1-3 お土産、思い出のペンダント


アトラクションを一通りまわったあとのおみやげコーナーは、涼しくて心地よかった。

クーラーの風がほほを撫でて、外の熱気が少しだけ遠くに感じられる。


「おい見てこれ、なんか怒ってるゾウのキーホルダー! 顔が濃すぎて笑うしかないだろこれ」


「ほんとだ、なにこれ~! 怒り方のセンスが意味わかんないんだけど!」

 

ケイタとエミリがぬいぐるみコーナーでツボに入って、腹を抱えて笑っている。

2人のテンションは最高潮。コズミックランドを全力で楽しみきっていた。


その少し離れた場所で、ユイはふと足を止めた。


ガラスケースの中に、小さなネックレスが並んでいる。

その中でも、ひとつ――ハートに矢が刺さったモチーフのペンダントが、目を引いた。


(……かわいい)


思わず目を奪われる。

細いチェーンに繊細なデザイン。どこかチープだけど、妙に印象に残る。


「……それ、気になるんですか?」


すぐ横にいたリョウの声に、ユイはびくっと肩を跳ねさせた。


「えっ!? いや、ううん……ただ、ちょっと可愛いなーって思っただけで……! そ、それだけ!」


慌てて言葉を重ねながら、目を逸らす。

胸の鼓動が少し早くなるのを感じながら、なんとなくその場から離れようとした――そのとき。


「……少し、待っててください」


リョウはそう言うと、静かにそのネックレスを手に取り、レジへと向かった。

ユイは思わず後ろ姿を見送るしかなかった。


(……まさか、買うとかじゃないよね? うそ、そんな……)



数分後――外のベンチにて。


「さっきは、助けてもらったので。これ、よかったら」


リョウが手にした小さな紙袋を、ユイの前に差し出した。

え、と声を出す間もなく、その中から出てきたのは――あの、ペンダント。


「心配してくれたお礼……です。あと、似合いそうだなと思って」


「……えっ、でも……そんなの、もったいないっていうか……!」


受け取る手が、少し震える。けれど、それ以上に胸の奥が熱くなるのを感じた。


「……でも、嬉しい。ありがとう」


素直な言葉が、するりと唇から漏れた。

リョウは目を細めて、うっすらと微笑んでくれる。


「それなら、良かった」


ちょうどその時、「おーい! アイス買ってきたぞー!」とケイタが再び叫んで、エミリが笑いながら袋を振ってくる。


ユイは、そっとペンダントを胸にあてながら、少しだけ目を伏せた。

これが、宝物になるなんて思っていなかった。


ただ、“嬉しい”の感情が胸いっぱいに広がっていく。


たった一言と、たったひとつの贈り物。

その日の光ごと、ペンダントはユイの記憶にそっと焼きついた。

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