ディア・マイ・ナイトメア
土屋昴
Scenario 1: Speed Trial
#D坂の角で AT THE CORNER
知葉が欲しいという卵のチョコレートはなかった。売り切れというのは珍しい。いつもレジの手前のスペースに棚ごと置いてある。その卵チョコレートのなかには玩具が入っていて、チョコレートそのものはすごく甘い。外国の味だ。キャラクターもそんな感じ。自分は特別の興味はないが、卵の形というのはなかなか魅力的で、まあひとつ買ってもいいかなと思わせる。すべてはデザインだと言っても良い。卵も玩具もいずれ消え失せデザインだけが残るのだ。
なんつってな。
と、いつもひとのレジにかごを持っていく。ここの主みたいなひとだ。彼女のところに持っていくことがここの見えないルールなのだ。他のひとのところではとても「気を遣う」。
他に買い物はつゆとあとは細々したもの。フロスとか、そんなものだ。卵チョコと合わせ600いくら。つゆのセールのおかげだ。この頃はどこへ行ってもなんでも100円以下だが、毎回なぜだか紙吹雪のようにお金は減っていく。現代七不思議のうちのひとつ。そうそう箱アイスも買ってた。
さすがに学生の身分、この薄利多売の問題点には気がつかない。しかし彼は街が年々ゴーストタウン化していくことに気がついていた。
なんというか、ひとがいないのである。
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