🦇B-2グループ🦇
「闇の魔王ドゥンケルハイトの器〜僕の前世は漆黒の堕天使! 我にひれ伏せ、愚民共!〜」
「寝坊したッ!」
マサキはベッドから飛び起き、制服に着替える。全力で走っても、HRに間に合うかどうか。
「ドゥンケルハイト! また僕が寝ている間に体を使ったな!」
「フン、我の体でもあるのだから構わんだろう?」
「良くない!」
ギャーギャーとわめきながら、家を出る。一人で騒いでいるようにしか見えないが、ケンカ相手はちゃんといる。
闇の魔王、ドゥンケルハイト。【闇】【
悪虐の限りを尽くした末、〈天界〉に捕まり、ごく普通の少年「斉藤マサキ」として現代日本に転生させられた。その後、マサキが14才の誕生日を迎えた朝に、前世の記憶を取り戻した。
いずれはマサキの体を乗っ取り、この世界を支配しようと企んでいる。マサキの使命はドゥンケルハイトを制御し、この世界を守ることだった。
「いいから、早くダークなんちゃらを!」
「我に指図するな!」
「〈天界〉に粛清されてもいいのか? この間、
「チッ」
マサキの両腕が後方斜め45℃へ上がる。肩甲骨がこわばり、魔力が集まってゆくのを感じた。
「展開せよ……†天翔る漆黒の翼〈ダーク・ウィング〉†!」
マサキの背中から漆黒の翼が生える。
かつては純白だった、ドゥンケルハイトの呪われし翼。この世界の人間には見えない、魔力の塊。天界の制約により飛行は叶わないが、マサキの走る速度がほんのわずかに上がった。
すれ違う人々がマサキの速さに驚き、道を譲る。フッ、とドゥンケルハイトは不敵に笑った。
「我の魔力に恐れを成しておるようだな。強大な力は、時として人を孤独にする。これもまた
「ドゥンケルハイト……」
気のせいか、マサキにはその笑みが憂いを帯びているように見えた。
「翼が使えぬのであれば、権能を使うまで。意思なき機械共よ、我が手中へ落ちるがいい! †暗黒の支配下〈ダークネス・エリア〉†!」
ドゥンケルハイトの「力」により、タイミングよく信号が青に変わる。
「すごいよ、ドゥンケルハイト! タイミングばっちり!」
「フン。この程度、造作もないわ」
ところが、次の信号は赤に変わった。
「ほう。我の支配から逃れるとは……あやつ、やりおるな」
「言ってる場合?! 早く青に変えないと遅刻しちゃうよ!」
そこへ、見慣れた自転車がマサキの横に止まった。
「おはよう。マサキ君も遅刻?」
「あ、
「もぉ。てらすちゃんって呼んでって言ってるじゃーん」
「あ、うん。ごめん、てらす……ちゃん」
ドギマギするマサキ。緊張で頭の中が真っ白になる。
天生てらすはマサキの幼なじみだ。幼稚園の頃から互いに想い合っているが、マサキが奥手なせいで未だ恋仲に発展せず、てらすを待たせてしまっている。
何も言えないマサキを、ドゥンケルハイトは「情けない」と一蹴した。
「変われ。我が代わりにコクハクしてやる」
「だ、ダメだよ! 君のことがバレたら、てらすちゃんを危険に巻き込むかもしれない! お願いだから、大人しくしてて!」
てらすはマサキに科された使命やドゥンケルハイトの存在を知らない。彼女を心から愛しているからこそ、巻き込みたくなかった。
†
(……斉藤君、また一人で喋ってる。友達いないのかな?)
天生
マサキとは同じクラスだが、喋ったことはほとんどない。今だって、照子が「おはよう」と声をかけても、ぎこちなく会釈しただけだった。
(ま、どうでもいいけど)
信号が青に変わり、照子は全力でペダルを漕ぐ。マサキは物言いたげに照子を見送ると、何やらブツブツ呟きながら、一人で横断歩道を渡り始めた。
「……マサキ君、いっしょに学校行こ! そんな、悪いよ。てらすちゃんまで遅刻しちゃうじゃん。私はマサキ君と遅刻したいの! へ、へへへ、そう? どうやら、我のまじないが効いたようだな。ドゥンケルハイト、また勝手に! ふふ、ふふふ……」
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