読まれる作品、そこにいない人
秋犬
君はきっとそこにいる
最近「PVが取れなければ意味がない」というような言説を見かけた。
そりゃ人によって小説を書く動機も違うので、意味がないと思う人もいるのだろうと思う。いろんな設定を組み合わせて、読者ウケが悪いと思ったらその設定を引っ込めてまた世界をイチから構成したりなかったことにしたり……それは読者ウケを追求する世界だったら、きっといいことなんだと思う。
ただ、そうじゃない世界もあって、ひとつの作品にじっくり取り組んでいる人もいるし、そもそもまだ作品を世に出せていない人だっているのである。そういう人に「PVが取れなければ意味がない」という言葉は、かなり否定を強める言い方になると思うなあと思ったのでこういうのを書いています。
自分の話になるけれど、もちろん読んでもらえば嬉しいし数字に反映されればそれはそれで喜ばしいことだと思う。ランキングっていうのは、数字が絶対の世界だ。一生懸命やったから報われる、なんていうアマっちょろい世界ではない。だけど世の中アマいので、チョロい人も多いのである。
どうして初心者の書く創作日記が急に創作論のカテゴリで人気になるかというと、みんな「初心者が頑張る姿」が見たいからだ。別に作品に面白さを期待しているわけではない。ただ「ああ頑張ってるなあ」という姿に★を送るのであって、文章が面白いからというわけではない。だから裏を返せば「僕は頑張っているぞ!」という属性で作家性を作るとめちゃくちゃ読まれたりするんですよ……初心者というのもそういう属性。あとはアイドルとか〇▼◇×とか、んんんんっ、とか、(自主規制)とか……。
話を元に戻すと、「PVが取れなければ意味がない」という言葉はそういう属性の前には無力なのである。オッサンがいい声で上手に歌ってるより、音痴でも可愛い女の子が歌っている方が人気が出る。つまり「PVが取れなければ意味がない」というのであれば、オッサンは無価値であり死ぬべきである。そんなことないだろう。オッサンも愛してやらないと。
いや、逆に「PVがなくてもそいつはそこにいていい」ということなのだと思う。いくら待っても誰にも読まれない、その焦りは本当によくわかる。まるで透明人間にでもなったかのようなぽっかりと空いた胸の痛みは誰しも経験があることだと思う。一生懸命やったのに報われない。そういうことも世の中にはあるのである。36万字書いて公開しても星が7つしかないとか。
でも、それはそれで存在していてもいいし、していなくてもいい。世の中には消すべき邪悪も存在するけれど、目につかないならばそれは善でも悪でもなくてただの物体Aでしかない。目に見えるようにしたことで批判されるということもある。それならば一生見つからないところで全裸で踊り狂っていても、バチは当たらないのではないだろうか。ステージに立つから全裸はダメなのである。家でひとり踊っていても、バレはしないのだから。
まあつまり「PVが取れなければ意味がない」という言葉を「初めて小説書きました!」と言うところで披露するのは違うんでねえの? とニッコニコで思っているということです。小説はPVじゃねえんだよ。まずは文章はしっかりしているか、中身は整っているか、そういうところを見たうえであらすじとかタイトルの検討になるわけでさあ。最初から上手な人はいないんだよ。少しずついろんなことを経験して上手になっていくわけだから、変に焦らせるようなことを言うのは正義ではないと思うんだよな。
あ、もしかして変にプレッシャーかけてライバルを減らそうと思ってる? そういう人もいるかもしれないもんね。まっことこの世界は他人を信用できんぜよ。信じれるのは己だけ。だから他人のdisなんざ「へーご意見ありがとやんしたー」って流すのがいい。
あと本当に読んでもらいたいのであれば、この世界では宣伝しないと読まれないのでカクヨムであれば自主企画に参加したり他の作品に感想つけたりして自分の名前を売っていくのがいいと思います。その段階になって、やっとタイあらの検討じゃないかなーと思います。まずは自分はどういう作品を書く人なのか、どういう売り込み方をするのか、しっかり軸を作った方がいいと思う。公募で通るかどうかはまた別の話。
あと素晴らしい作品を書く人だからと言って、人間性が素晴らしいかというとそうでもねえよっていうのは留意したいところですね。この文章の筆者も含めて。じゃあね。
読まれる作品、そこにいない人 秋犬 @Anoni
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