第2話

十中八九、異様としかとれないそれは

匂いもなく、存在感もなくベッドに横たわっている。

うっと、低い声を出して私は冷や汗をかいた。

まさかこんなものがあるなんて嘘にも思わなかったからだ。

その血は黒く。純白のシーツに染みついたそれは明らかに真逆の感情をきたした。

全身で汗を醸し出し、青ざめた私は震えたその指を使い、彼女に乞うた。

「すいません、米田さん」

その声の震えに即、彼女も気がついたようで

『どうしたの、堀江くん』

言語化するのにも時間を要した。

「あ、あの、406号室って」

『掃除したよ、さっきも言ったじゃない』

いやいや、「そうじゃなくて」

『ならどうしたのよ』

「どなたか泊まってましたか?」

予想外の返答に彼女の声が消えた。

『いたわよ、家族連れのお客様が』

見るからにそれは1人。家族連れではない。

『朝から様子が変よ、しっかりして』

見間違いなんかじゃない。確かに人がいる。

幾度も瞬きをしてもそれは一向に変わらない。

「やばいんですよ」

再び語彙力が欠如する。

「人が死んでるんですよ」

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