君を旅する

あめ

【第一章】変わらぬ愛

小中学生自殺者過去最多。

朝、7時45分。することもないのでニュースを流し見ていた時だった。


「こんな時代なのだから仕方ないよ。」


君は煙草を吸いながら答える。淡白な回答だった。

「君もそう思うだろ?物価は高くなり税も高くなった。

 気候はおかしく性犯罪も多い...死んだ人は、頭が良かったのかもしれないね。」

「...自画自賛か?」

「...さあ。」

君はどこか皮肉な笑みを浮かべ、テレビを消した。

まだ見ていたのに、と呟くと、彼女は興味なさそうだったよ、と笑う。

「今日はどこへ行こうか。」

「どうせ時間は無限なんだ。適当に行けばいいさ。」

「...そうだな。」


バカみたいに快晴の空を見上げ、車のエンジンをかけた。



「助手席で煙草を吸わないでくれないか。」

「あぁ、お前嫌いだったっけ。」

申し訳なさそうにするが、煙草を消す気配は無かった。

...こいつはそういうやつだったな。

「少なくとも窓を開けろ。煙で死ぬ。」

「...死にはしないだろ、この世界では。この世界じゃ時間にとらわれなくていいんだよ。そもそも、煙草なんて寿命が縮むだけだ。」

「だから吸ってんだろ?」

「黙れよ。」

クツクツと笑う君はどうしても絵になる。美形なのが腹が立つ。

「君は口が悪いな。」

「お前も大概悪いだろ」

「…とにかく窓を開けるからな。良い?」

「はいはい。」


私たちは、この世界で永遠の時を過ごしている。

何年もここに居る気がするのに、私達はずっと15歳のままだ。


「…」

「…?なんだよ。」

「別に…煙草って美味いのか?」

「いや?…吸うか?」

「吸わん。」

「つれねぇなあ」

君は、吸い殻を窓の外に投げ捨てた。

「ゴミを外に捨てるな。」

「何のこと?」

「…クズ」

「褒め言葉かな?」

「…」

「あ、町が見えたぞ。」

君が指差した方向を見ると、栄えた町が見えた。

「良い匂いがする…なんだろう。」

「あ!!肉だ!!久しぶりに肉が食えるかもしれん。」

「ああ。野菜も無くなったし、ちょうどよかった。」

私達は、急いで車を止めて町を見に走った。


町の商店が並んだ通りの、良い匂いがする方へ行った。

君が涎を垂らして見るので、ついいらないものも買ってしまいそうになる。

「肉ください。」

店の奥の方から、気前の良さそうなおばさんが出てくる。

君は、さっき買った棒アイスをなめていた。

「いらっしゃい、何と交換するんだい?」

「これ、わたしが朝捕った魚だよ。」

そういえば、今日の朝の魚も多めだったな。魚捕ってきたのか。

「魚か…この辺じゃ珍しい種類じゃないか!いいよ、もってきな!」

「よっしゃ!ありがとねおばちゃん」

「ああ、こちらこそさ」

この世界には、“金”というものがない。

そもそも、国や政府などが無いのだ。昔はあったが、流行病の影響で人口が減り、文明も衰退した。昔の国境などは残っているが、自由に行き来できるようになっている。

「八百屋はあっちにあるな。はやく野菜貰いに行こう。」

「りんご食いたい!」

「さっきアイス買っただろ…」

それから野菜と…結局りんごも買って私達の家、キャンピングカーへ戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る