ただの『魔法学校モノ』じゃ満足できない、欲張りさんへ。

魔法学校。はい、もうそんなのいくつあってもええもんですよね(いきなり)。残念ながら大人になってもう⚪︎⚪︎年経ちますが、私はいまだに魔法学校が舞台となっている物語のページをめくると、自分もそこに通っているような気になってわくわくしてしまいます。

本作の舞台、五百年を超える伝統を持つ名門『ヴェゼル魔法学校』。大陸中から魔法使いたちの卵が集うこの学校に通う、『ミリィ』という名の少女が主人公です。はてさて、どんな素敵な魔法ライフを見せてくれるのか──と一話目に入ったところで。

『このままでは、魔法学校を退学になってしまう。』──なんですってーー!?!?

胸躍る魔法学校生活、いきなりの大ピンチ!どうやら彼女はいわゆる『落ちこぼれ』であり、三年生であれば通常は一体くらい契約しているはずの『使い魔』を持っていないとのこと。学校の華である『決闘(デュエル)』の舞台に立つにも当然、相棒が必要です。だというのに我らがミリィちゃんは、ねずみ一匹にも振られ続けている様子。

そんな進級すらピンチのミリィちゃんが夢の中で出会ったのは、正体不明ながらも不思議な魂の輝き。そして目が覚めると、手作りの黒羊のぬいぐるみが動いていたのです。おっさんくさい、ぶっきらぼうなボイスを搭載して。

こ、この子の魔法学校ライフ、どーなっちゃうのおおおお!?!?


***


落ちこぼれの魔女の卵ミリィと、動いて喋ってバチバチに戦うぬいぐるみ『ブラック・シープ』を中心に繰り広げられる、どこか懐かしい正統派魔法学校ファンタジーです。文体は硬派ながら読みやすく、海外文学を思わせる豊かな表現がたくさん。これだよこれ!!(大興奮)

二人は主従関係となりますが通常は動物や精霊を従えるため、ぬいぐるみを使役する姿は当然目立つ目立つ。なのに強い。しかしファンタジー世界であれ学校という組織はそういったものに厳しく、ミリィたちはたくさんの苦難にぶちあたることになります。(否定する訳ではありませんが)、ラッキーなチートを得て楽々成り上がっていくタイプのお話ではなく、力を得たからこその責任、周りの友達との関係変化について丁寧に描き出していきます。どの章にも違うタイプの困難と解決が仕掛けられていて、構成が本当にお見事。作者さんは子供という存在のことをよく理解されているんだなあと舌を巻きました。

失敗し、学んでいく。学ぶことでしか得られない強さがある。ミリィをはじめ、他の子供達もみんな頑張り屋さんで、どの子も大好きになってしまいました。さらに人の親となった今では先生やお母さんたちの心情もわかってしまい、何度もうるうる。万人におすすめできる、優しいファンタジーです。

しかしこの物語の魅力は、楽しい魔法学校ライフだけに留まらず。ミリィの謎めいた相棒『ブラック・シープ』の秘密に迫っていく後半は、序盤では想像すらできなかった重さに満ちています。

同学年の誰もが知る『落ちこぼれミリィ』。そんな彼女がようやく得た相棒にして、替えのきかない心からのお友達。彼にピンチが迫っていると知った時、彼女は誰もが目を見張る勇気を示していくのです。

子供達のアツい友情と成長に手に汗握る前半、そして絆と勇気に心打たれる後半。ひとつの物語でこんなにも魅せていただいていいんでしょうかというくらいの豪華な内容です。確実にティッシュBOXが逝きます。エコの観点から、ハンカチの準備をお勧めいたします(経験者談)。

完結が寂しいくらいに素敵な物語でした!
一人でも多くの読者さんが、ヴェゼル魔法学校の門をくぐってくださることを祈って。

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