第7話「俺のを、食え」
夕暮れが校庭を包んでいた。
参加者たちはパンツ一枚、整列した個人便器の前に立たされている。
誰もが黙っていた。
だが、誰かが“始めなければ”ならなかった。
⸻
「……俺が出すわ」
最初に立ち上がったのは、
元トー横キッズ・ユウト(19)。
パンツ一丁のまま、静かに前へ出る。
「もう恥とかどうでもいいんだよ」
「てか、誰かがやんなきゃ何も始まらねえだろ?」
⸻
ユウトは便器にしゃがみ込む。
全員が見ていた。
誰かが涙を流した。
数分後、
白い密封袋を持って彼は立ち上がる。
「出た……あとは、誰かが食うかどうかだろ?」
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沈黙。
全員が目を伏せる。
それでも前に出たのは、
**元アイドル・堂島みさき(58)**だった。
「私が食べる」
「……私にとっても、これは一つのけじめよ」
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袋を受け取り、静かに開ける。
匂いが漂う。
「……うん、ちゃんと出てるわね」
「いただきます」
──一口。
咀嚼。
嚥下。
無言。
⸻
「……大丈夫。いけるわ、これは」
⸻
スピーカーが鳴った。
「“摂取”確認」
「堂島みさき、生存継続」
「※ユウトには、生存権は付与されていません」
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一瞬の沈黙。
ユウトの表情が、少しだけ引きつった。
「……そういう……ことか」
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出すだけでは、生き残れない。
それを、この瞬間、全員が理解した。
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