第11話 君の大切な人

結局、テストお疲れ様会という名目で、また『ディスカポネ』に集まることになった。

今日は詩織さんもバイトは休み。

この時間は客も少なく、もともとよく集まりに使っていたこともあって、自然と『ディスカポネ』が会場になった。


「なあ、新。梨音も呼んでいいか?」


教室で荷物をまとめながら、悠二がぽつりと口にした。


「梨音ちゃんって……悠二の彼女さんだよね?」


「ああ。来年受験で、今はずっと勉強詰め。たまには息抜きもさせてやりたいしさ。

まぁ、お前にも紹介したかったし、いい気分転換だろ」


「へえ、彼女想いだね」


「うわ、意外って顔したな?」


「そうなこと無いよ」


「おふたり、仲が良いですね。」


詩織さんがふわりと微笑んだ。


「全然俺は気にしないから、知り合いなら呼んでくれていいよ」


「ありがとな。とりあえず連絡しておくよ」


悠二がスマホを取り出し、すばやくメッセージを打ち込む。

すぐにスマホが鳴り返事が来たことがわかる


「邪魔じゃなければ今から行きますって

 なんなら美羽と小鞠ちゃんも来るみたいだよ」


「小鞠ちゃんって三津原さんの妹さんなのはわかるけど美羽ちゃんって?」

そう聞くと「ああ。」と悠二が反応する。

「美羽は俺の妹だ。

 俺と詩織が昔から長い付き合いだからな自然と同い年の美羽と小鞠も仲良くなって今じゃあ何をするにもふたりでだよ。

なんなら詩織とも良く遊ぶぞ……俺はハブられるが」

「同性ですからね、色々と頼りに思ってくれてるみたいですから

でも悠二くんのことも頼りに思ってますよ、きっと」

「どうだか……」


悠二はぶっきらぼうにしかし嬉しそうな表情をする。


「そういえば、小鞠が朝宮君に会いたそうにしてましたね

 お礼を言いたいって」


「お礼?、お弁当を届けたことかな……別にいいのに」


「たぶんそれを口実に遊びたいだけじゃないですかね

 あの子人懐っこくて誰にでも懐くから」


「ああ、確かに誰にでも話をしそうでなんか小動物みたいなイメージだった。」

あの時の小鞠ちゃんを思い返しながら同意すると

 

「はい、自慢の妹ですよ。

 何があっても守ってあげたくなります。」

そう話す詩織さんの表情は、妹への愛情に満ちていた──

けれど、その奥にほんのわずか、何かに駆られるような、少しだけ張りつめた表情も浮かんでいた。


(そういえば、前にも家族のことを話したとき……やっぱり、三津原さんには何かあるのかもしれない)

 

そうこう話をしていると『ディスカポネ』に着いた

 

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