第4話  おすおす。

次男が朝帰りすると

まずはおすおす、おすおすと言うので

わたしもおすおす、おすおすと

返すのが合言葉になっている。


ただいま、のかわりと

おかえり、のかわり。


きょうも無事に

生きて

帰ってきたのだねえ。


よしとする。おすおす。


次男が昨日の残りのおかずの

ハンバーグをがっつきながら

突然、げほげほとむせて

涙を流し始めた。


なんなのー、そんな慌てて。

ご飯つっかえたんかい!!


いや、そうやない、

なんかおれ、ほんとカスかもしれんけん

なさけなくなって泣けてきた。

いい年して、

朝帰りはもうやめよーって思うのに。

すまんなんかおれ、まだ酔っ払っとる。


それでもこうやってかあさんは

ごはんを作っててくれるわけで。

炊飯器に白いご飯があるわけで。

おれは、一人暮らしの友達に

おまえは結局甘えとるよね親にって

よくいわれるけど

たしかにそうやなーって、

返す言葉ねぇよなあって。


おれは本当にカスかもしれんね。

でもさー、そうでもないかもしれんぜこの頃は。

というかおれは、カスっちゃカスかもやけど

かあさん的にはどう思う?


うーむ、

一般的にいう生活面では

とうに自立してる友達らと比べられると

まだまだカスとかいわれても仕方がないかもだけど

おまえといると、

かーさんはなんか面白くて笑えるから、

ときどきとんでもないことをやらかすので

憤ったりもしてしまうけど、

涙を流したりもしてしまうけど、


おまえとのやりとりは

もはや死にかかった細胞が沸き立つからね

しかもおまえは生活費というやつを

ほんの少しだけどいれてないわけでもないもんなあ。


つか、かあさんのなかでは

そもそもカスであろうがカスでなかろうが

どっちでもありなのである

でもさー、できることならば

カスでないほうがいいかもなぁ

(笑)


わかった、

おれはカスを離脱できるよう願いながら

とりあえず今から、寝る。

あとで漁師の友達がイカ届けにきてくれるけん

来たら起こして。


そう一方的に言い放って次男は、

ドスドスと自室に行ったと思ったら、

部屋のドアを開けて顔だけ出して


「あのさあ。

かあさんになにかあったときは

おれが必ず助ける、だから心配すんな」


・・・。


どうやらまだ酔いが抜けていないもようで

いつも以上に唐突で支離滅裂な気がするけれど

なんか言いたいことは

わかるような気もする。


どこから飛んでくるか想定外の

この直球が、次男の武器かもしれない。


それにしてもこれからわたしは

もろもろ用事があるというのに、

イカをもってきてくれるという

次男の友達が来るまで待った挙句

奴を起こしてやらんなあかんのかい。

いつも人の都合なんて、虫。


やっぱ立派なカスなきがするけどね。


・・・はっっ。

そうか。

イカってひょっとして

遅れてきた母の日のプレゼントのつもり???



えーと、わたしが魚介類NGなのは

もちろん知っているよね。



・・・おすおす(悲報

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