第16話 ビックリ仰天!異星人がいっぱいや!
ガヤガヤ…
ワイワイ…
オシリオシリ…
右向け左向けどこを見ても人、人、人。
地球人はもちろん男女問わず異星人だらけである。
ここは受付会場。
大阪城ホールである。
遂に来てしまったのだ。
宇宙トーナメントが!!!
早く見せろと言わんばかりに観客が次々に押し寄せる。売店ではオリジナルグッズや出場予定の選手たちの写真やポストカード。
アクリルキーホルダーにタオルなども販売している。
宇宙貿易が始まりテレビやラジオなどの人気が再熱。このトーナメントに関しては1つの惑星における視聴率80%超え。
老若男女が心から楽しみにしている武道大会らしい。もちろん地球でも高視聴率が予測される。
「おうおう、わかってたとは言え…とんでもない人の数…。はぐれそうだな…。」
「おいおい勘弁しろよ。子供じゃあるまいし。っっっっま!いつ迷子になっても大丈夫なように僕が探索魔法で探してやるから安心しろよ。」
クエスチョナーとボーナ。
ピコピコ動いている触覚。どうやらこれで特殊電磁波を飛ばし人を探せるようだ。
所謂エコーロケーション。
相変わらず鼻につくが、迷ってもコイツが居る限り安心だ。気に食わんけど。
お前は出ないのかエリートなのに?とクエスチョナーが疑問をぶつけると逆にエリートだから出ないとのこと。
「出ないに決まってんだろこんな危なっかしい下品な大会。僕が出るのは…そうだな。僕に似合う美しい大会は…例えば百式零格魔法選手権とか後は………」
グレートがトイレから出てきたので合流。
後ろでボーナが得意げになんか話してるが無視して2人で歩き出す。
あんな事言ってるがボーナは自腹切ってここに来ている。なんやかんやで興味はあるのだ。
本当は銀之助たちも応援したいのではないだろうか。しかし性格上、それは出来ない。
無視されていることに気づき怒りながら2人の元に走る丸メガネであった。
場面は変わり選手受付所。
ここにバカ3人組は居た。
パルムと銀之助はバイブを300%あたりに設定したかのように全身を震わしビビりまくっていた。
ここは男の部。周りには傷だらけのデカいゴツい異星人だらけ。
怖い、怖すぎる。
いやこの2人も怖いけど。
周りになんだあれと指をさされ笑われるも知ったことではない。というか声も聞こえているか不確かだ。
順番が自分たちに周り、名前を確認する。
ところでサーシャはというと…。
「んだぁ…。よくわかんねぇだな…。すまほの使い方とかもわかんねぇだ…。機械は苦手だよ。」
登録の照会に手間取っている異星人の女の子。
身長は180cm程で、前髪は目の部分まで覆われておりそして注目するべきはサーシャよりもデカい胸。
見た目からして牛の異星人であるバッファ星人だろう。筋肉があるホルスタイン。
サーシャがそれに気づき、声をかけた。
手慣れた指さばきでスムーズに登録照会を済ませ、2人笑顔でくだらない話で盛り上がる。
どうやら気が合うようだ。
バッファ星人の女の子はルーヴァ。
妹や弟たちがたくさんいて、病気に伏しているおっとお(父親)を助けるためにトーナメントに参加したようだ。サーシャに通ずるものがある。
それも仲良くなった理由の1つだろう。
「ちょっとどいてくださる?邪魔以外の何ものでもないですわ。」
「あ、すんません。」
後ろから植物惑星から来たような異星人が迷惑そうな冷たい目で物を言ってきた。
とは言え2人は横にズレて喋っているのでそこまで通行人や受付の邪魔ではない。
単にうるさかったのかもしれない。
「べらべらと…。物見遊山にでも来てらっしゃるの?そんなんじゃ本戦はおろか予選にも出られないでしょうね。」
ヤレヤレと呆れる植物の女の子。
「関西弁喋ってんの?」
「お嬢様言葉ですわ!!!確かに文面だけじゃ関西弁に見えるけれどしっかりしたお嬢様言葉で喋ってますわ!!!」
小説あるある。
サーシャとルーヴァはガッハッハッと笑い合っている。
ムキーッ!!!と怒る女の子。
その子の名前はマクロビ。
惑星バクガから来たアウラ人らしい。
スタイルはというと、肉付きが良く、胸もお尻も良く出ており少しぽっちゃり気味。
さっきからサーシャに小馬鹿にされるので地団駄を踏みながら怒りその度に髪の毛から生えているハエトリソウの毒水がぽちゃぽちゃと音を立てる。
ぽっちゃりだけに。
「そういう貴方も人様の邪魔してるのではありませんか?」
また声をかけられた。
マクロビが2人に絡むあたりから話を聞いていたらしい。
空手道着を着こなし、黄色いポニーテール。
整った顔に長いまつ毛。そして凛々しい尖った耳。
エルフ族の女の子だ。
「なんですの!………まぁ良いですわ。せいぜい本戦で当たった時に後悔なさいな。まぁ、上がってきたらの話ですけど。」
マクロビが嫌味を吐き去った後、その女の子も交え会話を進めた。
クトゥルフ空手の初段になったばかりらしく、その道場の名を広めるのと自分の力試しのために参加したようだ。名前はマンナ・ウェア。
サーシャとルーヴァからマンナちゃんと呼ばれすぐに仲良くなっていた。
「そうなんですよ。だから今回どんな予選があるのか分からないんです。」
「めちゃくちゃ久しぶりに開催やし、そんでもって毎回内容が違うから何をするかわからんと…。う〜む。」
「困ったもんだぁ。」
何にせよそれを突破すれば良い。
どんな試練が来るか分からないほうが面白いだろう。
前向きに考えて頑張ろうと互いにエールを送る。
みんなライバルにも関わらず称え合う姿はとても良いものだ。因みにマンナちゃんもおっぱいおっきい。
[大会参加者は表に集合してくださーい!!!予選を始めます!!!]
「よっしゃ!!!ほな行くで!!!」
前に進んだ瞬間気が引き締まったせいで腹も引き締まったか。
爆発的な屁を放ち、後ろに居た選手たち数十名が気絶した。
「あっ…ごめっ…。すんませーん…この人ら棄権するってさ…。」
後頭部に手を当て汗を流しアハハと笑う。
マンナとルーヴァはサーシャの前に居たが危険を察知したのか慌てて猛スピードで表に出ていった。なので助かった。トラウマにならんかったらええんやが…。
集合場所に着くと大勢の参加者がうじゃうじゃ居た。
予選自体はどうやら男女ともに同じ内容のようだ。今から詳しい話がされる。
「えっー、みなさま!はじめまして!今回宇宙トーナメントの司会を務めるクルトップ中川と申します!隣に居るのがバックグロージャー林です!」
いよいよ始まるのか。
サーシャは気合いたっぷりであるがあの2人と来たら全身真っ白になっていた。すでに燃え尽きている。
予選も観客は見れるので興奮冷めやらぬ雰囲気に包まれる。本戦では無いのにこの熱気。
それほど楽しみにしていたのか。
「予選の内容はコチラ!!!パンチングマシンでございます!!!」
参加者が多いので大量に用意されたパンチングマシン。
どんな内容でもどんとこい!と力んでいたサーシャは拍子抜け。
司会によるとパンチングマシンの順位と標準点数を超えているか総合で判断するらしい。
試しに司会が思いっきり殴ると点数は39点。
地球人の男性の平均点数は55点。
女性は120点、男性は200点を超えれば合格とのこと。
「あっちゃぁ〜…。あんなもんだったらあの女もクリアすんだろうな…。」
「お前なぁ…。」
「ま〜たそうやって意地悪言う〜。」
どこで買ったのか足を組みクランベリーチョコパイを齧りながらブツブツと文句を垂れるボーナ。
横にはいつものメンバーたち。
いつの間にそんなもん買ったんだよと聞かれると親指だけ動かし場所を示す。
見るとパラボラン3人が売り子をやっていた。
ずっこけるクエスチョナー。
頑張って、いかがっすか〜と声掛けしている。
小腹も空いてるのでこちらもクランベリーチョコパイを頼むのであった。
「パンチングマシンか…。それやったらどうにかなりそうや…!な!銀ちゃ………銀ちゃん???」
銀之助は干からびたもやしのようになっていた。
自分は地球人。そんなパンチ力あるわけ無い。
やってもないのにもうグロッキーな主人公。
どうにかパルムがなだめるも微動だにしない。
ここで終わってしまうのか…。
次々にパンチングマシンを殴っていく選手たち。
ゴツい鮫のような異星人の番になったので拳を握りタイミングを伺う。
そして結果は332点。余裕も余裕だ。
しかしどこか怪訝そうな顔をしている。
(なるほどな…。こいつぁただの力の測定じゃねぇ…。数値はランダムに出てきてやがる。それを魔力で調節した上で殴れって事かよ。ケッ、やらしい事しやがる。)
その通り。
実はパンチングマシンは強さを測るものではない。マシン内部でランダムに作り出される数値を魔力で調整し殴らなければいけないものであった。
つまりこれは力ではなく魔力のコントロールを図っているのだ。
司会もパンチ力を測るとは一切言っていない。考えられたものである。
パルムの番になった。
エイヤ!と殴ると出てきた数値は201点。
ギリギリのラインなのでずっこける。
何もわからない異星人たちはそれを見て嘲笑。辛そうな顔を浮かべるパルム。
マッシブで身長2m近い頭部が目ん玉そのものの異星人は見抜いていたので馬鹿にするどころか感心していた。
(あいつやるなぁ。魔力のコントロールが上手いのか200に近い数字を出すとは。本戦に出るだろうな。…………厄介な相手になりそうだ。)
なんで俺が予選落ちなんだとブチギレるやからも出てきた。しかしチャンスは一回。もう一回やらせろと叫ぶもアウトはアウト。
スタッフも大勢駆けつけどうにか外に追い出す。そしてそれを見て盛り上がる下品な観客たち。
ボーナも興奮している。
いやらし。
次はいよいよ銀之助の番。
こうなっては仕方ないと両頬を叩きキツケ。
パンチングマシンに向かい走り出した。
しかし別に何もないのに勝手につまずいてしまい、ズッコける形で拳を突き出した。
というか撫でた。
ポスンッ
3点。
周りは爆笑の渦につつまれる。
真っ白だった銀之助がさらに白くなる。
終わった…。完全に終わった…。
頭によぎるはカフェやパルム、サーシャ。
恥ずかしいなんて思いはどこにも無い。
頭がぐわんぐわんと揺れる。
そしてまたもや笑わずに眺めていた異星人。
まるでボールに手足が生えたようなシルエット。
(凄いなあの地球人。まさかパンチングマシンの【中身】を刺激して壊すとは…。電極と基板がイかれてる…。もうあのマシンは駄目だね。)
ごめんよ…ごめんよ…と呟く銀之助。トボトボと歩き控室に戻った。
パルムも心配してくれたが意気消沈しているので声が届かない。
しゃーないよと励まし、俺がなんとかするからとガッツポーズを決める。
銀之助が並んでいたパンチングマシーン。
その後ろで順番待ちしていた者たちも最低すぎる点数を次々に叩き出していく。
一定の聡明な異星人以外誰もパンチングマシンが壊れたと思わないのでこれまたブーイング。
ボーナは手をたたき笑っていた。
「銀之助落ちちまったか。」
「残念だね…。」
「どうなんだろうな。銀之助、まさかマシンぶっ壊すとはな。」
何も知らないエメリィたちはどういう事かと聞き返す。
ボーナは得意げに語っているがもうナレーションの私が説明したので省かせていただく。
場面は変わりホール近くの路地裏。
可愛らしいヒーローのような人形を持つ男の子。
大会を見に行くつもりなのだろう。近道でここを通ったのがマズかった。
そろそろ表に出るタイミングで柄の悪そうな異星人グループがそれを制止。
「ちょっと待てやガキ。お前誰応援してるんだ?俺らを応援しろよ。今ならなんと5万でファンクラブに入れるぜ?」
「悪い話じゃぁ〜ないからよぉ。ほらどうだ?」
品のかけらもなくゲラゲラと笑う。
パンチングマシンの待ち時間に暇を持て余した奴らだろう。
勇気を振り絞り嫌だというと異星人は逆上。男の子は持っていた人形を壊され寄って集って殴られ蹴られ始めた。
ファンクラブの勧誘はオマケであり、単にいじめたかっただけなのだろう。
頭を押さえ泣きじゃくる男の子。
しかし、この展開はお約束というもの。
後ろから肩を捕まれ辞めろと声をかけられたチンピラ異星人。
「なんだテメェ?やんのかオイ?俺らビリビリラブボーイズって知ったうえで喧嘩売ってんのかゴラ。」
「知るかそんなもん。怪我したくなかったら失せろ。」
そんな事で失せる事もなく、当然ながら手を出すチンピラ2人。
しかし一瞬で両腕をボキボキにへし折られ蹴り飛ばされた。
「アガッッ………!!!!いでぇ!!!いでぇよぉ!!!!!!」
「軽く小突いただけなんだがな。こんなんも見切れないんじゃ本戦で恥かくだけだ。わかったらさっさと失せろ。」
「テメェ…!!!偉そうにヒーローぶりやがって気持ち悪ィ!!!………ん?も………もしかしてテメェ………!!!!!」
海賊帽子に海賊の服装。
目は黄色く皮膚が深い青色、身長は2mをゆうに超えているその異星人。どうやら有名らしい。
「ト……トコヨ海賊団船長…!!!キャプテン・バルカンかッッッ!!!!!!!」
それに対して何も喋らないバルカン。
チンピラたちは逃げようとしたが思い直す。
ここでコイツを倒せば本戦が楽になる。
光り物(刃物)などを取り出し急襲。
眉ひとつ動かさないバルカン。
鈍い音が路地裏に響き渡った。
「はぇ〜、マンナちゃんでも551点かいな。肉まんかな?」
訳の分からん事を呟きながら見守るサーシャ。
次は自分の番である。
「サーシャさんなら大丈夫です!見せつけやって下さい!!!」
「サーンキュ。」
さっさとやれー!だの落ちろー!だのと野次を飛ばされる。
華奢な体をしているので舐められてるのだろうか。
「地球人がよく参加しようと思ったよねぇ〜。」
「フフフ、バカらしい。」
見せつけたるわ!と腕まくりしながら集中する。
サーシャの名前が呼ばれたので勢い良くパンチングマシンをぶん殴った。
ブォォガガガガガッッッッゴオオオオォォォォッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
「へ?」
パンチングマシンはバラバラに吹き飛び、壁に激突し木っ端微塵になった。
仰天する周りの者たち。
マンナもルーヴァも口を大きく開きビックリしている。
サーシャは強く殴りすぎたかと頭を抱える。
待ち受けるは弁償代。
銀之助とは違う理由で頭がぐるぐるしている。
遠くで腕を組み、アイスを食べている見た目は雪女の異星人。豊かなバストとヒップより小さめのビキニとホットパンツを決めている姿は艶めかしい。
(アレ地球人じゃないね。どこの惑星から来たんだか。てか…こんなとこで強さ見せちゃっていいんかねぇ…。)
司会ともども腰を抜かしている。
その雪女が考えている通り大体の異星人はマシンを壊そうと思えば出来るのだ。しかし、そのパワーを発揮すると他の選手たちに見られ分析されてしまう。
それでワザとみんなパワーを抑えていると言うこともあるのだ。
しかしサーシャはそんなこと頭に無いので字のごとく思いっきりぶん殴った。
測定不能という特別理由でなんとか予選通過は出来た。
これで一安心。問題は銀之助である。
「では!!!予選通過選手の番号を発表致します!!!」
番号が手慣れた流れで伝えられる。
パルムは見事に呼ばれた。
しかし銀之助は………呼ばれなかった。
当然である。低すぎる3点なんていう数値をたたき出したのだ。
しかし、後続の選手もマシンの故障が原因で低い数値をたたき出しすぎたので本戦出場の人数が合わない可能性が出てきた。
合掌しどうにか通るだけ通って欲しい。
そう祈るも…結果は残念なものであった。
肩を落とす銀之助。
周りの異星人からせせら笑いが聞こえる。
これにて第一予選が終了…と言おうとした時、誰かが待ったをかけた。
「コイツらが棄権するから枠は空いてるはずだぜ。」
左肩に6人もチンピラを担ぎ物申すのはバルカンであった。
観客や選手たちの阿鼻叫喚や感嘆の声でその場は包まれる。
「きゃ…キャプテン・バルカンじゃねぇか!!!」
「大会に参加してたのかよッッッ!!!!??」
「バルカン様ぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!」
ウォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!
雑にチンピラを放り投げスタッフに医務室へと促す。
何がなんだかわからないが礼を言う銀之助。
バルカンは冷静に本戦で会おうと言い残しどこかへ行ってしまった。
その後、第二・第三と予選が行われた。
リズムダンスに叩いて被ってジャンケンポンなど子どもの遊びを真剣にする選手たち。
そしていよいよ本戦のトーナメントの選手が絞られていくのであった。
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