第6話
魔法学校の中庭のベンチで膨れっ面の少女、アナリアがポツンと一人座っていた。
自信満々に連れてきた自分の使い魔のせいで授業を台無しにした自覚はあった。みんなに悪いことをしたと思った。だからちょっとしたお願いをしようとしたのに悪魔神に拒否された。
普段から周りに半人前と言われる彼女は自分の使い魔にも行動でそう言われたような気がして悔しかった。何より教室のど真ん中友達の見ている前で拒否されたのが恥ずかしかった。
考えてみれば、召喚してから一度たりとも私に何もしてくれてない。いつもママの手伝いばかりだ。これじゃ誰が召喚者か分からない。
アナリアは不満が止まらなかった。
本当はどうしても叶えてほしいお願いがあるのに、それも供物が見当もつかないからと母に止められていた。せっかく召喚できたのに何の意味もない。なんのための悪魔召喚なのか。
苛立ちを見せるアナリアの前に大人びた魔女が姿を見せた。上級生でいつも高圧的な嫌な魔女だ。隣には真紅の髪に青色の肌をした人型成体の女悪魔がいた。
その悪魔をアナリアは睨め付け強い怒りを露わにした。
「アナリア、貴方とんでもない悪魔を召喚したそうね」
上級生の魔女、ハプリカが言った。
「それがどうかしましたか」
アナリアの苛立ち混じりの返事にハプリカはフフッと口元に手を当て笑った。
「どうやらうまくいってないようですね。貴方達のような半人前じゃ仕方ありませんわ」
アナリアは立ち上がり何か言い返そうとしたが、何も言葉が出なかったのでその場を立ち去ろうとした。そんなアナリアをハプリカが「お待ちなさい」と呼び止めた。アナリアは無視して立ち去ろうとしたが
「貴方の悪魔と私の悪魔、どちらが強いか決闘させませんこと?」
ハプリカの提案に足を止めた。
「興味がおありのようですね。イシュキートもどうかしら?」
ハプリカは隣の悪魔イシュキートに話しかけた。
「ああ。勿論いいとも召喚者様」
ククッとイシュキートは不気味に笑った。
ハプリカが少しだけ眉を顰めた。
「貴方ならそう言ってくれると思ってましたわ。それでアナリアはどうしますの?」
「やります。私の悪魔が勝てば一つだけお願いを聞いてもらいます」
アナリアの言葉に先程までの潜むような笑い声とは打って変わって大きな声でイシュキートが笑い出した。
「いいだろう。だが片一方だけじゃ不公平だよなぁ。賭けと行こうじゃあないか。腕を出せ」
ハプリカの代わりにイシュキートが不敵に笑いながら答えた。
アナリアは内心恐怖しながらも、悪魔神様が負けるはずない思い話を進めていった。
「と、いうことがあったんだ」
俺は蜘蛛の助に居候先の娘さんを怒らせてしまったことを相談した。
「やっぱ得体の知れない男が住み着いて鬱憤たまってんのかな?」
あの後、俺とグアグァはすぐ返ったからアナリアがどうなったか知らないんだよな。あのよく謝る先生がケアしてくれてるといいんだけど。
蜘蛛の助は地面に【気にしないで】とひらがなで書いた。ちょっと形が怪しいが、ほとんど伝わるからノープロブレムだ。
「おー!随分と俺の世界の文字を覚えてきたな。こんなに早く覚えるなんて頭がいいな!」
「凄い凄い」と俺は蜘蛛の助けの体を撫でようとしたがペシンと手を前足ではたかれた。蜘蛛の助は体を撫でようとするとよく俺の手をはたく。
「酷いじゃないか。蜘蛛の助」
俺ははたかれた手をさすりながら言った。
蜘蛛の助は地面にひらがなを書き始めた。
【くものすけ ちがう ろおね】
俺は少しびっくりした。
「めちゃくちゃ綺麗ないい名前じゃないか。もしかして飼い主がいるのか?」
ローネは首を横に振った。
飼い蜘蛛じゃないということは親がつけた名前ということか?それとも自分で名前を考えたのか?名前の響き的に人間基準でメスっぽいけど。
「まさかメスだったりする?」
ローネは恥ずかしそうにウンウンと二度頷いた。
何故体を触らせてくれなかったのか合点がいった。「異種だからといって気安く触れると思わないでよね!」フンッとそっぽを向くツンデレローネが想像に難くない。
「お前は何て可愛いやつなんだ!意地でもそのプリチーな体を撫で回したくなったぜ!」
ローネは慌ててその大きな体を地面に擦り付けて穴でも掘るかのようにして隠そうとした。全然隠せてなかったけど。
なんともまぁ可愛らしい仕草で俺は思わず笑っていた。
「冗談だよ」
ふぅーとローネが安堵しているのが分かった。
ローネのおかげで和んだというか気が楽になったぜ。これで夜も変に悩むことなくぐっすり眠れそうだ。
俺はローネと別れマジョファミリー家に戻った。帰って早々アナリアに用があると言われ部屋で二人きり話すことになった。
「明日決闘に出てくれませんか?」
「へ?」
どうやら今日はぐっすり眠れそうにない。
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