かわいすぎる半妖男子、全力で推し活はじめました!

奇々怪々かつ化学では証明できない人智を越えた現象を起こす存在とされてきた、妖怪。そんな妖怪と人が共生する世界で、ちょっぴり人見知りで目が多い半妖・百目鬼くんの〈推し活〉を描いた物語です。

痴漢から救った女性に誘われて、百目鬼くんは好きな漫画の2.5次元舞台を観劇します。そこで、運命的に推しに出会い、推し活に励むことに。初めてのことに挑戦する際の緊張や、コンサートや舞台中に抱くドキドキ・わくわくの感情描写がリアルで、読んでいるこちらまで気持ちが盛り上がります。さらに推される対象である伊原も、アイドルとしてのかっこよさと等身大の青年としての両面が納得感をもって描かれていて、「この人の出る舞台やコンサートに行ってみたい!」と思わせる魅力にあふれていました。

そのほかのキャラクターも、それぞれの人生を生きていて、それを会話から自然に伝える力量は見事です。また〈共生〉社会といえども、世間にはびこる偏見や社会からはみ出してしまう生きづらさ、受けた不当な扱いは、現実世界と重なっていて、不思議な設定の世界ながら、納得感とリアリティを生み出していました。

読了後は、主人公のかわいさや一途な気持ちに胸がキュンとし、この物語の先では二人はどういう風に生きていくのだろう。気になる……そんな気持ちにさせられる作品です。

世界観とキャラクターの魅力がしっかり噛み合っていて、推し活や成長物語が好きな人にぜひぜひ読んでほしい一作です。