるわけにゃいかん。」


「おうよ!その意気よ!ほな、行ってくるわ!!!」


男前な顔でサムズアップし、足取り勇ましくリングまでの道を歩む。

と、言いたいがガチガチな千鳥足は言うことを効かずド派手にズッコケた。

頭を抱えるパルム。

本当に大丈夫なのだろうか。

鼻をさすり泣きながらリングへと向かった。


ダーーーーン!!!ダダーーーーン!!!


バカでかい音楽が鳴り響き、観客の声援も交えドームは大きく熱気に包まれる。

銀之助は白目を向き真っ白に。

そんな男を他所にリングアナが叫ぶ。


[お待たせ致しましたッッッ!!!ただいまより!!!第200369回宇宙トーナメント第1試合をおこないますッッッ!!!]


ウオオォォォォォォッッッッッッ!!!


「よッッッ!!!待ってました!!!」


「早くやってくれー!!!」


「バルカン様ぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!」


[まずはAブロック!!!赤コーナー!!!生まれも育ちもこの緑覆う美しき水の惑星地球出身!!!身長170cm!体重70kg!魔力1500パワー!大阪府堺市のとある場所で異星人問わず迎え入れるカフェを経営!!!地球人のおおおおぉぉぉぉ!!!町田銀之助えええぇぇぇぇぇッッッッッッ!!!]


ウオオ!


「え?は?なんで一気にみんな黙るん?俺の事嫌いなん?もしかして俺人気あらへんの?え?」


[続きましてッッッ!!!]


「続けんなよ!!!」


(もしかして案外対戦相手もそんな強いやつとちゃうかもしれんな…。俺だけ人気ないとか流石に無いやろ…。)


[青コーナー!!!魅惑の超鋼鉄ボディは傷ひとつつかない!!!あらゆる攻撃や毒を弾く巨漢!!!身長246cm!体重560kg!魔力135万パワー!惑星ベイゴーマからやってきたベイゴマ星人!!!ヨーーーーーーーベイガーーーーー!!!]


ウオオオオォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!


「キャー!!!ヨーベイガー様ぁぁぁッッッ!!!」


「かっこいいよー!!!ボディ光ってるよー!!!」


「肩にちっさいビークル乗っけてんのかい!!!」


観客を無視し、さも自分に声援が届くのは当然のように体をガシンガシンと揺らしながら歩く鋼鉄の男ヨーベイガー。

遠くから見てもそうなのに、至近距離になったら尚更そのデカさがわかる。

両手はアームのようになっており、先端の手は球体に指が3本。

銀之助は見下ろすというか見下されていた。


「テメェが俺の対戦相手かよ。ちっこいしめちゃくちゃ弱そうじゃねぇか。ま、楽に試合運べるから良しとするか。」


腕を組み嘲笑うヨーベイガー。

銀之助は真正面の壁に全身真っ白になり小さく呟いた。


「俺…遺書…書いたっけかな…。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る