天神様の金髪獅子舞キリ
京極道真
第1話 おみくじ自動獅子舞キリ
俺様の名前はキリ。由緒正しき天神さんのおみくじ自動獅子舞だ。
商店街の中に同化するように鳥居がある。小さき境内。これが我家だ。
もちろん門番の狛犬も門内には丑もいる。
だいたい平和な毎日だ。
ただ正直なところ、おみくじを運ぶだけに最近飽き飽きしていたところだ。
体力的には電気の力で動いてるから問題ないが精神的に刺激がなく、箱の中から人間達のおみくじを待つワクワク顔を見るだけだ。
瞬時で結果のわかるおみくじは短気な俺様にはあっている。
が「やはり退屈だ。」
こうなったら天神さんに正直に不調を訴えよう。
俺様は日頃の仕事や環境の不満などを素直に天神さんに話した。
天神さんいわく。「それはすまなかった。人間の言葉ばかりに耳を傾け、ここ1000年余りあっという間に過ぎてしまった。
私も元々人間で神様になったものだから、一人前の神様になろうと必死だった。
すまない同じ境内の我が家に住んでいる君達のことを気づかいそびれた。
君達も息抜きも必要だな。」
そういって天神さんは僕らに早朝境内の門が開く前の30分だけ自由に器から抜け出せる力を与えてくれた。
俺様、自動獅子舞キリ、門番の狛犬、門内の丑、僕らは
「天神様ありがとうございます。」と感謝した。
仕事は大事だが個人的な自由も大事だ。
さすが天神さん。元人間の神様なのでそのあたりのことはよくわかってらっしゃる。
ありがたい。
理解ある良い上司をもって俺様達はラッキーだ。
それから早朝開門前の30分、自由に動き回った。
狛犬も丑も「こうやって、自分の時間と自由が手に入ったのもずうずうし獅子舞キリのおかげだ。ありがとう。」
「ちょっと、そのずうずうしは余計だ。」
「そうだな。」
「ハハハ。」俺様達は楽し気に笑った。
「開門。」時間だ。今日も一日がんばりますか。
僕らの境内の仕事は一見すると楽そうだ。
しかし、実際は丑や狛犬などは動かずに、人間にご利益とご利益となでられる。
人間の手でなでられたカラダの箇所がすり減るらしい。
しかし箱の中にいるおみくじ自動運搬の俺様の仕事に比べれば、楽しそうに見える。
「なあ、狛犬さん、どうだ?俺様と入れ替わらぬか?」
「いやだよ。自動獅子舞のおみくじは箱の中で動きっぱなし。老体のわしらには疲れる。いやだ。」
「そうだな。狛犬さんは1000年以上たってるもんな。では丑さんはどうかな?俺様とかわらぬか?」
「見ての通り、私は機敏ではないぞ。変わってあげたいが、ゆっくりすぎて人間からクレームが出そうだ。」
「確かに。」
そんなある日、開門前の境内に修学旅行が数人来た。1人の男の子と目が合った。
彼の携帯をかざし、僕の写真を撮った。その瞬間。緑の光が天神さんから放たれ
「獅子舞キリよ。少しの間、人間界の旅に出てきなさい。ほほほほ。」
やさしい天神さんの声と共に僕はその少年の携帯の中に吸い込まれた。
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