第5話
ヘレンの別荘の計画は中々大変だ。一月ほどの滞在期間で決まるだろうか? ヘレンがこちらに来る途中の街で大工を探してここまで来てもらっている。ヘレンから遅れて十日、今日到着した。今は彼等に相談しながら考えているがそれでも大変だ。
森の近くなどで候補地を探し回るが良い候補地がなかった。なので、今のところ屋敷のそばの高台が一番の候補になってる。モリーと一緒に探し回るヘレンは楽しそうである。その分、俺がモリーと一緒にいる時間が減るのだが。
『ヘレンお姉ちゃん、なかなかいいところみつからなかったね」
「残念だけど難しいわね」
大工などの職人を迎えるには家や、もしかしたら店も準備しないといけないか? 実はこの村には専門の大工がいないからな。家を建てるときは村人が揃って建ててるし。考えないといけないことが山積みだ。木材はどうすればいいかな。大工の棟梁のバーニーが答えてくれる。
「ここの森、いい木はありますが、来年に間に合うか微妙ですね」
切ってすぐに材木にできるわけではなくて乾燥させる必要があってそれには1年ほどかかるそうだ。
かと言って他から持ってくるにしても結構かかりそうだ。ということは建てられるのは早くて1年後、いや2年後か。
「そうなりますねぇ。木を切るのはまずは木こりを連れてこないと」
あぁ、あれも足りないこれも足りない。
「土台を作る職人とかも」
やめて私のライフはもうゼロよ。
目の前にいる大工の棟梁のバーニーは南のノーザンファーム伯爵家の領地から来ている。数人ならまだしも何人も職人を連れてくるとなると、伯爵にも挨拶しておいた方が良いだろうな。木材と言えば植林とかはどうだろうか。
「モリー、林業は詳しいか?」
「さすがにそのあたりは分からないよ」
そうか。そうだな。
「なあに?林業って?」
ヘレンが不思議そうに尋ねる。
「あぁ、木を育てて木材にする仕事」
「木なんて森にいっぱいあるじゃない」
「それはそうだけど使いやすい木がいつまでもあるわけじゃないからな。森の奥まで行かなくても木材にちょうどいい木があるといいかなって思ったのだが、まぁまだそれは先のことになるか」
「ところで、どんな家にするんだ?」
モリーがそう聞くと、ヘレンは困ったような顔をした。
「この辺り、寒いでしょ、雪も降るでしょ、どういう建物がいいのかわからないのよ」
これは、専門家に聞くか。
「そうですね、このお屋敷に似た形がぶなんでしょうね。あとは人数ですが使用人は何人くらいになりますか?」
「そうねぇ、私とこの子ら二人、それから外回りとか馬の世話をするのが一人、料理をするのが一人、あとは洗濯メイド、だから6,7人ってところかしら?」
ヘレンが答えるとモリーが付け加える。
「それからお客が来ることも考えた方が良いわよ。一人いらっしゃれば五人くらい? だいたい余裕見て10人から15人くらいかな?」
それを聞いて親方はいろいろ考えているのだろう。
「すぐには答え出ないですが、だいたいこの屋敷の半分くらいの大きさですね」
結構大きいね。この屋敷、俺たちには大きすぎる屋敷だ。それの半分でも結構大きい。
「準備も含めて、他から材木とかそろえるとしてもだいたい1年半見てください。この辺りは真冬は作業できないので今から材木とか資材を準備してもそんな感じになります」
そうかぁ、そんなにかかるのか。
「そうね、そのくらいかかるかしら。ごめんねぇ、モリーちゃん、しばらくモリーちゃんのお宅でお世話になりそう」
「お姉ちゃんなら大歓迎よ。まぁ、どうせお部屋余ってるし」
いやそれは構わないけど、うちに泊まるの決まりなのかい。いや他に泊まるところないけどさ。
あとはこまごまとしたことは一度戻ってからまた20日後に来た時に相談したいと言われた。
「そういえば、この村には宿がないからうちに泊まってもらうが……」
「ありがとうございます。それには及びません。テントを持ってきているので裏庭を貸していただければ十分です」
貴族だったら何かあるんだろうけど、職人だからそのまま希望通りにするのが良いだろう。
「わかった、裏庭を貸そう。火の用心だけはしてくれよ」
あとで仲良くなってから聞いたが、貴族の屋敷に職人が泊るのは双方にとっていろいろトラブルの元らしい。
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