悟り探偵の雑談会
蠱毒 暦
【質問企画!】あなたの作品のお二人にインタビュー!
「…面倒だ。こんな忙しい時に。」
『これより、質問企画…午前の部を開始します。当会場では飲食、喫煙は禁止しております。携帯電話の電源を切り…リ、リ…』
ブツンッ………
アナウンスは途中で途切れ、会場の幕が上がると、観客席から拍手が巻き起こると共に…スタッフが舞台へと上がり、机とノートパソコンをセットして、起動した。
黒塗りのモニターで、顔こそ見えないが…俺を招いたのは、間違いなく……
「随分な歓待だな『情報屋』…いや。ここでは『怪盗』と呼んだ方がいいか?」
【…転々と拠点を変える君に、企画の招待状を出せる奴なんてこの僕をおいて、他にいないだろう?】
「…今日は『僕』なんだな。」
【さあ、午前の部を始めようか。】
Q1:お二人のお名前とご関係を教えて下さい。できれば現在の年齢も
【質問の前に先に言っておくけれど、名前や素性を偽る必要はないよ。観客やスタッフ…アナウンサーですら、今は僕の道具だ。僕達がここにいた記憶も、すぐにでも忘れるだろうさ。】
「俺はレト・ロマンティクス。山賊だ。」
【…まあいいや。彼は謎の組織【零落園】序列第9位…『詐欺師』だ。名前は残念ながら、僕でも知らないけど、年齢は26歳だよね?】
「…チッ。」
【あはは。で僕は『情報屋』だったり『警部』だったり謎の組織【零落園】序列第8位の『怪盗』だったりと、顔が沢山ある…
「…そうか。」
【鏡みなよ。いつもよりも辛気臭さそうな顔つきになってるぜ…っと。そんな僕達の関係は…相棒かな??】
「冗談でも笑えない。両者の利害関係の一致…言うならばビジネスパートナー以上、共犯者未満といった所か。」
【う〜〜〜〜ん…よしっ、それ頂き!】
Q2:お二人が出演している作品はどんなストーリーですか? 簡単にご説明下さい
【ストーリーねぇ。僕も君も基本、裏方メインだから…主人公とかを張る器じゃないんだよね。敵キャラみたいなものだし。】
「…俺は、2度メインでやったが?」
【またまた。どうせ、お得意の嘘で……っ!?】
「申開きがあるなら聞いてやってもいいぞ?」
【ぼっ、僕より…序列が下の癖に!!!】
「『黒猫』に言われた事を忘れたか?この序列は『自由人』が身分や能力関係なく、勝手に決めたものだと。」
【あ………そうだったね。】
「大体、日常生活の大半を、潜水艦で費やしているお前と違って、俺は金の為に世界各地を巡りアクティブに動いている。これが俺とお前の差だ。」
【人の事は言えないけど『詐欺師』がアクティブに動くなよ…って、思うのは僕だけかな。】
Q3:初めて出会ったのはいつですか? 第一印象は?
「馬鹿な両親が狂い、妹を死に追いやった新興宗教団体を詐欺で潰そうと思った時、青臭えガキだった俺に、唯一接近して、共謀を持ちかけて来たのが…お前だった。」
【この企画みたいな感じで、声だけの登場だったけどね…今だからこそ言えるけど実は僕は君と会う少し前から…君の存在は知っていた。】
「……?」
【今はまだ語るべき時じゃない…私の話を聞いた上で、改めて第一印象を聞かせて欲しいな。】
Q4:相手の長所を教えて下さい
「俺の長所は、抜刀術だ。」
【はぁ…そうやって、自然と嘘をつけるのが、君の長所だろうよ。】
「ふん。お前の長所か…『怪盗』としてなら、一流だと認めてやってもいい。」
【おや。嬉しい事を言うじゃないか。】
Q5:相手の短所を教えて下さい
「ただそれ以外の全てが半端の器用貧乏。『情報屋』としてなら、二流もいい所だ。お前が欲しいと望む物ほど、慎重に計画を立てて、無駄に時間を消費した結果、ご破産になる所もお前の短所だろうよ。」
【…そこまで言っちゃうか。僕でも傷つく心があるんだぞっ。】
「見え見えなんだよ。今回の事といい、俺を巻き込んで、利用したいってな。本職相手に嘘の勝負を挑むものじゃないぞ…教訓として覚えておけ。」
【……】
Q6:ある日突然貴方達の中身が入れ代わりました! さてどうする?
【僕が君に…う〜ん。】
「銀行強盗、見ず知らずの奴を強姦、或いは警察に自首するのもいい。ああ、お前の集めた古臭いガラクタ群を焼くのも一興だ。よく燃えそうじゃないか?」
【ひゅう…容赦ないね。でもそんな事したら、いくら心が清らかな僕でも、ブチ切れるよ?】
「今なら、選ぶ権利をくれてやる。」
【人の話…全然、聞かないなぁ。】
「お互い様だろう。」
【…じゃあ……自首で。刑務所から脱走するのも、たまにはスリリングで、面白そうだ。】
Q7:お互いに思っていることを正直にぶちまけましょう!
「俺はお前の事が大好きだ!結婚しよう。」
【まぁ絶対、1人くらいはいるよね。正直に言えって言われているのに、逆張りして嘘つく奴は。てか、やめてくれよ。気持ち悪い…】
「そ、そんな…この愛に嘘偽りなんてない…この通り、式場は既に準備している…ハネムーンは…よし、エジプトに行こう!!!」
【ガチで予約してるじゃないか。普通にドン引きだよ…ってか…ん。それいいね…そろそろ、クフ王のピラミッドを僕の蒐集品に加えたいって思っていた頃だったんだ。この企画が終わったら、一緒に行っちゃう?】
「!それは……や、やだ。」
【ブフッ…大の大人が『やだ』って…クク…ぶぁははははは!!!!】
「………」
Q8:相手に直して欲しい所を一つ教えて下さい
「その自己中さと、減らず口を少しは直せ…と言った所で、無駄な話か。」
【その通り。分かってんじゃん…で、警備の数は…ふむふむ。これなら、団体さんで来てる観光客を利用して…後処理は『詐欺師』の口八丁で…よし、どうとでもなる!】
「おい…俺を作戦に入れてないか?」
【…報酬は弾んじゃうよ?】
「…8:2だ。今やっている仕事を終えた後なら、受けてやってもいい。」
【なら、決まりだ…君の口座に、前金を振り込んでおいたよ。】
Q9:相手に感謝していることを一つでいいのでここで相手に伝えて下さい
「一応はあったが…言う気が失せた。」
【驚いた…僕に感謝している事があるなんて。
ありがとう『詐欺師』】
——変わらずに、僕の道具でいてくれて。
「何か言ったか?」
【いんや。なんでもないない…】
Q10:これからも末永く仲良くしてくださいね?
【そりゃあもう僕と君はずっと、ずっっと…仲良く…】
「この際言っておくが、お前と敵対した場合…俺は情け容赦なく、お前を殺す…味方ならいいが、敵なら厄介極まりないからだ。」
【……うん。それでいい…何せ、今の僕達は意図的に作り出した…そう。ビジネスパートナー以上、共犯者未満の関係性によって、奇跡的に共に歩けているだけなのだから。】
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【さて…午後の部が始まる前に撤収するとしようか…序列7位とその助手が来る前に。】
「…来るのか?」
【そういう風に人間を使って、誘導しといたからねぇ…この企画の主催者は僕だし。君も早く逃げなよ…会うのは気まずいだろう?】
「…チッ。」
【改めてこうして、雑談に付き合ってくれてありがとう!昔の事を色々と思い出せて、楽しかったよ!!】
「雑…!?」
それだけの為に…俺は呼び出されたのか。
【では、次はエジプトで会おう!】
『怪盗』がパチンと指を鳴らした音が聞こえた瞬間、立っていたスタッフ達がノートパソコンや机を持って舞台を降りて、会場の外へ駆け出して行った。
『……?あ、あれ。もうこんな時間…午前の部はどうなっ…』
アナウンサーや観客も続々と、意識が戻って来ている…なら、俺も逃げるとしよう。
「……」
だが、その前に…質問内容を俺好みに変えておくか。『悟り探偵』なら、すぐに俺がやったと気づくだろう。
そうして、サクッと細工をし終えた俺は、式場での詐欺を早々に片付け、たんまりと金を稼いだ後…銀行で、前金が本当にあるのかを確かめて、俺の事が大嫌いな『悟り探偵』の助手に嫌がらせ目的で、チケット代を除いた、今回手に入れた前金も含めた全額を全て、振り込んでおいてやった。
宵越しの金は持たねえ…ってな。年中、忙しくて困っちまうぜ。
そして空港へと行き、『怪盗』の手伝いをするべく、1日しかいられなかった日本を出て、エジプトへと旅立った。
了
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