概要
そしてそれは秘密のまま、俺と一緒に生きていく。
病院の特別室にあるスペ患(特別待遇の患者)が入院していた。俺は先輩の東堂から、その主治医を引き継ぐ。部屋に入ると、ベッドには二十代前半の女性が人工呼吸器に繋がれていた。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!time proven
たまたま、今まで残ってきた。
そういうことも、もしかしたらあるのかもしれない。
飛べない鳥カカポのように、その存在が知られてしまったことで絶滅寸前まで追いやられてしまった生き物もいる。それまでは、奇跡のようなバランスで命をつないできた。
翻って、この物語の引き継がれてきたものは……その意味を問うのも難しい。
だが、小説や彫刻、絵画……あるいは工芸品のように、保存状態が良ければ残り続ける、というものでもない。
もしかしたら、伝統舞踊、あるいは武術、言語化できない、或いは楽譜に起こせない音楽のようなものかもしれない。
人の内にあって初めてその存在が保たれる……
彼女の抱き続けてきたものが…続きを読む