第10話 またしても異世界に来てしまったよ、トホホ
「フォロロロロロロロロロ〜♪」
突然の爆音ボイスで私の意識は強制的に目覚めさせられた。
なになになに? 何が起きたの。
私以外にもモブ美が「なんなの、これ」と黒目を丸くしていた。
すると、ノジャが「あぁ、これか? 外を見れば分かるぞ」と言って私達を寮の外に連れ出した。
「フアッソロロロロロロロロ〜♪」
外に出ると音量が倍になっていた。
周りの動物や鶏達が我先にと逃げている。
「ねぇーーーー! これってーーーー!! なにーーーー?」
耳を塞いで声を張り上げながらノジャに聞いてみた。
『あぁ、これはね。音楽のマーイ先生だよ』
すると、脳内でノジャの声が響き渡った。
彼女の口は開いていなかったから、テレパシーで伝えているのだろう。
ほんと何でもできるな。
よし、私も後で試しにやってみよう。
今はこのバカうるさい歌声の正体を突き止めなければ。
「マーイせんせーーーはーー! どーーこーーーにーーーいるのーーー?」
『屋根の上じゃよ』
ノジャの言われた通り、屋根の上を見てみると、鳩がゴージャスな服を着て大口を開けていた。
「ねぇ、あれってさーーー! なんのためにやってるのーーー?」
『目覚まし時計じゃ』
め、目覚まし時計って……確かにこれだけ爆音で歌ったら間違いなく目は覚めるけど、その前に鼓膜がやられちゃうよ。
「なんか、止める方法はーーーないのーーー?」
『心配すな。もうじき終わる』
ノジャがそう言ったタイミングでピタッと収まった。
鳩先生は不気味なほど無表情でピョコピョコと屋根から消えてしまった。
本当になんだったんだ、今は。
一騒動が終わったタイミングでテレパシーでノジャとコミュニケーションを取れるかどうか、試してみることにした。
『ノジャ、聞こえていますか? 今、あなたの脳内に直接語りかけています。もし聞こえているのでしたら一を。聞こえていないのでしたら二を押して……』
『えぇい、モゾモゾモゾモゾ喋るんじゃない! 何を言っているのか、さっぱり分からんのじゃっ!』
あれ? もしかして私の音声届いていない?
いや、『モゾモゾ』とか言っていたから、声は届いているけど、窓越しみたいに伝わっていないってことか。
うーん、私でもテレパシーできるかなと思ったけど、これは練習が必要かな。
「ねぇ、早く着替えて朝ごはん食べないと、授業に遅れちゃうよ」
モブ美が当然のことを言ったので、私達は食堂に向かおうとした。
が、この時、既視感のある魔法陣が光りだしたかと思えば、私達を包み込んでいった。
「え? なになに?!」
「うわっ、これってまさか……」
「またしても異世界転移なのじゃーーー!!」
ノジャの叫びと共に私達は光と包まれた。
※
「よく来た勇者とその一行よ」
恰幅の良い王様が偉そうに玉座に腰を掛けていた。
ほらぁ、この感じやっぱり異世界転移じゃん。
なんでこの短時間の間に二度も召喚されないといけないの?
深刻な人手不足なの?
「おい、そこの豚キング。なぜ召喚したのか、三秒以内に言え。でないと、この城を爆破するぞ」
ノジャはあくどい目つきで王様を睨んだ。
周りにいた兵士達は「豚キング!? 国王様に対して何たる侮辱!」と槍の先を私達に向けていた。
「ほう、そっちが殺る気なら……」
ノジャは禍々しいオーラを纏いだした。
やべぇ、本気で爆発させる気だ。
「やめて! ノジャちゃん! あなたは平気かもしれないけど、私達は無事じゃ済まないのよ!」
モブ美は彼女を止めようと叫んだ。
この一言は抜群で、ノジャは「そうじゃな」とオーラを纏うのを止めた。
「あっがブルブルブルブルブルブル……」
すると、さっきまで威厳ありそうな雰囲気で座っていた国王が鼻水垂らしながら巨大な腹を震わせた。
「お、おおおおい、しょしょしょしょうかんかんし!」
国王が震えながら叫ぶと、白いローブをまとった女性が現れた。
「お呼びでしょうか」
「こ、こいつらはなんだ! 勇者かと思ったら悪魔じゃないかっ!」
国王が指差す方を白いローブは見た。
そして、何か違和感があったのか、本を取り出してページをめくり始めた。
「あれ? おかしいですね……伝説の書によれば、二人組の女性が魔王をたった一撃で城ごと倒したとかが書いてあるのですが……三人いますね」
「ほらー、全然違うじゃないか! さっさと戻せっ!」
国王に命令された白いローブは詠唱らしきものを唱えると、また光に包まれた。
※
「もう腹ペコじゃ。早く食堂に向かおうぞ」
「うん、賛成」
「右に同じ」
特に異世界転移した感想は言わずに、私達は食堂に向かった。
しかし、その食堂はありえないくらいマズーーあれ? 前にもこんなオチあったよね?
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